
筋トレ弁当という言葉を聞いて、皆さまは何を思い浮かべますか。
多くの方は、「コンビニでどの弁当を買うか」「冷凍弁当のどれが便利か」といった、市販品の中から選ぶことを想像されるかもしれません。
筆者は日本代表として長年競技を続けてきた経験から食事の研究・改善にも日常的に取り組んできました。その経験を積み重ねた結果、たどり着いた答えはひとつです。
「筋トレの効果を最大化する弁当は、自作弁当の一択である」ということです。
市販の加工食品には、何がどれだけ入っているかを把握しきれません。多くの市販弁当は“美味しさ”を重視して作られており、それはすなわち 高脂質・高塩分に偏りやすい ということを意味します。短期的に便利でも、競技者レベルで身体をつくる場合には栄養精度が不足します。
本記事では、筆者が実際の競技生活の中で作ってきた 増量期・減量期それぞれの自作弁当 を写真とともに紹介し、なぜ自作弁当が最適解なのかを筋トレ的理由から解説します。
なお減量期の弁当には、試合直前の 塩抜き・水抜き を目的とするため、見た目として“美味しそうには見えない”ものも含まれますが、すべては競技パフォーマンスのための実践例です。
コンビニ弁当・冷凍弁当ではだめなのか?

① タンパク質量が圧倒的に不足している
筋肥大の昼食では、最低でも 肉や魚で20〜30gのタンパク質 を確保したいところですが、一般的なコンビニ弁当・冷凍弁当では 10〜15g程度しか入っていません。
しかも、そのタンパク質の多くは「揚げ物・加工肉・甘辛タレの肉」など脂質とセットになっているため、純粋なタンパク質密度が極端に低い のが特徴です。
結果として、タンパク質不足のまま余分な脂質を摂取する結果になってしまいます。
② 脂質・塩分が高く筋トレの食事精度が崩れる
コンビニ弁当・冷凍弁当は「美味しさ」を基準に設計されています。
そのため、
脂質過多(揚げ物・マヨ系・油調理が多い)
塩分過多(味を濃くして満足感を出している)
という傾向は避けられません。
筋トレでは、脂質は量をコントロールしやすい朝か夜に回し、昼はタンパク質中心でまとめたい ため、弁当で脂質が勝手に入ってくるのは構造的にマイナスです。
塩分過多も、むくみ・血圧・体内水分の調整に影響し、減量期や筋肉の張り(パンプ)のを乱す要因 になります。
③ 筋肉をつくるための基本PFCが整わない
筋肥大の昼食では本来
タンパク質:しっかり(肉・魚で20〜30g)
炭水化物:必要量だけ
脂質:控えめ
という構成が理想ですが、コンビニ弁当・冷凍弁当はその逆で
タンパク質:不足
炭水化物:多すぎ
脂質:過剰
塩分:多め
という筋肉をつくりにくいPFCになっています。
結論
本気で身体を変えたいなら、コンビニ弁当・冷凍弁当は栄養精度が低すぎるのが問題です。
手軽さは魅力ですが、筋肥大や減量を正確に進めたい場合には、自作弁当に比べて食事設計の自由度が圧倒的に低い ことが最大のデメリットです。
自作弁当の有利な点
タンパク質量とカロリー配分を正確に設計可能

筋肉をつくる食事では、「タンパク質:炭水化物:脂質」の比率(PFCバランス)をどれだけ再現性高く維持できるかが成果を大きく左右します。
自作弁当であれば、タンパク質を何g入れるか、脂質をどれだけ抑えるか、炭水化物の量をどう調整するか、これらをすべて自分で決められるため、筋肥大期にも減量期にも食事の精度を完全にコントロールできるとが最大の強みになります。
筋トレむき自作弁当の具体例
筋肥大期の高タンパク質高カロリー弁当
筋肉を増やしたい時期には、肉や魚を多めに入れる、ごはん量を増やす、脂質を余計に入れない(揚げ物を避ける)といった調整が簡単にできます。
コンビニ弁当のように脂質が勝手に多くなる心配がありません。

