
自重トレーニングのディップスは大胸筋下部と上腕三頭筋に効果の高い筋トレ種目ですが、時々「ディップスが肩に効いてしまう」という質問を受けます。
ディップスが肩に効くのはフォームが間違っているからであり、さらにフォームによっては肩の筋肉・三角筋ではなく、肩関節に効く(負担がかかる)場合すらあります。
これらを踏まえて、ディップスの正しいやり方と肩に効いてしまう場合の原因について解説します。
■ディップスが効果のある筋肉部位
●大胸筋下部と上腕三頭筋長頭

プレス系種目のほとんどは、上図の上半身の押す筋肉三つ(大胸筋・三角筋・上腕三頭筋)に効果がありますが、ディップスにかぎっては正しいフォームで行えば三角筋に負荷がかかることはありません。
ディップスは大胸筋のなかでは大胸筋下部に、上腕三頭筋のなかでは上腕を閉じた(脇を閉めた)状態で作用する上腕三頭筋長頭に効果があります。
■ディップスの正しいフォーム
●上半身をやや前傾させ脇を閉めて行う
こちらが、模範的な正しいフォームでディップスを行っているトレーニング動画です。
まず、大胸筋下部を鍛えるためには、その作用である「腕を斜め前下方」に押し出す軌道でディップスを行う必要があり、このためには、上半身をやや前傾させて斜め前方向に身体を下ろす必要があります。
これが、ディップスの一つ目のポイントです。
次に、上腕三頭筋長頭を鍛えるためには、その作用である「肘関節伸展および上腕内転」が満たされる軌道でディップスを行わなければなりません。
このためには、脇を閉め(上腕を内転させ)さらに肘を閉めて動作を行う必要があります。
これが、ディップスの二つ目のポイントです。
以上、二つのポイントをしっかり守った正しいフォームでディップスを行えば、「ディップスが肩に効く」ということにはなりません。
■ディップスが肩に効く原因

①真下または斜め後ろに身体を下ろしている
ディップスが肩に効いてしまう場合の、良くないケースが「真下または斜め後ろに身体を下ろしている」というフォームです。このように、上半身が後ろに傾いた状態でディップスを行うと、多くの方(肩関節が柔軟な方以外)は肩関節の可動範囲を越えてしまいます。
この状態でトレーニングを繰り返すと、肩の筋肉・三角筋ではなく肩関節周辺の靭帯に過剰負荷がかかってしまい、怪我や故障の原因になってしまいます。
後傾したディップスのフォームで「肩に効いている」のは筋肉に効いているのではなく、靭帯に効いてしまっているのです。
その場合の翌日の痛みは、筋肉痛ではなく、より深層の靭帯の痛みですので、すみやかにフォームを改善しましょう。
②脇が開いて肘が横に張り出している
ディップスが肩に効いてしまうもう一つのケースが、脇が開いて肘が横に張り出し、結果として上腕三頭筋短頭と三角筋を動作に使ってしまっているというものです。ちょうどデクラインベンチプレスの軌道になっていると言えます。
このケースは、先のケースほどリスキーな間違いではありませんが、ディップスの最大の効果である大胸筋下部と上腕三頭筋長頭への負荷を逃がしていますので、やはりフォーム改善をおすすめします。
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