
自重スクワットの細マッチョ向きのやり方とフォームのポイント・コツ、適切な負荷回数設定などについて、現役フィジーク選手で元JOC強化選手が解説します。
この記事の執筆者

この記事を執筆したのは当サイト所属選手・監修者であるJOC元強化指定選手・現フィジークのHAYATE選手です。

細マッチョとは

細マッチョとは、きっちりとした基準があるわけでなく、あくまでも一般的なイメージ・概念ですが、一般的な概念としては、「体脂肪が少なく腹筋が割れて見える」「過度に筋肉がつきすぎていない」です。そして、この基準を競技化したのがフィジーク競技です。詳しくは下記の記事をご参照ください。

自重スクワットが主に効果のある筋肉部位

自重スクワットは主に大腿四頭筋・ハムストリングス・臀筋群に対して負荷がかかり、トレーニング効果があります。なお、筋力トレーニングの対象となる主な全身の筋肉については下記のデジタル図鑑をご参照ください。

自重スクワットのやり方とフォームのポイント

本種目の概要
自重スクワットは下半身トレーニングの代表的な種目であるだけでなく、キングオブトレーニングとも呼ばれる筋トレの基本となる種目です。
本種目を実施する時にまず注意することは、膝がつま先よりも前に出ないようにすることで、これにより膝関節の負担を防ぐことが可能です。膝が前に出すぎないようにするためのコツは、やや斜め後ろに腰を落としていくことで、ちょうど椅子に座るときの動作起動とほぼ同じです。
股関節があまり柔軟でない方は、この動作起動をとりにくい事がありますので、そのような場合にはかかと下に1cmくらいの板を置いてスクワットを行うとスムーズに動作できます。
次に重要なポイントは、つま先の向きと膝の向きを揃えることです。膝の向きよりもつま先が外に開いている、またはつま先が内に閉じている状態で動作を繰り返すと、膝関節にねじれ負荷が加わるため故障のリスクにもつながりかねません。
このほかに、背筋をしっかりと伸ばして胸を張ることも大切で、背中が丸まったままのフォームだと負荷が下半身の前側だけに集中したり、腰が痛くなる原因にもなるのでしっかりと胸を張る意識を心がけましょう。
なお、腰を下ろす深さは「膝関節の角度が90度前後」を目安にするとよいでしょう。あまり深く腰を下ろすと、膝関節に負担がかかってしまいます。
本種目の動作手順
①肩幅程度に足を開き、胸を張って構える
②斜め後ろに腰を落としていく
③膝が90度前後でいったん動作を止め、そこから立ち上がって元に戻る
動画付き解説

自重スクワットのバリエーション種目
ワイドスクワット

大きく足を開いて行うスクワットのバリエーションで、内転筋群にも効果の高い種目です。膝の向きとつま先の向きが同じ方向になるよう、特に注意が必要です。
ブウガリアンスクワット

片足を後方の台などに乗せて行うバリエーションで、オリンピックのブルガリア体操チームが発案したところから命名されました。別名ワンレッグスクワットとも呼ばれます。後ろにした脚を主動にして動作することで、ハムストリングスに効果があります。
シシースクワット

後方にのけぞるような姿勢で行うバリエーションで、大腿四頭筋に集中的に負荷が加わります。バランスをとるのが難しいので、図のように柱などをもって行うのが一般的です。
フロントランジ