牛焼肉・豚しょうが焼き・厚揚げ豆腐・ウインナー・卵焼きと高タンパク質なおかずで構成しています。

筋肥大・増量期には、アミノ酸スコアの向上も考慮し、4~5品目のタンパク質食品を使用しています。

仕事とスポーツ競技を両立していくのは、想像以上にストレスが多いものです。ランチタイムに気持ちをほっとさせるために、食材で顔を作ったりと遊び心も入れています。以下、いくつか弁当の自作調理例を並べます。




こちらに並べてご紹介したのが、筋肥大期に作っていた実際の自作弁当です。肉類・玉子・大豆をふんだんに使って高タンパク質高カロリーな昼食を確保しています。
経済的に厳しい時の筋トレ自作弁当

競技を続けていくうえで、経済的な課題は多くの人が直面する現実的な問題です。筆者自身も、一般の会社員として働きながら競技生活を続けていた時期には、給料日前の食費に悩むことが何度もありました。
そのような時でも、筋肉を落とさずにトレーニングを継続するために役立ったのが、「格安タンパク質食材を組み合わせた自作弁当」 です。
たとえば、魚肉ソーセージ、マルシンハンバーグ、目玉焼きといった、安価で購入できるタンパク質源を組み合わせることで、最低限のタンパク質量を確保しつつ、昼食のPFCバランスを維持することが可能 です。忙しい朝でも短時間で用意できるため、金銭面でも時間面でも負担の少ない方法です。
競技者生活は常に順風満帆ではありません。こうした現実的に続けられる方法を持っておくことは、競技で勝ち上がるうえで本当に重要な戦術 です。
減量期の筋トレ自作弁当
減量末期の弁当は、正直にいえば「美味しそう」という言葉からは最も遠い内容になります。しかし、階級制競技では試合数日前の 塩抜き・水抜き が必須であり、この工程を丁寧に行うかどうかで、当日のコンディションや体重調整の精度が大きく変わります。
そのため、減量末期の弁当は美味しさよりも 身体の状態を目的に最適化する ことが最優先です。

こちらが、減量初期の自作弁当で、大豆やちくわといった高タンパク質低カロリーなタンパク質食品を中心に、ご飯の量も減らしています。

こちらは減量追い込み期の自作弁当で、薄く敷いたご飯の上にゆで卵とカニカマを乗せています。

こちらは、試合数日前の水抜きとカーボローディングの調整用に作っていた弁当で、薄く敷いたご飯の上にカツオ節をのせただけの、非常にシンプルな内容です。水抜き中は塩分を完全に排除するため、味付けも一切行いません。
このように、筋トレの目的や時期(TPO)に合わせて、タンパク質・炭水化物・脂質のバランスを精密に調整できることが、自作弁当の最大の強みです。筋肥大期でも減量期でも、必要な栄養をそのまま弁当に反映できるため、食事の再現性が高まり、日々のトレーニング成果に直結します。
手間は少しかかりますが、自作弁当は“筋トレの効果を最大化するための確実な手段のひとつ”です。読者の皆様も、ぜひ一度ご自身のトレーニング内容に合わせた弁当作りに挑戦してみてください。
タンパク質の安定摂取と冷凍食材
筋トレの弁当作りで最も重要になるのは、毎日しっかりとタンパク質を確保できる環境をつくっておくこと です。しかし、忙しい日や買い物に行けない日が続くと、「今日の分の肉や魚がない」という状況は誰にでも起こります。
そこで便利なのが、筆者が長年ストックしているような冷凍タンパク質食材 です。解凍して焼くだけ・茹でるだけで使えるため、時間がない日でも弁当のタンパク源が確保できます。以下は、実際に筆者が常備している冷凍食材の一例です。

筋トレの成果を安定して積み上げるには、日々のタンパク質摂取を途切れさせないことが重要です。そのために、競技生活の中で私自身も実践してきたのが、良質な冷凍タンパク質食材のストックです。下記は、日本代表としての実体験にもとづき、常時ストックしていた肉類・魚介類の一例です。
実際に作った筋トレ弁当レシピ

