
自重スクワットのバリエーションの一つで、大腿四頭筋に負荷を集中させるシシースクワットのやり方を動画をまじえて解説します。
シシースクワットが効果のある筋肉部位
各筋肉の構造や作用および起始停止・支配神経に関しては下記の専門サイトおよび学術文献を参照しています。

Skeletal Muscle: A Brief Review of Structure and Function(PDF)
大腿四頭筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止

読みかた:だいたいしとうきん
英語名称:quadriceps
部位詳細:大腿直筋|外側広筋|内側広筋|中間広筋
起始:腸骨下前腸骨棘・寛骨臼上縁|大腿骨大転子外側面・転子間線・殿筋粗面|大腿骨粗線内側唇|大腿骨前外側面
停止:膝蓋骨上縁・脛骨粗面|膝蓋骨上外側縁・頸骨粗面|膝蓋骨上内側縁・脛骨結節|膝蓋骨・頸骨粗面
シシースクワットは下半身の筋肉群のなかでも最大の筋肉で、太もも前面に位置して膝関節を伸展させる作用を持つ大腿四頭筋に効果の高い自重トレーニングです。
シシースクワットの動画とやり方
こちらがシシースクワットの模範的な動画です。動作に慣れるまでは、柱などを片手で保持して行いましょう。
◆シシースクワットのやり方と動作ポイント
①柱などにつかまり、背すじを伸ばして構える
②上半身を反らせ、のけぞるようにしてしゃがんでいく
③膝が90度になるまでしゃがんだら、同じ軌道で立ち上がる
◆ワンポイントアドバイス
動作がやりにくい場合は、前後に少し足をずらして構えてください。
また、何かにつま先を引っ掛けて行えば、極端にのけぞらなくても大腿四頭筋に刺激を集中させることが可能です。

当サイト執筆者は、運営しているクラブチームジム「FutamiTC」で日常的にトレーニング指導を行っており、本記事の内容も実際の指導現場で得た経験をもとにフォームのポイントやアドバイス点をまとめています。
ジムトレーナーとしての実際の指導ポイント
トレーニング動作と首の連動性

トレーニングフォーム全般において重要となるのは、実施する種目の動作と首の位置関係を適切に保つことです。特に、身体の前側の筋群(大胸筋・三角筋・上腕三頭筋・大腿四頭筋など)を収縮させる局面では、動作フィニッシュで軽く顎を引き、首を安定させることが有効です。
一方で、身体の後ろ側の筋群(広背筋・僧帽筋・上腕二頭筋・脊柱起立筋・ハムストリングスなど)を収縮させる局面では、動作フィニッシュで首の位置をわずかに後方へ誘導し、顎の角度を適切に調整することで動作が安定します。
トレーニング動作と呼吸

トレーニング動作における呼吸タイミングも重要な要素です。一般に、筋肉は息を吐く局面で収縮が高まり、息を吸う局面で弛緩しやすくなります。そのため、動作フィニッシュの位置では息をしっかり吐いて筋活動を安定させ、いったん動作を止めてから息を吸い、元の姿勢へ戻る流れを作ることが有効です。
それでは、次の項目では、実際に筆者がジムトレーナーとして運営ジムで選手に指導している本種目の具体的な動作ポイント・フォームについて解説します。
本種目の具体的な動作ポイント・フォーム

シシークワットは慣れるまではつま先に体重を乗せて行うとバランスがとりやすいですが、慣れてきたらかかとに体重を乗せることで、さらに大腿四頭筋に対する負荷を集中させることが可能です。
シシースクワットの順番と回数設定
ターゲットにする筋繊維に最適な反復回数

