
細マッチョに最適な上腕三頭筋トレーニングのメニュー(種目)のやり方や適切な負荷回数設定について解説します。なお、本記事では自宅でできる自重&ダンベルトレーニング、ジムで行うマシン&バーベルトレーニングの種目を網羅しています。
この記事の執筆者

この記事を執筆したのは当サイト所属選手・監修者であるJOC元強化指定選手・現フィジークのHAYATE選手です。

上腕三頭筋の作用と構造

読みかた:じょうわんさんとうきん
英語名称:triceps
部位詳細:長頭|外側頭|内側頭
起始:肩甲骨関節下結節|上腕骨後面|上腕骨後面
停止:尺骨肘頭
上腕三頭筋は上腕後側に位置する筋肉で、長頭・外側頭・内側頭の三部位から構成されています。その働きは「肘関節を伸展させる」ことと「上腕を内転させる」ことです。
なお、全身の主な筋肉の名称・作用・構造については下記のデジタル図鑑をご参照ください。

細マッチョ体型=フィジーク競技の採点基準

細マッチョに最適化された、各筋肉の具体的発達具合とは次のようなものです。
肩幅が広く逆三角形の体型を強調するために、広背筋と三角筋は発達していればいるほど理想的です。また、力強さを感じる「力こぶの筋肉=上腕二頭筋」も発達しているのが理想です。
逆に、僧帽筋・大胸筋・上腕三頭筋が過度に発達していると、細マッチョではなくムキムキのゴリマッチョ感がと良くなってきますので、これらの筋肉は適度な発達が望ましい部位です。同様に、太すぎる下半身も細マッチョの理想体型とは相反する要素です。
ですので、細マッチョ体型を目指すフィージーク系トレーニングの場合、これらに最適化された負荷回数設定で各筋肉をトレーニングしていく必要があります。
筋繊維の種類と負荷回数設定

筋トレ対象となる筋肉=骨格筋は、筋繊維が束状になり構成されています。そして、その筋繊維は主に2種類(速筋と遅筋)に分類され、さらに速筋は2タイプ(TYPEⅡa・TYPEⅡb)に分類されます。これらの各筋繊維タイプにはそれぞれに特性があり、トレーニングに対する反応や適正な負荷回数設定も異なります。
①遅筋(筋繊維タイプⅠ)
60秒を超えるような持続的かつ持久的な運動において、中心となって収縮する筋繊維タイプです。レジスタンストレーニングをしてもあまり筋肥大は起こさず、筋スタミナや筋密度が向上する傾向にあります。筋力トレーニングでは20回以上の反復で限界がくるような負荷回数設定でトレーニングを実施します。
②速筋(筋繊維タイプⅡa)
30~60秒程度の短時間の持続的な瞬発運動において、中心となって収縮する筋繊維タイプです。レジスタンストレーニングによって筋肥大するとともに筋スタミナも向上する傾向にあります。筋力トレーニングでは12~15回程度の反復で限界がくるような負荷回数設定でトレーニングを実施します。
③速筋(筋繊維タイプⅡb)
30未満の極めて短時間かつ瞬発的な運動において、中心となって収縮する筋繊維タイプです。レジスタンストレーニングによって強く筋肥大する傾向にあります。筋力トレーニングでは6~12回程度 程度の反復で限界がくるような負荷回数設定でトレーニングを実施します。
細マッチョトレーニングの負荷回数設定
発達させたい筋肉=広背筋・三角筋・上腕二頭筋の負荷回数設定
細マッチョ体型になるために発達させたい筋肉である、広背筋・三角筋・上腕二頭筋については、速筋(筋繊維タイプⅡb)をターゲットに6~10回(6~10RM)の反復回数で限界が来るような重めの重量・負荷設定でトレーニングしていきます。
過度に発達させない大胸筋・僧帽筋・上腕三頭筋の負荷回数設定
逆に、過剰な発達が細マッチョ体型の妨げとなる、大胸筋・僧帽筋・上腕三頭筋については過度に筋肥大しないように、速筋(筋繊維タイプⅡa)をターゲットにして15回前後(15RM前後)の反復回数で限界が来るような中程度の重量・負荷設定でトレーニングしていきます。

細マッチョ向きの上腕三頭筋メニュー(自宅編)
ナロープッシュアップ

ダイヤモンド腕立て伏せ(ナロープッシュアップ)は上腕三頭筋に効果的な筋トレです。
ダイヤモンド腕立て伏せは、両手の親指と人差し指で菱形(ダイヤモンド型)を作って行う、手幅の狭い腕立て伏せのバリエーションで、この手の組み方をすることで手首関節に対する負担を軽減できることが特徴です。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①両手で菱形を作り、うつ伏せになり、背すじを伸ばして構える
②肩甲骨を寄せ、やや肘を外に張り出すように身体を下ろす
③身体を下ろしたら、肩甲骨を寄せたまま、腕の力で身体を元の位置まで押し上げる
ベンチディップ

