
紀元前500年~200年頃にかけて栄えた古代ギリシアの国家であるスパルタは、その時代にすでに兵士育成の一環として筋力トレーニングを行っていたとされています。その4大筋トレ種目について解説します。
カリステニクスとは、自分の体重を負荷として身体操作能力と筋力を同時に高めるトレーニング体系です。実はこの考え方は現代に生まれたものではなく、古代ギリシアのスパルタ兵士育成に見られるように、人類史の中で繰り返し採用されてきた合理的な身体鍛錬法でもあります。本記事で解説する「スパルタ式4大トレーニング」は、現代で言うカリステニクスの原型とも言える内容です。
スパルタ式トレーニングとカリステニクスの共通点
スパルタ式トレーニングと現代のカリステニクスには、多くの共通点があります。いずれも器具に依存せず、自分の体重を負荷として用い、全身の連動性や身体制御能力を重視する点が特徴です。
腕立て伏せ、懸垂、倒立、ジャンプといった動作は、現代のカリステニクスでも基本中の基本とされており、筋力だけでなくバランス感覚や関節の安定性を同時に高めます。
このように、カリステニクスは新しい流行ではなく、実戦に耐える身体を作るために淘汰されてきたトレーニング思想の再体系化と捉えることができます。
スパルタとは
古代ギリシア世界で最強の重装歩兵軍を誇り、ペルシア戦争ではギリシア軍の主力であった。ペロポネソス同盟の盟主となり、アテナイを破って一時期はギリシア世界に覇を唱えた。他のギリシャ諸都市とは異なる国家制度を有しており、特に軍国主義的政治と尚武を尊ぶ厳格な教育制度は「スパルタ式」と後世に呼ばれ、「スパルタ教育」の語源ともなった。引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/スパルタ
スパルタ式4大トレーニングとは、①腕立て伏せ②懸垂③倒立④スクワットジャンプであったと言われています。
腕立て伏せのやり方

腕立て伏せは上半身の押す筋肉、大胸筋・三角筋・上腕三頭筋に有効なトレーニング種目です。
大胸筋

三角筋

上腕三頭筋

腕立て伏せは、まず肩幅よりやや広い手幅をとり、背筋を真っ直ぐにして構えます。お腹を突き出したり、腰が曲がったフォームになると大胸筋に負荷がしっかりと加わりませんので注意してください。
また、手首の真上に肘がくるように動作を行い、前腕の骨で体重を支えるようにすることがコツです。また、これによって手首関節に過剰な負荷がかかることも防ぐことができます。
このほかに、肩甲骨をしっかりと寄せたまま動作を行うことも重要で、肩甲骨がしっかりと寄っていないと、肩関節に開き負荷がかかり痛めてしまう原因になりますので気をつけてください。
◆腕立て伏せのやり方と動作ポイント
①うつ伏せになり、片幅よりやや広く手幅をとって手を床につき、背すじを伸ばし、肩甲骨を寄せて構える
②手の真上に肘がくる位置を保ち、肩甲骨を寄せたまま、お腹を突き出したり腰を曲げたりせずに身体を下ろす
③身体を下ろしたら、肩甲骨を寄せたまま息を吐きながら身体を押し上げる
④肘を伸ばし、顎をやや引いて大胸筋と上腕三頭筋を完全収縮させる
◆ワンポイントアドバイス
大胸筋を完全収縮させるためには、顎をやや引くようにしてください。
それでは、ここからはさまざまな腕立て伏せのバリエーションをご紹介していきます。
さらに詳しい腕立て伏せのバリエーションごとのやり方は、下記の記事をご参照ください。

懸垂のやり方

懸垂は上半身の引く筋肉、広背筋・僧帽筋・上腕二頭筋に有効なトレーニング種目です。
広背筋

僧帽筋

上腕二頭筋

広背筋に効果のある懸垂のバリエーションが順手懸垂です。チンニングと呼ばれることもありますが、英語圏では順手懸垂はプルアップと呼ぶのが普通です。懸垂と言えば、ついバーより上に顎を出すことにこだわりがちですが、顎を出すイメージが強すぎると、背中が丸まったフォームになり十分に背筋群を収縮させることができず、腕にばかり負荷がかかってしまいます。
肩甲骨を寄せながら胸を張り、胸をバーにつけにいくのが正しいフォームです。
◆懸垂のやり方と動作ポイント
①肩幅よりも広い手幅でバーをグリップして構える
②肩甲骨を寄せながら、腕を曲げて身体を引き上げていく
③身体を引き上げたら、肩甲骨を寄せきり、やや顎を上げて背筋群を完全収縮させる
④コントロールした速度で身体を下ろし、反動を使わずに再び身体を引き上げる
◆ワンポイントアドバイス
顎をバーより上に出すのではなく、バーに胸をつけにいく軌道で動作を行い、背筋群を完全収縮させることが重要です。