ブルガリアンスクワットを低強度にしたようなバリエーションで、同様にハムストリングスなど脚の後ろ側の筋肉群に効果があります。
サイドランジ

大きく足を開き、左右に交互にしゃがんでいくバリエーションで、太ももの内側にある内転筋群に効果があります。
筋繊維の種類と細マッチョになるための負荷回数設定

筋トレ対象となる筋肉=骨格筋は、筋繊維が束状になり構成されています。そして、その筋繊維は主に2種類(速筋と遅筋)に分類され、さらに速筋は2タイプ(TYPEⅡa・TYPEⅡb)に分類されます。これらの各筋繊維タイプにはそれぞれに特性があり、トレーニングに対する反応や適正な負荷回数設定も異なります。
①遅筋(筋繊維タイプⅠ)
60秒を超えるような持続的かつ持久的な運動において、中心となって収縮する筋繊維タイプです。レジスタンストレーニングをしてもあまり筋肥大は起こさず、筋スタミナや筋密度が向上する傾向にあります。筋力トレーニングでは20回以上の反復で限界がくるような負荷回数設定でトレーニングを実施します。
②速筋(筋繊維タイプⅡa)
30~60秒程度の短時間の持続的な瞬発運動において、中心となって収縮する筋繊維タイプです。レジスタンストレーニングによって筋肥大するとともに筋スタミナも向上する傾向にあります。筋力トレーニングでは12~15回程度の反復で限界がくるような負荷回数設定でトレーニングを実施します。
③速筋(筋繊維タイプⅡb)
30未満の極めて短時間かつ瞬発的な運動において、中心となって収縮する筋繊維タイプです。レジスタンストレーニングによって強く筋肥大する傾向にあります。筋力トレーニングでは6~12回程度 程度の反復で限界がくるような負荷回数設定でトレーニングを実施します。
骨格筋を構成している筋繊維には大きく分けて速筋と遅筋の2種類があります。速筋は白っぽいため白筋とも呼ばれます。収縮スピードが速く、瞬間的に大きな力を出すことができますが、長時間収縮を維持することができず張力が低下してしまいます。遅筋は赤みがかった色から赤筋とも呼ばれます。収縮のスピードは比較的遅く、大きな力を出すことはできませんが、疲れにくく長時間にわたって一定の張力を維持することができます。
▼厚生労働省公式ページ
参照記事:筋トレ目的別の適切な負荷回数設定

理想的な細マッチョ体型とは

理想的な細マッチョ体型とは、細マッチョ体型を競う公式競技であるフィージーク競技の審査基準と同様で、上図のようになります。
できるだけ筋肥大すべき筋肉
広背筋・三角筋・上腕三頭筋
これらの筋肉は筋肥大を最優先して、速筋(筋繊維タイプⅡb)をターゲットに6~10回の反復動作で限界が来る負荷設定でトレーニングしていきます。
過度に筋肥大すべきでない筋肉
大胸筋・僧帽筋・上腕二頭筋・下半身
これらの筋肉は過度に筋肥大しないよう、速筋(筋繊維タイプⅡa)をターゲットにして15回前後の反復で限界が来るような負荷設定でトレーニングしていきます。

細マッチョになるための二つのアプローチ
細めの体形か太めの体形かで異なる

一般的に、細マッチョの基準とされるのがBMI22前後、体脂肪率15%前後ですが、このような体形になるためには現状の自分の体形によって二つのアプローチがあり、それは以下の通りです。
①細めの体形の場合:まずバルクアップ筋トレを行う
②太めの体形の場合:まずシェイプアップ筋トレを行う
そして、BMI22前後・体脂肪率15%前後の体形の場合、またはトレーニングによってそうなった場合は、筋肉を維持したり、より見栄えのよい形にするために、筋繊維TYPE2aをターゲットにした15回前後の反復で限界がくる負荷回数設定で「細マッチョ筋トレ」を行っていきます。
▼関連記事

細マッチョ筋トレの一週間の組み方

筋肉はトレーニングを行うと筋繊維に微細な損傷を受け、その回復に24~72時間が必要になります。そして、回復するときにはトレーニング前よりも筋密度が向上して回復する特性があり、これを超回復と言います。そして、この超回復を適切に繰り返すことで筋密度を上げていくのが細マッチョ筋トレの基本です。
超回復前に筋肉に負荷を与えてしまうと、筋肉は筋密度が上がるどころか、逆に縮小してしまいますので、いかに超回復を妨げずに高い頻度でトレーニングを行うかがポイントですが、一日に全身全てをトレーニングしてしまうと72時間はトレーニングができないので、週3回程度の頻度で行うのが限界になってきます。
そこで、全身の筋肉をグループごとにローテーションで鍛えていき、超回復を行いながら高頻度でトレーニングをしていくメソッド「部位分割法|スプリットトレーニング」を導入するのがもっとも効率的です。
その分割方法例は以下のようになります。
週一日目:上半身の押す筋肉
週二日目:体幹部の筋肉
週三日目:下半身の筋肉
週四日目:体幹部の筋肉
週五日目:上半身の引く筋肉
この分割法ですと、超回復を妨げず、なおかつ週5回のトレーニングで常に代謝の高い状態も維持することが可能です。
細マッチョ筋トレメニュー例



筋トレのマストアイテム解説
押す筋トレにはリストラップ

引く筋トレにはパワーグリップ

本格トレーニングにはパワーベルト

フィジークトレーニングの解説記事