【ステーキ丼弁当】筋肉飯を自作して効率的に筋肥大バルクアップするレシピ

【筋トレ豚肉弁当】バルクアップには外食よりも自作ランチを作るべき

【自作うなぎランチ】筋トレの筋肉痛時にはコンビニ弁当・冷凍弁当より自炊

こちらは、うなぎ代用食として最近話題の「うな次郎」を使用して作ったうな丼風弁当です。
▼うな次郎って?
【うなぎ代用食うな次郎】実際に本物や類似品と食べ比べた感想・口コミ評価
どうしても時間がない時はコンビニを活用

ここまでご紹介したように、基本的には毎日しっかりと自作弁当を作るのがベストですが、どうしても時間のない時もあります。また、残業などで遅くなるため間食が必要な日もあります。そのような場合は、上手にコンビニエンスストアーを活用しています。
厚生労働省によるコンビニの活用法
弁当・惣菜の中には、「低エネルギー」、「1日分の1/2の野菜がとれる」、「小さいサイズ」などといった健康に配慮した商品もみられます。さらに、一部のコンビニエンスストアでは、「健康な食事・食環境」認証制度において「スマートミール」の認証を受けた弁当を購入することができます。「スマートミール」とは、健康に資する要素を含む栄養バランスの取れた食事のことです。参照記事:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food
コンビニの筋トレ食品
つくね串|タンパク質+コラーゲンが魅力的

つくね串は、タンパク質が豊富なだけでなく軟骨由来のコラーゲンも含まれており、また、脂質もモモ肉焼き鳥に比べると低いので、ハードの筋トレの翌日の間食として最適です。
なお、つくね串2本100gのカロリーと栄養素は以下の通りになります。
エネルギー171kcal
タンパク質14.69g
脂質8.3g
炭水化物6.43g
ゆで卵|ビタミン・ミネラルが豊富

ゆで玉子はタンパク質が豊富なだけでなく、筋肉の合成にも必要なビタミン・ミネラルも豊富です。かつては、一日に何個も食べてはいけないとされた玉子ですが、現在はその説は有力ではありません。
なお、ゆで卵2個100gのカロリーと栄養素は以下の通りです。
エネルギー151kcal
タンパク質12.9g
脂質10g
炭水化物0.3g
ちくわ|格安品は避けるのが無難

ちくわには優良な魚タンパク質が豊富なので、筋トレの間食として定番のコンビニ食品です。
ただし、安価なものには「つなぎ」として炭水化物が多く含まれるので注意が必要となります。
なお、ちくわ3本100gのカロリーと栄養素は以下の通りです。
エネルギー121kcal
タンパク質12.2g
脂質2g
炭水化物13.5g
サラダチキン|身体作り筋トレに最適

身体作り筋トレの間食としてなら、第一位と言ってもよいほど優良な高タンパク質低カロリー食品が、どこのコンビニでも入手できるサラダチキンです。
なお、サラダチキン100gのカロリーと栄養素は以下の通りになります。
エネルギー108kcal
タンパク質22.3g
脂質1.5g
炭水化物0g
チーズかまぼこ|ビタミン・ミネラル・タンパク質の宝庫

チーズかまぼこも比較的低カロリーで、タンパク質が豊富なので優良な筋トレコンビニ食品です。
なお、チーズかまぼこ100gのカロリーと栄養素は以下の通りになります。
エネルギー114kcal
タンパク質14.4g
脂質1.08g
炭水化物11.64g
▼関連記事
【筋トレの間食に最適なコンビニ食品】高タンパク質低カロリーな食事TOP5
さまざまな筋トレメソッド

筋トレ効果を高める各種のメソッド・トレーニング方法を詳細解説したものが下記の記事です。刺激を変えたい、さらに追い込みたいときなどに是非ご活用ください。
▼関連記事


身体を鍛えたら食事にも気を使う

筋トレの効果を高めるためには、トレーニングだけでなく食事や栄養に関する基礎知識が欠かせません。下記の記事では、三大栄養素の基本から、目的別の食事設計、具体的な食品例に加えて、筋肥大期と減量期における実践的な食事レシピまでを解説しています。
▼筋トレの効果を高める食事
【目的別筋トレ食事メニュー例】増量期・減量期の食品と具体的レシピを紹介


