
バーベルデッドリフトの細マッチョ向きのやり方とフォームのポイント・コツ、適切な負荷回数設定などについて、現役フィジーク選手で元JOC強化選手が解説します。
この記事の執筆者

この記事を執筆したのは当サイト所属選手・監修者であるJOC元強化指定選手・現フィジークのHAYATE選手です。

細マッチョとは

細マッチョとは、きっちりとした基準があるわけでなく、あくまでも一般的なイメージ・概念ですが、一般的な概念としては、「体脂肪が少なく腹筋が割れて見える」「過度に筋肉がつきすぎていない」です。そして、この基準を競技化したのがフィジーク競技です。詳しくは下記の記事をご参照ください。

バーベルデッドリフトが主に効果のある筋肉部位

バーベルデッドリフトは主に広背筋・僧帽筋・脊柱起立筋に対して負荷がかかり、トレーニング効果があります。なお、筋力トレーニングの対象となる主な全身の筋肉については下記のデジタル図鑑をご参照ください。

バーベルデッドリフトのやり方とフォームのポイント

本種目の概要
バーベルデッドリフトは背筋群に効果的な筋トレです。
バーベルデッドリフトは非常に効果の高いトレーニング種目ですが、正しいやり方で行わないと、膝や腰を痛めるリスクが高い筋トレ方法ですので、しっかりと適切なフォームを身につけて行ってください。
バーベルデッドリフトを行う上でもっとも大切で、怪我を防ぐために必要なことは「背中を丸めない」ことで、背中が丸まった状態でバーベルを持ち上げると非常にリスクが高いので、まずはこのことを徹底して意識してください。
背中が丸まらないためには、バーベルを握って構えたと時にいくつかのポイントに注意すればよいのですが、それは次のようになります。
・胸を張る
・顎を上げる
・背中を真っ直ぐにする
・お尻を突き出す
この4点を、構えた時にチェックし、全てクリアした状態であれば「背中が丸まった状態でスタートする」ことは防げます。
このほかに、膝関節を痛めないために次の2点もあわせてチェックしてください。
・膝をつま先より前に出さない
・つま先の方向に膝を向ける
以上の6点を全てクリアしたフォームであれば、怪我のリスクを大幅に回避できます。
次に、構えた後のスタートですが、意識として「腕・背中で引き始める」のではなく、「脚で引き始める」ようにし、バーベルを地面から浮かせる初動は必ず脚の筋力で行ってください。
腕や背中で引き始めるイメージで初動を行うと、どうしても背中が丸くなってしまいがちです。「脚で引き始め」→「背中で引き上げる」というのが正しい挙上の順番になります。
脚で初動を行ってバーベルを引き上げ始めたら、次に主働筋を背中に移していき、「背中で引きながら肩甲骨を寄せる」ことが大切です。この肩甲骨の寄せを行わないと上半身にバーベルがぶら下がったまま立ち上がるような動作となり、特に背中の上半分には効果が低くなってしまいます。
そして、肩甲骨を寄せながらバーベルを引き上げ、フィニッシュポジションで肩甲骨を寄せきり、背筋群を完全収縮させます。
本種目の動作手順
①胸を張り、背すじを伸ばし、お尻を突き出してバーベルを握る
②膝をつま先のほうに向け、なおかつ、つま先より前に出ないように構える
③脚の筋力でバーベルを床から浮かせる
④肩甲骨を寄せながら背中でバーベルを引く
⑤引き上げたら、肩甲骨を寄せきり背筋群を完全収縮させる
全日本チャンピオン執筆記事

バーベルデッドリフトのバリエーション種目
ルーマニアン(ナロースタンス)デッドリフト

こちらは、ヨーロピアン(ルーマニアン)スタイルと呼ばれるデッドリフトのバリエーションで、肩幅程度に開いた足の外側をグリップするのが特徴で、背筋を使う比率が高いため、背中にターゲットを絞ったエクササイズとしてはこちらのスタイルのほうがおすすめです。
スモウ(ワイドスタンス)デッドリフト

一方、こちらは主に競技選手が行うワイドスタンス(スモウ)デッドリフトと呼ばれるバリエーションで、大きく開いた足の内側をグリップするのが特徴です。背中の筋肉だけでなく下半身の筋肉も多く使ってバーベルを挙げるので、挙上重量を狙うパワーリフター選手が愛用する方法になります。
細マッチョ筋トレとしては、下半身も同時に使うので、全身シェイプ運動としての効果が高く、忙しい週に背中と下半身の両方を一度にトレーニングしたい場合などにおすすめです。
筋繊維の種類と細マッチョになるための負荷回数設定