ベンチディップは上腕三頭筋に集中的な負荷をかけられる腕立て伏せバリエーションです。
ベンチディップを二の腕裏側に効果的に効かせるために大切なポイントは「脇を閉めて行う」ことです。これにより、二の腕裏側の筋肉・上腕三頭筋のなかで、体積の大きな内側(長頭)に集中的な負荷をかけることか可能です。
また、椅子(ベンチ)を使わず床に手をついて行うこともでき、このようなやり方を逆腕立て伏せとも呼びます。
しかしながら、効果の高いのは椅子(ベンチ)を使って行うやり方で、これは可動範囲が広がり、上腕三頭筋を最大伸展から最大収縮させることが可能だからです。
ですので、基本的には床ではなく椅子(ベンチ)を使ってトレーニングすることをおすすめします。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①椅子(ベンチ)に肩幅よりやや狭く手をつく
②脇を閉めて、できるだけ深く身体を下ろす
③反動を使わずに効かせながら元に戻る
ダンベルフレンチプレス

ダンベルフレンチプレスは上腕三頭筋に効果的なダンベル筋トレです。
ダンベルフレンチプレスで重要なポイントは、肘の位置を動かさないように固定し、肘から先だけで動作を行うことです。
肩関節が動き、肘の位置が前後してしまうと背筋群に負荷が逃げてしまいますので注意が必要です。
なお、肘を開き気味に構えると上腕三頭筋短頭(外側)に、肘を閉じ気味に構えると上腕三頭筋長頭に負荷がかかります。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①肘の位置を固定し、肘を伸ばして頭の上でダンベルを構える
②肘の位置を動かさないように気をつけ、肘を曲げてダンベルを頭の後ろに下ろす
③肘から先だけで動作を行いダンベルを元の位置まで押し上げる
ダンベルキックバック

ダンベルキックバックは上腕三頭筋長頭に集中的な効果的があるダンベル筋トレです。
ダンベルキックバックでもっとも大切なポイントは「肩関節を動かさない」ことで、肩関節が動いてしまうと背筋群に負荷が分散してしまいますので、しっかりと肘の位置を固定し、肘から先だけで動作を行うようにしてください。
この時に、背中が丸まった状態だと腰に負担がかかるだけでなく、上腕三頭筋が完全収縮しにくくなるので、胸を張りやや前を見て背すじを真っ直ぐに構え、そこから腕を後ろに伸ばしていきます。
また、肘を体幹に近づけて構えると二の腕内側に位置する上腕三頭筋長頭に負荷が集中します。
ちなみに、二の腕裏側の外側をターゲットにしたい場合は、肘を身体から少し離して構えます。
なお、肘を伸ばしきったポジションで手の平が上を向くように手首を外回りに回すと、上腕三頭筋長頭が完全収縮して効果が倍増します。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①肘を体に近づけて固定し構える
②胸を張り前を見て背すじを伸ばす
③肘を後ろに伸ばす
④手首を軽く外むけに回し、上腕三頭筋を完全収縮させる
⑤ゆっくりと効かせながら元に戻る
ダンベルテイトプレス

ダンベルテイトプレスは上腕三頭筋短頭に集中的な効果があるダンベル筋トレです。
ダンベルテイトプレスで大切なポイントは、肘の位置を固定して肘から先だけで動作を行うことです。
肘が左右に動いてしまうと、背筋群や大胸筋が収縮して負荷が分散するので注意してください。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①ベンチに仰向けになり、肘を外に向け、ダンベルを胸の上で持って構える
②肘の位置を動かさないように気をつけて、ダンベルを胸の中心に下ろしていく
③ダンベルを胸につくまで下ろしたら、肘から先だけでダンベルを元の位置まで押し上げる
細マッチョ向きの上腕三頭筋メニュー(ジム編)
スミスマシンナローベンチプレス

スミスマシンナローベンチプレスは上腕三頭筋に効果的なジムマシン筋トレで、フリーウエイトトレーニングに近い感覚で取り組むことができます。
スミスマシン共通の特徴として、ウエイトのブレをマシンレールが支えてくれるので筋肉に負荷を加えることに集中できる反面、軌道が固定されているのでズレが全て関節にかかってしまうというものがあります。事前に十分に構え方のチェックをして、関節に負担がかからないフォームか確認してください。
スミスマシンナローベンチプレスの場合は、手幅を狭くグリップしすぎると手首関節に強いねじれ負荷がかかりますので、手幅は肩幅よりやや狭い程度にグリップしてください。
動作手順としては、まずベンチに仰向けになり肩甲骨をしっかりと寄せて構えます。
次に、シャフトをグリップしてからシャフトをラックアウトします。
シャフトをラックアウトしたら、肩甲骨を寄せたまま下ろしてから元の高さまでシャフトを押し上げます。
なお、肘を閉じ気味に動作を行うと上腕三頭筋内側の長頭に、肘を開き気味に動作を行うと上腕三頭筋外側の短頭に負荷がかかります。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①手首関節に負担がない位置かシャフトだけで確認する
②肩甲骨を寄せてシャフトを肩幅程度でグリップする
③シャフトをラックアウトし、筋力でコントロールしながら胸まで下ろす
④肘の開き具合を意識し、肩甲骨を寄せたままシャフトを押し上げる
ケーブルプレスダウン

