
ディップスは大胸筋下部と上腕三頭筋に効果のある自重トレーニングですが、その動作のポイントと器具なしで自宅の椅子を使って行う方法を解説します。
ディップスが効果のある筋肉部位
各筋肉の構造や作用および起始停止・支配神経に関しては下記の専門サイトおよび学術文献を参照しています。

Skeletal Muscle: A Brief Review of Structure and Function(PDF)
大胸筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止

読みかた:だいきょうきん
英語名称:pectoralis major muscle
部位詳細:上部|中部(内側)|下部
起始:鎖骨の内側|胸骨前面第2~6肋軟骨|腹直筋鞘前葉
停止:上腕骨大結節稜
上腕三頭筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止

読みかた:じょうわんさんとうきん
英語名称:triceps
部位詳細:長頭|外側頭|内側頭
起始:肩甲骨関節下結節|上腕骨後面|上腕骨後面
停止:尺骨肘頭
ディップスは大胸筋のなかでも下部に効果が高く、そのほかにも上腕三頭筋(特に長頭)に効果があります。
基本的なディップス
こちらが、もっとも基本的なディップスの動画で、大胸筋下部を中心に上腕三頭筋にも効果があります。
動作のポイントは、真下ではなくやや斜め前に身体を下ろすことと、肘をできるだけ閉じて行うことです。
また、苦しくなると、つい顎を上げてしまいがちですが、大胸筋の収縮に連動する首の動きは屈曲です。苦しい時こそ顎を引いて大胸筋を完全収縮させましょう。
◆ディップスのやり方と動作ポイント
①デップスバーをグリップし、胸を張り肩甲骨を寄せ、足を浮かせて構える
②肩甲骨を寄せたまま、脇をしめ、身体をやや前傾させて身体を下ろす
③上腕が床と平行になるまで身体を下ろしたら、肩甲骨を寄せたまま身体を押し上げる
④身体を押し上げたら、しっかりと肘を伸ばし、顎をやや引いて大胸筋と上腕三頭筋を完全収縮させる
◆ワンポイントアドバイス
ディップスで肩を痛めないためには、身体を前傾させることと、肩甲骨をしっかりと寄せて動作することが重要です。
上腕三頭筋に効率的なディップス
また、こちらのように斜め後に身体を下ろすディップスでは、上腕三頭筋に高い負荷がかかります。
肘を閉じ気味で動作すると上腕三頭筋長頭(腕の内側)に、逆に肘を開き気味で動作すると上腕三頭筋内側頭と外側頭(腕の外側)に効率的です。
椅子を流用したディップス
また、ディップスは特別な器具がなくても自宅の椅子を流用して行うことも可能です。ぜひ、チャレンジしてみてください。
ディップスが肩に効いてしまう理由

ディップスは正しいフォームで行えば、肩に効いてしまうということはありません。むしろディップスの動作軌道で肩に効いてしまうのは、肩関節に負担がかかっているということなので、早急にフォームを改善する必要があります。

当サイト執筆者は、運営しているクラブチームジム「FutamiTC」で日常的にトレーニング指導を行っており、本記事の内容も実際の指導現場で得た経験をもとにフォームのポイントやアドバイス点をまとめています。
ジムトレーナーとしての実際の指導ポイント
トレーニング動作と首の連動性

トレーニングフォーム全般において重要となるのは、実施する種目の動作と首の位置関係を適切に保つことです。特に、身体の前側の筋群(大胸筋・三角筋・上腕三頭筋・大腿四頭筋など)を収縮させる局面では、動作フィニッシュで軽く顎を引き、首を安定させることが有効です。
一方で、身体の後ろ側の筋群(広背筋・僧帽筋・上腕二頭筋・脊柱起立筋・ハムストリングスなど)を収縮させる局面では、動作フィニッシュで首の位置をわずかに後方へ誘導し、顎の角度を適切に調整することで動作が安定します。
トレーニング動作と呼吸

トレーニング動作における呼吸タイミングも重要な要素です。一般に、筋肉は息を吐く局面で収縮が高まり、息を吸う局面で弛緩しやすくなります。そのため、動作フィニッシュの位置では息をしっかり吐いて筋活動を安定させ、いったん動作を止めてから息を吸い、元の姿勢へ戻る流れを作ることが有効です。
それでは、次の項目では、実際に筆者がジムトレーナーとして運営ジムで選手に指導している本種目の具体的な動作ポイント・フォームについて解説します。
本種目の具体的な動作ポイント・フォーム

ディップスを大胸筋下部に効率的に効かせるためには、やや斜め前方に上体を傾けながら身体を下ろすようにしてください。逆に、上腕三頭筋がターゲットの場合は、やや上体を後傾させた状態で動作を行ってください。
ディップスの順番と回数設定
ターゲットにする筋繊維に最適な反復回数

