
腕立て伏せの細マッチョ向きのやり方とフォームのポイント・コツ、適切な負荷回数設定などについて、現役フィジーク選手で元JOC強化選手が解説します。
この記事の執筆者

この記事を執筆したのは当サイト監修者であるJOC元強化指定選手・現フィジークのHAYATE選手です。

細マッチョとは

細マッチョとは、きっちりとした基準があるわけでなく、あくまでも一般的なイメージ・概念ですが、一般的な概念としては、「体脂肪が少なく腹筋が割れて見える」「過度に筋肉がつきすぎていない」です。そして、この基準を競技化したのがフィジーク競技です。詳しくは下記の記事をご参照ください。

腕立て伏せが主に効果のある筋肉部位

腕立て伏せは主に大胸筋・三角筋・上腕三頭筋に対して負荷がかかり、トレーニング効果があります。なお、筋力トレーニングの対象となる主な全身の筋肉については下記のデジタル図鑑をご参照ください。

腕立て伏せのやり方とフォームのポイント

本種目の概要
自宅での自重トレーニングで大胸筋(および三角筋・上腕三頭筋など上半身の押す動作の筋肉)を鍛える最もスタンダードな種目が腕立て伏せです。また、各種プレス系トレーニングのウォーミングアップや予備疲労としても適しています。
まず、背筋を伸ばし肘の真下に手がくるように構えてください。そして、しっかりと肩甲骨を寄せ、肩を後ろに引いたフォームで行います。手の平は軽く「八の字」になるようにし、肘が前に出過ぎるのを防ぎます。これにより、肩関節に過剰な負荷がかかるのを防ぐことができます。
身体を下ろし始めてから再び元の位置に戻るまで、体幹は真っ直ぐに保ち、お腹を突き出したり背中を丸めたフォームにならないように注意します。
なお、プッシュアップバーを併用すると可動範囲が広がり、腕立て伏せの効果が大幅に高まります。
本種目の動作手順
①胸を張り肩甲骨を寄せ、背筋をまっすぐにして構える
②肩甲骨を寄せたままゆっくりと身体を下ろす
③フォームを保ったまま反動を使わずに筋力だけで身体を押し上げる
動画付き解説

腕立て伏せのバリエーション種目
膝つき腕立て伏せ

膝つき腕立て伏せは、筋力に自信のない男性初心者や女性でも簡単にできて、大胸筋を鍛えることのできる種類です。なお、膝つき腕立て伏せの構えをするときに、手を肩よりやや前(頭側)に置くことにより、肩関節の負担を軽減し、大胸筋に効率的に効かせることが可能になります。
インクラインプッシュアップ(斜め腕立て伏せ)

インクラインプッシュアップは、筋力的に自信のない筋トレ初心者の人でも行いやすい腕立て伏せのバリエーションです。インクラインプッシュアップは大胸筋を中心として、肩の筋肉・三角筋や腕の筋肉・上腕三頭筋にも効果があります。また、身体を押し上げる軌道が体幹に対して斜め下方向になるため、通常の腕立て伏せに比べると大胸筋のなかでも下部に効果があります。
バランスボール腕立て伏せ

バランスに手をついて腕立て伏せを行うバランスボール腕立て伏せは、バランスボールの反発力が腕立て伏せ動作の補助として働くので、腕立て伏せが苦手な筋トレ初心者や女性に最適なバランスボール筋トレ種目です。背すじを真っ直ぐに保つことに気をつけ、バランスボールの反発力を上手く利用してテンポよく行いましょう。
デクラインプッシュアップ(足上げ腕立て伏せ)

デクラインプッシュアップは上半身にかかる負荷が多くなるので強度が高いだけでなく、大胸筋上部に効果の高い、足上げ腕立て伏せと呼ばれるバリエーションです。背筋を伸ばし、手を肘の真下に置いて行うのは通常の腕立て伏せと同様です。もっとも気をつけたいポイントは、お腹をつき出さないということで、このフォームになってしまうと、せっかくの斜め上方向に腕を押し出す大胸筋上部に効果的な軌道が通常の腕立て伏せと変わらなくなってしまいます。
バランスボール足上げ腕立て伏せ

バランスボール足上げ腕立て伏せは、ハードに大胸筋を鍛えられるだけでなく、不安定な動作のなかで体幹インナーマッスルも鍛えられる種目です。背すじを真っ直ぐに保ち、身体を押し上げたポジションで静止するようにしてください。
また、バランスボール足上げ腕立て伏せは、お腹をつき出して行うと、せっかくの軌道が通常の腕立て伏せと変わらなくなります。どちらかと言えば、やや腰をつき出すくらいのフォームで行ってください。
ワイドグリップ腕立て伏せ

ワイドグリップ腕立て伏せは、三角筋全体に効果の高い自重トレーニングです。肩関節への負担を防ぐため、肘が肩のラインより頭方向にこないように動作してください。また、ワイドグリップ腕立て伏せは角度があるので手首に大きな負担がかかります。プッシュアップバーがあれば手首の角度を微調整できて便利です。
パイクプッシュアップ

パイクプッシュアップは、三角筋を鍛えるために特化した腕立て伏せの一種です。腰を突き出し、その状態をキープしたまま、腕を押し出す軌道が斜め上から上方になるように動作します。また、肘を肩よりも前(頭側)に出すと、肩関節に無理な負荷がかかってしまいます。肩を痛めないためにも、やや肘を引き気味で動作を行ってください。
ナロー腕立て伏せ(ダイヤモンドプッシュアップ)