ケーブルトライセプスプレスダウンは上腕三頭筋外側の短頭に効果的なジムマシン筋トレです。
トライセプスプレスダウンは、マシンに正対して構えますが、この時に前傾しないことが大切で、前のめりで動作を行って行うと筋力ではなく体重でウエイトを押し込むことになり、肝心の二の腕の筋肉に負荷がかかりませんので注意してください。
また、肘をしっかりと固定することも重要で、肘が動く=肩関節が動いてしまうと、胸の筋肉・大胸筋に負荷が分散してしまいます。
肘を身体の横側で固定し、肘から先だけで動作を行ってください。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①マシンに正対し、真っ直ぐに立ちバーを握って構える
②肩関節を動かさないように気をつけて、肘から先だけでバーを押し込む
③ゆっくりと効かせながら元に戻る
なお、ケーブルトライセプスプレスダウンは、アタッチメントにより効果のある部位が変化し、それぞれの種目名と特徴は以下の通りです。
ノーマルトライセプスプレスダウン
手の平が下を向くようにバーをグリップして行うバリエーションで、二の腕裏側の外側(上腕三頭筋短頭)に効果的です。
ロープトライセプスプレスダウン
手の平が向き合うようにロープをグリップして行うバリエーションで、二の腕裏側の内側(上腕三頭筋長頭)に効果的です。
リバースグリップトライセプスプレスダウン
手の平が上を向くようにバーをグリップして行うバリエーションで、二の腕裏側全体に効果的です。刺激に慣れてきた頃に組み込むことをおすすめします。
ケーブルキックバック

ケーブルキックバッグは上腕三頭筋長頭に効果的な筋トレです。
ケーブルキックバックの動作フォームでもっとも大切なポイントは、「肘を動かさない」ことで、肩関節が動き肘が前後に動いてしまうと、負荷の多くが背筋群に逃げてしまいます。
肘を身体の横側でしっかりと固定し、肘から先だけで動作を行ってください。
また、肘を伸ばしたポジションで手の平が上を向くように、前腕の回内回旋動作を加えると上腕三頭筋が完全収縮して効果が高まります。
なお、二の腕シェイプトレーニングの場合、ターゲットになる筋肉は上腕三頭筋のなかでも内側に位置する長頭です。
上腕三頭筋長頭には、肘関節の伸展作用(肘を伸ばす働き)のほか、上腕の内転作用(脇を閉める働き)もあります。ですので、上腕三頭筋長頭に集中的な負荷を加えるためには、脇を閉めて構える必要があります。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①マシンに向かい前傾し、アタッチメントをグリップして構える
②脇を閉め、肘を身体の横側で固定して肘を伸ばす
③肘を伸ばしたら、手の平を上を向く方向に捻る
④同じ動作軌道でゆっくりと効かせながら元に戻る
バーベルナローベンチプレス

バーベルナローベンチプレスは上腕三頭筋に効果的な筋トレです。
動作手順としては、まずベンチに仰向けになり肩甲骨をしっかりと寄せて構えます。
次に、シャフトを肩幅程度の手幅でグリップしてラックアウトします。
シャフトをラックアウトしたら、肩甲骨を寄せたまま下ろしてから元の高さまでシャフトを押し上げます。
なお、肘を閉じ気味に動作を行うと上腕三頭筋内側の長頭に、肘を開き気味に動作を行うと上腕三頭筋外側の短頭に負荷がかかります。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①肩甲骨を寄せてシャフトを肩幅程度でグリップする
②シャフトをラックアウトし、筋力でコントロールしながら胸まで下ろす
③肘の開き具合を意識し、肩甲骨を寄せたままシャフトを押し上げる
バーベルフレンチプレス

バーベルフレンチプレスは上腕三頭筋に集中的な効果があるバーベル筋トレです。
バーベルフレンチプレスでもっとも大切なポイントは、「肩関節を動かさない」ことで、肩関節が動く=肘が前後に動いてしまうと、胸の筋肉や背中の筋肉に負荷が分散してしまいますので、肘の位置をしっかりと固定することが重要です。
また、肘を開き気味に動作を行うと二の腕裏側の外側(上腕三頭筋短頭)に、肘を閉じ気味に動作を行うと二の腕裏側の内側(上腕三頭筋長頭)に負荷が集中します。
なお、座って行うシーテッドバリエーションもありますが、肘位置の固定がさらに難しくなりますので、女性には動画のようなライイングバリエーションがおすすめです。
動作の正しい手順は以下の通りです。
①ベンチに仰向けになり、肘位置を固定して構える
②肘から先だけで、肘を伸ばしながらバーベルを上げる
③ゆっくりと効かせながら元に戻る
細マッチョ筋トレメニュー例



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