
本記事では、元JOC強化指定選手としての競技経験をもとに、ベンチディップスの実践的なやり方と効果を解説します。
ベンチディップスは、単なる自重トレーニングや腕の補助種目ではなく、競技動作に直結する「押し出し動作の出力基盤」を鍛える種目です。正しく行えば、上腕三頭筋を中心に、押す・支える・耐える力を同時に高めることができ、パンチ動作の安定性を根本から強化できます。
この記事を書いた選手(本種目を実施)

上岡颯選手プロフィール
テコンドー主戦績
(2009~2020)
JOC全日本ジュニア選手権準優勝
全日本選手権東日本地区大会優勝
全日本学生選手権準優勝
全日本選手権準優勝
2020年度強化指定選手
そのフィジカルトレーナー(本種目を指導)

上岡岳プロフィール
アームレスリング主戦績
全日本マスターズ80kg超級2位
アジア選手権マスターズ90kg級3位
学芸員(J-Global掲載ページ)
元JOC強化指定選手が解説シリーズについて
本シリーズは、競技現場で実際に使われてきた主要トレーニング種目について、元JOC強化指定選手およびその指導者が、実体験と競技パフォーマンスの観点から解説するものです。
理論や流行を先に置くのではなく、「なぜその種目を選び、どのような目的で実施してきたのか」という競技者側の判断を一次情報として提示します。
筋肥大や見た目の変化を目的とした一般論ではなく、競技力向上に直結する使い分けや考え方を重視している点が、本シリーズの特徴です。
本シリーズで扱う種目はいずれも、競技トレーニングの中で実際に採用・検証されてきたものに限定しています。
ベンチディップスが効果のある筋肉部位
ベンチディップスで主に強化される筋肉は次の通りです。
上腕三頭筋(長頭)

読みかた:じょうわんさんとうきん
英語名称:triceps
部位詳細:長頭|外側頭|内側頭
起始:肩甲骨関節下結節|上腕骨後面|上腕骨後面
停止:尺骨肘頭
上腕三頭筋を構成する3つの頭(長頭・外側頭・内側頭)の中でも長頭への負荷が最大化しやすい種目です。腕を伸ばす動作の終盤で強い収縮が発生するため、押す力や爆発的な伸展動作に直結します。
三角筋前部・大胸筋下部

読みかた:さんかくきん
英語名称:deltoid muscle
部位詳細:前部|中部(側部)|後部
起始:鎖骨外側前縁|肩甲骨肩峰|肩甲骨肩甲棘
停止:上腕骨三角筋粗面

読みかた:だいきょうきん
英語名称:pectoralis major muscle
部位詳細:上部|中部(内側)|下部
起始:鎖骨の内側|胸骨前面第2~6肋軟骨|腹直筋鞘前葉
停止:上腕骨大結節稜
ベンチディップスは肘を伸ばす動作を主体とするため主働筋は上腕三頭筋ですが、肩関節や胸郭の関与もあり三角筋前部と大胸筋下部にも二次的な負荷がかかります。より正確な刺激配分を行うにはフォームと肘の位置を意識することが重要です。
筋肉の詳細図鑑

筋肉の構造と作用に関しては下記の学術サイトを参照しています。
・https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/
ベンチディップスの格闘技における効果

ベンチディップスは、上腕三頭筋の伸展力と肩関節の安定性を同時に強化できる点で、パンチ力や突き放し動作の向上に直結する種目です。打撃動作は腕の筋力だけで成立するものではなく、体幹から伝わった力を肘関節で逃がさず、最後まで押し切る構造があって初めて成立します。実際の格闘競技では、肩や胸の筋力が強くても、三頭筋の伸展制御が弱い選手は、打撃や押し合いで力が途中で抜けてしまいます。
ベンチディップスを継続すると、肘を伸ばし切る局面で三頭筋が安定して働くようになり、打撃動作や突き放し動作の終末出力が安定します。その結果、初速だけに頼らない、当たり負けしない打撃と押しの強さを作る土台が形成されます。
実際の効果がわかる動画
テコンドーや打撃系競技では、パンチは決定打であると同時に、相手のリズムや間合いを崩すための重要な動作です。私自身、上腕三頭筋の伸展動作を重点的に強化する過程でベンチディップスを継続的に取り入れたことで、パンチの押し込みと安定感が明らかに変化しました。これは単に腕力が強くなったという話ではなく、体幹から伝わった力を肘関節で逃がさず、最後まで押し切る動作に身体が順応した結果です。試合の中で、連打後も打撃の出力が落ちず、相手を押し続ける感覚を保てるようになったのは、ベンチディップスによって三頭筋の出力制御が鍛えられたからだと実感しています。この感覚は、実戦を想定したトレーニングでしか身につきません。
この動画は、インカレ=全日本大学生選手権準決勝のものですが、長年のベンチディップストレーニングによって威力を増した先制パンチで相手の動きを止め、とどめのハイキックにつながる様子が映っています。
ベンチディップスの実際のやり方