筋トレ対象となる筋肉=骨格筋は、筋繊維が束状になり構成されています。そして、その筋繊維は主に2種類(速筋と遅筋)に分類され、さらに速筋は2タイプ(TYPEⅡa・TYPEⅡb)に分類されます。これらの各筋繊維タイプにはそれぞれに特性があり、トレーニングに対する反応や適正な負荷回数設定も異なります。
①遅筋(筋繊維タイプⅠ)
60秒を超えるような持続的かつ持久的な運動において、中心となって収縮する筋繊維タイプです。レジスタンストレーニングをしてもあまり筋肥大は起こさず、筋スタミナや筋密度が向上する傾向にあります。筋力トレーニングでは20回以上の反復で限界がくるような負荷回数設定でトレーニングを実施します。
②速筋(筋繊維タイプⅡa)
30~60秒程度の短時間の持続的な瞬発運動において、中心となって収縮する筋繊維タイプです。レジスタンストレーニングによって筋肥大するとともに筋スタミナも向上する傾向にあります。筋力トレーニングでは12~15回程度の反復で限界がくるような負荷回数設定でトレーニングを実施します。
③速筋(筋繊維タイプⅡb)
30未満の極めて短時間かつ瞬発的な運動において、中心となって収縮する筋繊維タイプです。レジスタンストレーニングによって強く筋肥大する傾向にあります。筋力トレーニングでは6~12回程度 程度の反復で限界がくるような負荷回数設定でトレーニングを実施します。
骨格筋を構成している筋繊維には大きく分けて速筋と遅筋の2種類があります。速筋は白っぽいため白筋とも呼ばれます。収縮スピードが速く、瞬間的に大きな力を出すことができますが、長時間収縮を維持することができず張力が低下してしまいます。遅筋は赤みがかった色から赤筋とも呼ばれます。収縮のスピードは比較的遅く、大きな力を出すことはできませんが、疲れにくく長時間にわたって一定の張力を維持することができます。
▼厚生労働省公式ページ
参照記事:筋トレ目的別の適切な負荷回数設定

理想的な細マッチョ体型とは

理想的な細マッチョ体型とは、細マッチョ体型を競う公式競技であるフィージーク競技の審査基準と同様で、上図のようになります。
できるだけ筋肥大すべき筋肉
広背筋・三角筋・上腕三頭筋
これらの筋肉は筋肥大を最優先して、速筋(筋繊維タイプⅡb)をターゲットに6~10回の反復動作で限界が来る負荷設定でトレーニングしていきます。
過度に筋肥大すべきでない筋肉
大胸筋・僧帽筋・上腕二頭筋・下半身
これらの筋肉は過度に筋肥大しないよう、速筋(筋繊維タイプⅡa)をターゲットにして15回前後の反復で限界が来るような負荷設定でトレーニングしていきます。

細マッチョになるための二つのアプローチ
細めの体形か太めの体形かで異なる

一般的に、細マッチョの基準とされるのがBMI22前後、体脂肪率15%前後ですが、このような体形になるためには現状の自分の体形によって二つのアプローチがあり、それは以下の通りです。
①細めの体形の場合:まずバルクアップ筋トレを行う
②太めの体形の場合:まずシェイプアップ筋トレを行う
そして、BMI22前後・体脂肪率15%前後の体形の場合、またはトレーニングによってそうなった場合は、筋肉を維持したり、より見栄えのよい形にするために、筋繊維TYPE2aをターゲットにした15回前後の反復で限界がくる負荷回数設定で「細マッチョ筋トレ」を行っていきます。
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細マッチョ筋トレの一週間の組み方

筋肉はトレーニングを行うと筋繊維に微細な損傷を受け、その回復に24~72時間が必要になります。そして、回復するときにはトレーニング前よりも筋密度が向上して回復する特性があり、これを超回復と言います。そして、この超回復を適切に繰り返すことで筋密度を上げていくのが細マッチョ筋トレの基本です。
超回復前に筋肉に負荷を与えてしまうと、筋肉は筋密度が上がるどころか、逆に縮小してしまいますので、いかに超回復を妨げずに高い頻度でトレーニングを行うかがポイントですが、一日に全身全てをトレーニングしてしまうと72時間はトレーニングができないので、週3回程度の頻度で行うのが限界になってきます。
そこで、全身の筋肉をグループごとにローテーションで鍛えていき、超回復を行いながら高頻度でトレーニングをしていくメソッド「部位分割法|スプリットトレーニング」を導入するのがもっとも効率的です。
その分割方法例は以下のようになります。
週一日目:上半身の押す筋肉
週二日目:体幹部の筋肉
週三日目:下半身の筋肉
週四日目:体幹部の筋肉
週五日目:上半身の引く筋肉
この分割法ですと、超回復を妨げず、なおかつ週5回のトレーニングで常に代謝の高い状態も維持することが可能です。
細マッチョ筋トレメニュー例



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