筋肉を構成している筋繊維には主に三種類があり、それは、筋繊維TYPE2b(速筋|FG筋)、筋繊維TYPE2a(速筋|FO筋)、筋繊維TYPE1(遅筋|SO筋)で、それぞれの特徴と鍛えるのに適切な反復回数は以下の通りです。
筋繊維TYPE2b(速筋|FG筋)
筋肥大を目的とした筋力トレーニングを実施する場合は、筋肥大しやすい特性を持つ「筋繊維タイプ2b(短時間に爆発的な収縮をする筋繊維)」を対象として行います。具体的には8~10回前後の反復動作で限界がくる負荷設定で筋力トレーニングを実施します。
筋繊維TYPE2a(速筋|FO筋)
体力作りを目的とした筋力トレーニングを実施する場合は、中程度に筋肥大する特性を持つ「筋繊維タイプ2a(持久要素のある瞬発的な収縮をする筋繊維)」を対象として行います。具体的には12~15回前後の反復動作で限界がくる負荷設定で筋力トレーニングを実施します。
筋繊維TYPE1(遅筋|SO筋)
筋肥大を伴わない筋力トレーニングを実施する場合は、ほぼ筋肥大せずに緊密度が向上する特性を持つ「筋繊維タイプ1(持久的に収縮をする筋繊維)」を対象として行います。具体的には20回以上の反復動作で限界がくる負荷設定で筋力トレーニングを実施します。
トレーニング種目を実施する順序
トレーング種目を実施する順序は、コンパウンド種目(複数の筋肉と関節を動かす多関節運動種目)を先に行い、その後でアイソレーション種目(単一の筋肉と関節を動かす単関節運動)を行うのが基本です。また、複数のコンパウンド種目・アイソレーション種目を実施する場合は、それぞれ使用重量の高い種目から先に行います。

ディップスは大胸筋の複合関節種目なので、上腕三頭筋のなどの単関節種目の前に行ってください。
また、適切な1セットの負荷回数設定は以下の通りです。
○筋肥大トレーニング:6~10回
○通常トレーニング:15回前後
○シェイプアップ筋トレ:20回以上
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本種目のポイントまとめ
筋肉への効果
ディップスは自重トレーニングの中でも強度が高く、大胸筋下部と上腕三頭筋をしっかり鍛えられる種目です。動き自体はシンプルですが、身体の角度によって効く部位が変わるため、フォームの調整がとても大切です。
正しいフォームと注意点
身体をやや前に倒すと大胸筋下部に、身体を少し後ろに傾けると上腕三頭筋に負荷が入りやすくなります。動作中は脇を締め、肩甲骨を寄せた状態をキープするのがポイントです。肩がすくむと肩関節に負担がかかりやすいので、胸を張りながら動作してください。
呼吸と動作のテンポ
身体を下ろす時に息を吸い、押し上げる時に息を吐きます。特に身体を押し上げたトップポジションでは顎を軽く引き、大胸筋や上腕三頭筋が縮まる感覚を意識してください。
強度調整とバリエーション
負荷が高すぎる場合は足を軽く台に乗せて行う方法や、椅子を使ったディップス(ベンチディップス)などが適切です。肘の角度によって上腕三頭筋のどの部位に効くかが変わる(肘を張ると上腕三頭筋短頭・肘を閉じると上腕三頭筋長頭)ため、ターゲットにしたい部位に合わせてフォームを調整してください。
回数設定
筋肥大を狙う場合は6〜10回の負荷反復回数が目安です。一般的なトレーニングなら15回前後、シェイプアップ目的なら20回以上をゆっくり効かせるように行うのが効果的です。
次のステップと応用
ディップスに慣れてきたら、動作中の一時停止(肘の角度90度前後)などで負荷を上げることができます。さらに負荷を上げたウエイトディップスができるようになれば、さらに大胸筋と上腕三頭筋を高負荷で鍛えることが可能です。
安全性と注意点
ディップスで肩が痛くなるのは、フォームが原因のことがほとんどです。肩甲骨を寄せずに身体を真下に落とすと肩関節に負担がかかります。必ず胸を張り、身体を「斜め前」に移動させるようにしてください。
フィジーク選手からのアドバイス

ディップスは大胸筋下部を中心に上腕三頭筋長頭にも効果のある筋トレ種目です。これらの部位は、細マッチョ・フィジーク系トレーニングではあまり筋肥大させないほうが良い部位ですので、負荷回数設定(RM)に十分に気をつけ、15回前後で反復限界が来るように行います。
本種目はフォームが間違っていると肩関節に対して強い負担がかかります。それを避けるためには、しっかりと肩甲骨を寄せて肩関節が前に出ないようにするとともに、肘を閉じきみにするとともに、やや前傾姿勢を保って斜め前方下方に身体を下すように意識します。
なお、身体を低く下ろしすぎることも肩を痛める要因です。肘の角度が90度前後で身体を下すのを止めるようにしてください。肘が鋭角になるほど身体を下す必要はありません。
また、本種目はセット終盤で苦しくなってくると顎を上げてしまいがちですが、大胸筋の収縮方向と顎の連動性は「顎を引いた時に大胸筋が最大収縮する」です。動作のフィニッシュ位置では顎を引くようにしてください。
筋肉の名称と作用

身体を鍛えていく上で、まず理解したいのが全身の主な筋肉の名称と作用です。それぞれの筋肉の役割を知ることで、効率のよいトレーニングを行うことが可能になります。
▼筋肉名称デジタル図鑑
【筋肉名称デジタル図鑑】各部位の名前・作用・筋トレ方法(鍛え方)
さまざまな筋トレメソッド

筋トレ効果を高める各種のメソッド・トレーニング方法を詳細解説したものが下記の記事です。刺激を変えたい、さらに追い込みたいときなどに是非ご活用ください。
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身体を鍛えたら食事にも気を使う

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自重トレーニングをランクアップ

自重トレーニングの負荷をランクアップさせ、さらに効率的にボディメイクをしていくのに便利なのが、トレーニングチューブ=レジスタンスバンドの併用です。当ジム運営ショップでは、品質確認を行った海外製品を輸入してリーズナブルにご提供しています。