逆立ち腕立て伏せのやり方

逆立ち腕立て伏せは、非常に高い強度で三角筋と上腕三頭筋を鍛えられるトレーニング種目です。
完全に倒立できない場合、三角筋に負荷を加える意味では足を壁などにもたれさせてバランスをとって行っても効果は変わりません。
◆逆立ち腕立て伏せのやり方と動作ポイント
①倒立状態になり、片幅よりやや広く手幅をとって手を床につき、背すじを伸ばし、腰を大きく曲げ、甲骨を寄せて構える
②手の真上に肘がくる位置を保ち、肩甲骨を寄せたまま、斜め前方に身体を下ろす
③身体を下ろしたら、肩甲骨を寄せたまま息を吐きながら身体を斜め後方に押し上げる
◆ワンポイントアドバイス
本種目はとても強度の高い種目で、無理をすると筋肉だけでなく関節にも強い負担がかかりますので、まずは可動範囲を小さくして徐々に慣れていくとよいでしょう。

スクワット(ジャンプ)のやり方

スクワットは下半身全体に高い負荷がかかる、キングオブトレーニングとも呼ばれる種目です。大腿四頭筋・臀筋群・ハムストリングスなどに負荷が加わります。
大腿四頭筋

臀筋群

ハムストリングス

スクワットの正しいフォームとやり方は下図のようになります。そのポイントは以下の通りです。

○膝がつま先より前に出ないようにする
○胸を張り、背中を反らせる
○顎を上げやや上を見る
○椅子に座るように斜め後ろにしゃがむ
※このフォームがとりづらい場合は、かかとに数センチの板などを置くと簡単に姿勢がとれます。
◆自重スクワットのやり方と動作ポイント
①足を肩幅程度に開き、背すじを伸ばして構える
②膝がつま先よりも前に出ないように気をつけ、お尻を突き出しながらしゃがんでいく
③太ももが床と平行になるまでしゃがんだら、反動を使わずに同じ軌道で立ち上がる
◆ワンポイントアドバイス
椅子に座る要領で動作をすると正しいフォームになります。また、背中が丸くならないように、視線をやや上に向けるのがコツです。

また、スパルタ軍式のスクワットでは、しゃがんで立ち上がってからジャンプをするまでが一連の動作であったと考えられており、これにより下腿三頭筋にも爆発的な負荷が加わります。
下腿三頭筋

ジャンプトレーニングは、格闘技=戦闘の基礎中の基礎となる下腿に非常に高い負荷を加えられることで知られています。また、日常での使用頻度が高い下腿三頭筋は、ジャンプトレーニングのような爆発的なメソッドでしか強く鍛えられないことも競技会では知られています。
こちらは、JOC強化指定選手が強化合宿で行っているジャンプトレーニングを、さらに強化したメニュで、その内容は以下の通りです。
①両足つま先ジャンプ(60秒)
インターバル(30秒)
②右足つま先ジャンプ(60秒)
インターバル(30秒)
③左足つま先ジャンプ(60秒)
インターバル(30秒)
④開脚つま先ジャンプ(60秒)
インターバル(30秒)
⑤前もも上げつま先ジャンプ(60秒)
インターバル(30秒)
⑥後ろもも上げつま先ジャンプ(60秒)
インターバル(30秒)
⑦左右もも上げつま先ジャンプ(60秒)
インターバル(30秒)
⑧前後ステップ移動つま先ジャンプ(60秒)
インターバル(30秒)
⑨左右ステップ移動つま先ジャンプ(60秒)
インターバル(30秒)
⑩足上げ片足静止(左右30秒ずつ)
インターバル(30秒)
⑪右蹴りモーションジャンプ移動(6種類×20秒)
インターバル(30秒)
⑫左蹴りモーションジャンプ移動(6種類×20秒)
インターバル(30秒)
⑬高速連続蹴り動作(60秒で150回を目標)
かなり過酷なトレーニングですが、ふくらはぎが圧倒的に強化できます。