筋肉を構成している筋繊維には主に三種類があり、それは、筋繊維TYPE2b(速筋|FG筋)、筋繊維TYPE2a(速筋|FO筋)、筋繊維TYPE1(遅筋|SO筋)で、それぞれの特徴と鍛えるのに適切な反復回数は以下の通りです。
筋繊維TYPE2b(速筋|FG筋)
筋肥大を目的とした筋力トレーニングを実施する場合は、筋肥大しやすい特性を持つ「筋繊維タイプ2b(短時間に爆発的な収縮をする筋繊維)」を対象として行います。具体的には8~10回前後の反復動作で限界がくる負荷設定で筋力トレーニングを実施します。
筋繊維TYPE2a(速筋|FO筋)
体力作りを目的とした筋力トレーニングを実施する場合は、中程度に筋肥大する特性を持つ「筋繊維タイプ2a(持久要素のある瞬発的な収縮をする筋繊維)」を対象として行います。具体的には12~15回前後の反復動作で限界がくる負荷設定で筋力トレーニングを実施します。
筋繊維TYPE1(遅筋|SO筋)
筋肥大を伴わない筋力トレーニングを実施する場合は、ほぼ筋肥大せずに緊密度が向上する特性を持つ「筋繊維タイプ1(持久的に収縮をする筋繊維)」を対象として行います。具体的には20回以上の反復動作で限界がくる負荷設定で筋力トレーニングを実施します。
トレーニング種目を実施する順序
トレーング種目を実施する順序は、コンパウンド種目(複数の筋肉と関節を動かす多関節運動種目)を先に行い、その後でアイソレーション種目(単一の筋肉と関節を動かす単関節運動)を行うのが基本です。また、複数のコンパウンド種目・アイソレーション種目を実施する場合は、それぞれ使用重量の高い種目から先に行います。

シシースクワットは、大腿四頭筋の単関節種目に近い動作ですので、複合関節運動の通常スクワット系トレーニングの後に行ってください。
また、適切な1セットの負荷回数設定は以下の通りです。
○筋肥大トレーニング:6~10回
○通常トレーニング:15回前後
○シェイプアップ筋トレ:20回以上
本種目のポイントまとめ
筋肉への効果と役割
シシースクワットは太もも前面にある大腿四頭筋にしっかり負荷を集中させられる種目で、膝を伸ばす力(伸展力)を強化するのに向いています。深くしゃがむと大腿直筋のストレッチが強まり、そこから立ち上がる動作で外側広筋と内側広筋への負荷が高まるため、大腿四頭筋全体をバランスよく鍛えることが可能です。
正しいフォームと注意点
かかとから頭までを一直線に保つ意識で上体を後ろに倒しながらしゃがみ、膝の角度が90度付近で止まるように動作します。腰を反りすぎたり膝が内側に入ったりするとせっかくの負荷が散ってしまうため、つま先と膝の向きを揃えて安定した軌道で行ってください。
呼吸と動作のテンポ
しゃがんでから息を吸い、立ち上がりながら息を吐く呼吸を基本にします。動作はゆっくり行い、折り返しポジションで反動を使わないことが大切です。ゆっくりとした動作で行うことで、大腿四頭筋への負荷がさらに高まります。
強度調整
つま先側に軽く体重を乗せることで後ろに倒れやすくなり、動作が安定します。逆に、かかとを重心にすると大腿四頭筋への負荷が強まります。つま先を何かに引っ掛けて実施することでフォームが安定し深くしゃがみやすくなります。負荷を増やしたい場合は、ダンベルなどのウエイトを胸に抱えてたり、動作のボトムポジションで動きを一瞬止めることでも強度を上げることができます。
回数設定
筋肥大を目指す場合は6~10回で限界が来る負荷設定(動作スピード)で行うと効果的です。身体つくりの場合は、15回前後の反復回数を目安にし、筋持久力を鍛えたい場合やシェイプアップ目的であれば、20回以上の高反復回数で行います。
安全性と注意点
膝の向きとつま先の向きをそろえておくことが、膝関節を守るための絶対的な基本です。また、上体を反らせすぎると腰に負担がかかるため、胸をやや張る程度にとどめてください。
筋肉の名称と作用

身体を鍛えていく上で、まず理解したいのが全身の主な筋肉の名称と作用です。それぞれの筋肉の役割を知ることで、効率のよいトレーニングを行うことが可能になります。
▼筋肉名称デジタル図鑑
【筋肉名称デジタル図鑑】各部位の名前・作用・筋トレ方法(鍛え方)
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