以下は競技現場で採用されてきた実践的なやり方です。実施の際は動作の過程で負荷が逃げないようにフォームを最重要視します。
1. 構え
ベンチや椅子の端に背を向け、両手を後方に付けて指先は前方へ。足は前に伸ばします。このとき肩甲骨を軽く引き寄せ、胸郭を開く姿勢を作ると肩関節の負担が軽減します。
2. 下げ動作
肘をゆっくり曲げながら身体をまっすぐ下ろしていきます。上腕が床と平行になるまで深く沈み込むことで上腕三頭筋長頭が最大伸展します。
3. 上げ動作(押し上げ)
下まで下がったら肘を伸ばしながら身体を押し上げます。肘を完全伸展まで伸ばしきることで収縮感を最大化します。肘を伸ばしきった瞬間に一定時間止めることで刺激が強まります。
補足. 肘位置と肩甲骨のコントロール
肩甲骨を寄せずに動作すると肩関節に過剰な負担がかかりやすくなります。肩甲骨をしっかりと下げて安定させることで、上腕三頭筋長頭への刺激を逃がさずに動作できます。

当サイト運営ジム「FutamiTC」での指導経験をもとに記載しています。
動画付き解説

ベンチディップスのポイント解説

ベンチディップを二の腕裏側に効果的に効かせるために大切なポイントは「脇を閉めて行う」ことです。これにより、二の腕裏側の筋肉・上腕三頭筋のなかで、体積の大きな内側(長頭)に集中的な負荷をかけることか可能です。
また、椅子(ベンチ)を使わず床に手をついて行うこともでき、このようなやり方を逆腕立て伏せとも呼びます。
しかしながら、効果の高いのは椅子(ベンチ)を使って行うやり方で、これは可動範囲が広がり、上腕三頭筋を最大伸展から最大収縮させることが可能だからです。
ですので、基本的には床ではなく椅子(ベンチ)を使ってトレーニングすると効果的です。
部位分割メニュー例

週2・3・4回の部位分割筋トレメニュー
主な筋トレ種目一覧

図解付き主要種目の一覧ページ
下記にリンクしています主要種目の個別解説記事は、動画だけでなく一目で理解しやすい図解付きでフォームについて説明しています。
自重トレーニング
腕立て伏せ(大胸筋)パイクプッシュアップ(三角筋)
ベンチディップス(上腕三頭筋)
懸垂(背筋群)
バックエクステンション(背筋群)
逆手懸垂(上腕二頭筋)
自重スクワット(下半身)
チューブトレーニング
チューブチェストプレス(大胸筋)チューブチェストフライ(大胸筋)
チューブショルダープレス(三角筋)
チューブキックバック(上腕三頭筋)
チューブローイング(背筋群)
チューブカール(上腕二頭筋)
チューブレッグプレス(下半身)
ダンベルトレーニング
ダンベルプレス(大胸筋)ダンベルフライ(大胸筋)
ダンベルショルダープレス(三角筋)
ダンベルサイドレイズ(三角筋)
ダンベルキックバック(上腕三頭筋)
ダンベルローイング(背筋群)
ダンベルカール(上腕二頭筋)
ダンベルスクワット(下半身)
マシントレーニング
マシンチェストプレス(大胸筋)ケーブルフライ(大胸筋)
スミスマシンベンチプレス(大胸筋)
マシンショルダープレス(三角筋)
ケーブルプレスダウン(上腕三頭筋)
ラットプルダウン(背筋群)
ケーブルローイング(背筋群)
スミスマシンデッドリフト(背筋群)
ケーブルカール(上腕二頭筋)
マシンレッグプレス(下半身)
スミスマシンスクワット(下半身)
バーベルトレーニング
バーベルベンチプレス(大胸筋)バーベルショルダープレス(三角筋)
ナローベンチプレス(上腕三頭筋)
バーベルデッドリフト(背筋群)
バーベルベントオーバーロウ(背筋群)
バーベルグッドモーニング(背筋群)
バーベルカール(上腕二頭筋)
バーベルスクワット(下半身)