スパルタ式トレーニングで身体を鍛えた競技選手

当サイトの所属選手・執筆者・監修者でもある上岡颯選手は、幼少期より「スパルタ式トレーニング」で身体を鍛え、下記のような戦績を収めてきました。

テコンドー
2009JAPAN OPEN国際優勝
2009JOC全日本ジュニア3位
2010JAPAN OPEN国際優勝
2010東日本ジュニア優勝
2011JAPAN OPEN国際2位
2011KOREA OPEN国際3位
2012JAPAN CUP選手権2位
2012JAPAN OPEN国際優勝
2012JOC全日本ジュニア3位
2013JAPAN OPEN国際優勝
2014全日本選手権東日本地区大会3位
2015JOC全日本ジュニア準優勝
2016JOC全日本ジュニア3位
2017全日本選手権東日本地区大会優勝
2018全日本学生選手権準優勝
2019全日本学生選手権準優勝
2019全日本選手権準優勝
2020全日本選手権準優勝
2020年~2021年:JOC強化指定選手
スパルタ式トレーニングで鍛えた身体からでる打撃
フィジカルトレーナー


スパルタ教育とスパルタ式トレーニングの違い
スパルタ教育とスパルタ式トレーニングは、しばしば同一視されがちですが、本来は目的も性質も異なるものです。スパルタ教育とは、国家体制の維持を目的とした厳格な集団統制と精神鍛錬を含む教育制度であり、個人の意思や適性よりも従属と規律を重視する側面がありました。
一方で、スパルタ式トレーニングは、戦場で生き残るために必要な身体能力を合理的に高めるための実践的な身体鍛錬です。自分の体重を負荷として用い、全身を連動させて動かすことで、筋力だけでなく持久力、バランス感覚、関節の強さを同時に養うことを目的としていました。
現代で語られる「スパルタ」という言葉は、精神論や根性論を指すことが多いですが、実際のスパルタ式トレーニングは極めて現実的で、無駄のない身体作りを重視した合理的なメソッドだったと言えます。
この点において、スパルタ式トレーニングは現代のカリステニクスと思想的に強く重なっており、単なる過酷さではなく「実用性」を追求したトレーニング体系として再評価することができます。


部位分割メニュー例

週2・3・4回の部位分割筋トレメニュー
主な筋トレ種目一覧

図解付き主要種目の一覧ページ
下記にリンクしています主要種目の個別解説記事は、動画だけでなく一目で理解しやすい図解付きでフォームについて説明しています。
自重トレーニング
腕立て伏せ(大胸筋)パイクプッシュアップ(三角筋)
ベンチディップス(上腕三頭筋)
懸垂(背筋群)
バックエクステンション(背筋群)
逆手懸垂(上腕二頭筋)
自重スクワット(下半身)
チューブトレーニング
チューブチェストプレス(大胸筋)チューブチェストフライ(大胸筋)
チューブショルダープレス(三角筋)
チューブキックバック(上腕三頭筋)
チューブローイング(背筋群)
チューブカール(上腕二頭筋)
チューブレッグプレス(下半身)
ダンベルトレーニング
ダンベルプレス(大胸筋)ダンベルフライ(大胸筋)
ダンベルショルダープレス(三角筋)
ダンベルサイドレイズ(三角筋)
ダンベルキックバック(上腕三頭筋)
ダンベルローイング(背筋群)
ダンベルカール(上腕二頭筋)
ダンベルスクワット(下半身)
マシントレーニング
マシンチェストプレス(大胸筋)ケーブルフライ(大胸筋)
スミスマシンベンチプレス(大胸筋)
マシンショルダープレス(三角筋)
ケーブルプレスダウン(上腕三頭筋)
ラットプルダウン(背筋群)
ケーブルローイング(背筋群)
スミスマシンデッドリフト(背筋群)
ケーブルカール(上腕二頭筋)
マシンレッグプレス(下半身)
スミスマシンスクワット(下半身)
バーベルトレーニング
バーベルベンチプレス(大胸筋)バーベルショルダープレス(三角筋)
ナローベンチプレス(上腕三頭筋)
バーベルデッドリフト(背筋群)
バーベルベントオーバーロウ(背筋群)
バーベルグッドモーニング(背筋群)
バーベルカール(上腕二頭筋)
バーベルスクワット(下半身)