ナロープッシュアップ(ダイヤモンド腕立て伏せ)は、上腕三頭筋の自重トレーニングとしてとても効果の高い種目です。ナロープッシュアップ(ダイヤモンド腕立て伏せ)は、親指と人差し指でダイヤモンド型を作って行う腕立て伏せです。この手幅では、手の平を平行に揃えると手首関節を痛めるリスクがありますので注意してください。
なお、ナロープッシュアップは、肘を開いて行うと上腕三頭筋短頭、肘を閉じて行うと上腕三頭筋長頭に効果があります。ターゲットにする筋肉部位にあわせてフォームを変えてください。
筋繊維の種類と細マッチョになるための負荷回数設定

筋トレ対象となる筋肉=骨格筋は、筋繊維が束状になり構成されています。そして、その筋繊維は主に2種類(速筋と遅筋)に分類され、さらに速筋は2タイプ(TYPEⅡa・TYPEⅡb)に分類されます。これらの各筋繊維タイプにはそれぞれに特性があり、トレーニングに対する反応や適正な負荷回数設定も異なります。
①遅筋(筋繊維タイプⅠ)
60秒を超えるような持続的かつ持久的な運動において、中心となって収縮する筋繊維タイプです。レジスタンストレーニングをしてもあまり筋肥大は起こさず、筋スタミナや筋密度が向上する傾向にあります。筋力トレーニングでは20回以上の反復で限界がくるような負荷回数設定でトレーニングを実施します。
②速筋(筋繊維タイプⅡa)
30~60秒程度の短時間の持続的な瞬発運動において、中心となって収縮する筋繊維タイプです。レジスタンストレーニングによって筋肥大するとともに筋スタミナも向上する傾向にあります。筋力トレーニングでは12~15回程度の反復で限界がくるような負荷回数設定でトレーニングを実施します。
③速筋(筋繊維タイプⅡb)
30未満の極めて短時間かつ瞬発的な運動において、中心となって収縮する筋繊維タイプです。レジスタンストレーニングによって強く筋肥大する傾向にあります。筋力トレーニングでは6~12回程度 程度の反復で限界がくるような負荷回数設定でトレーニングを実施します。
骨格筋を構成している筋繊維には大きく分けて速筋と遅筋の2種類があります。速筋は白っぽいため白筋とも呼ばれます。収縮スピードが速く、瞬間的に大きな力を出すことができますが、長時間収縮を維持することができず張力が低下してしまいます。遅筋は赤みがかった色から赤筋とも呼ばれます。収縮のスピードは比較的遅く、大きな力を出すことはできませんが、疲れにくく長時間にわたって一定の張力を維持することができます。
▼厚生労働省公式ページ
参照記事:筋トレ目的別の適切な負荷回数設定

理想的な細マッチョ体型とは

理想的な細マッチョ体型とは、細マッチョ体型を競う公式競技であるフィージーク競技の審査基準と同様で、上図のようになります。
できるだけ筋肥大すべき筋肉
広背筋・三角筋・上腕三頭筋
これらの筋肉は筋肥大を最優先して、速筋(筋繊維タイプⅡb)をターゲットに6~10回の反復動作で限界が来る負荷設定でトレーニングしていきます。
過度に筋肥大すべきでない筋肉
大胸筋・僧帽筋・上腕二頭筋・下半身
これらの筋肉は過度に筋肥大しないよう、速筋(筋繊維タイプⅡa)をターゲットにして15回前後の反復で限界が来るような負荷設定でトレーニングしていきます。

細マッチョになるための二つのアプローチ
細めの体形か太めの体形かで異なる

一般的に、細マッチョの基準とされるのがBMI22前後、体脂肪率15%前後ですが、このような体形になるためには現状の自分の体形によって二つのアプローチがあり、それは以下の通りです。
①細めの体形の場合:まずバルクアップ筋トレを行う
②太めの体形の場合:まずシェイプアップ筋トレを行う
そして、BMI22前後・体脂肪率15%前後の体形の場合、またはトレーニングによってそうなった場合は、筋肉を維持したり、より見栄えのよい形にするために、筋繊維TYPE2aをターゲットにした15回前後の反復で限界がくる負荷回数設定で「細マッチョ筋トレ」を行っていきます。
▼関連記事

細マッチョ筋トレの一週間の組み方

筋肉はトレーニングを行うと筋繊維に微細な損傷を受け、その回復に24~72時間が必要になります。そして、回復するときにはトレーニング前よりも筋密度が向上して回復する特性があり、これを超回復と言います。そして、この超回復を適切に繰り返すことで筋密度を上げていくのが細マッチョ筋トレの基本です。
超回復前に筋肉に負荷を与えてしまうと、筋肉は筋密度が上がるどころか、逆に縮小してしまいますので、いかに超回復を妨げずに高い頻度でトレーニングを行うかがポイントですが、一日に全身全てをトレーニングしてしまうと72時間はトレーニングができないので、週3回程度の頻度で行うのが限界になってきます。
そこで、全身の筋肉をグループごとにローテーションで鍛えていき、超回復を行いながら高頻度でトレーニングをしていくメソッド「部位分割法|スプリットトレーニング」を導入するのがもっとも効率的です。
その分割方法例は以下のようになります。
週一日目:上半身の押す筋肉
週二日目:体幹部の筋肉
週三日目:下半身の筋肉
週四日目:体幹部の筋肉
週五日目:上半身の引く筋肉
この分割法ですと、超回復を妨げず、なおかつ週5回のトレーニングで常に代謝の高い状態も維持することが可能です。
細マッチョ筋トレメニュー例



筋トレのマストアイテム解説
押す筋トレにはリストラップ

引く筋トレにはパワーグリップ

本格トレーニングにはパワーベルト

フィジークトレーニングの解説記事



