
スミスマシンワイドスクワットは下半身全体に効果が高く、なかでも他のスクワット系トレーニングでは効かせにくい内転筋群にも有効なバリエーションです。そのやり方とポイントを動画をまじえて解説します。
スミスマシンワイドスクワットが効果のある筋肉部位
各筋肉の構造や作用および起始停止・支配神経に関しては下記の専門サイトおよび学術文献を参照しています。

Skeletal Muscle: A Brief Review of Structure and Function(PDF)
大腿四頭筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止

読みかた:だいたいしとうきん
英語名称:quadriceps
部位詳細:大腿直筋|外側広筋|内側広筋|中間広筋
起始:腸骨下前腸骨棘・寛骨臼上縁|大腿骨大転子外側面・転子間線・殿筋粗面|大腿骨粗線内側唇|大腿骨前外側面
停止:膝蓋骨上縁・脛骨粗面|膝蓋骨上外側縁・頸骨粗面|膝蓋骨上内側縁・脛骨結節|膝蓋骨・頸骨粗面
スミスマシンワイドスクワットは下半身全体に効果のあるトレーニングですが、とくに立ち上がる動作において、太ももの前側の筋肉で膝関節を伸展させる作用のある大腿四頭筋に効果があります。
大腿四頭筋は人体のなかで最大の筋肉で、この部位を鍛えることで代謝が向上したり、成長ホルモンの分泌が促進されたりするので、脚を鍛えることだけでなく全身のシェイプアップや筋肥大にも効果的です。
内転筋群の英語名称・構造・部位詳細

読みかた:ないてんきんぐん
英語名称:adductorsmuscles
部位詳細:大内転筋|長内転筋|短内転筋|薄筋|恥骨筋
スミスマシンワイドスクワットは太もも内側に位置する内転筋群(大内転筋・薄筋・恥骨筋・長内転筋・短内転筋)に効果があります。
ハムストリングスの英語名称・構造・部位詳細・起始停止

読みかた:はむすとりんぐす
英語名称:hamstrings
部位詳細:大腿二頭筋長頭|大腿二頭筋短頭|半膜様筋|半腱様筋
起始:坐骨結節|大腿骨粗線外側唇・外側筋間中隔|坐骨結節|坐骨結節内側面
停止:腓骨頭|腓骨頭|脛骨内側顆・斜膝窩靭帯|脛骨粗面内側
スミスマシンワイドスクワットは、しゃがむ動作のなかで、大腿四頭筋の拮抗筋であるハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)と呼ばれる、膝関節を屈曲させる作用のある太もも後ろ側の筋肉群にも効果的です。
臀筋群の英語名称・構造・部位詳細・起始停止

読みかた:でんきんぐん
英語名称:gluteus muscles
部位詳細:大臀筋|中臀筋|小臀筋
起始:腸骨稜・腸骨翼|腸骨翼殿筋面・腸骨稜|腸骨翼
停止:大腿筋膜外側部・大腿骨粗面|大腿骨大転子尖端|大腿骨大転子前面
スミスマシンワイドスクワットは、立ちあがる動作のなかで、お尻の筋肉で股関節を伸展させる作用のある大臀筋にも強い負荷がかかり効果があります。
腸腰筋群の英語名称・構造・部位詳細

読みかた:ちょうようきんぐん
英語名称:iliopsoas
部位詳細:腸骨筋|大腰筋|小腰筋
スミスマシンワイドスクワットは、しゃがむ動作のなかで、大臀部筋の拮抗筋で股関節を屈曲させる作用のある腸腰筋群にも効果があります。
下腿三頭筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止

読みかた:かたいさんとうきん
英語名称:triceps muscle of calf
部位詳細:腓腹筋外側頭|腓腹筋内側頭|ヒラメ筋
起始:大腿骨外側上顆|大腿骨内側上顆|腓骨頭・脛骨後面
停止:踵骨隆起|踵骨隆起|踵骨隆起
スミスマシンワイドスクワットは、立ち上がる動作のなかで、ふくらはぎの筋肉で足首関節を伸展させる作用のある下腿三頭筋にも効果があります。
前脛骨筋

スミスマシンワイドスクワットは、しゃがむ動作のなかで下腿三頭筋の拮抗筋で足首関節を屈曲させる作用のある前脛骨筋にも効果があります。
スミスマシンワイドスクワットのやり方と動画
スミスマシンワイドスクワットの模範的な動画がこちらのものです。

なお、スクワット系トレーニング全般の正しいフォームとやり方は上図のようになります。そのポイントは以下の通りです。
○膝がつま先より前に出ないようにする
○胸を張り、背中を反らせる
○顎を上げやや上を見る
○椅子に座るように斜め後ろにしゃがむ
※このフォームがとりづらい場合は、かかとに数センチの板などを置くと簡単に姿勢がとれます。
◆スミスマシンワイドスクワットのやり方と動作ポイント
①足を大きく開き、シャフトを肩で保持して胸を張り背すじを伸ばして構える
②膝がつま先よりも前に出ないように気をつけ、お尻を突き出しながらしゃがんでいく
③太ももが床と平行になるまでしゃがんだら、反動を使わずに同じ軌道で立ち上がる
◆ワンポイントアドバイス
つま先と膝の向きを揃えるように意識して動作を行うことが大切です。また、背中が丸くならないように、視線をやや上に向けるのがコツです。

当サイト執筆者は、運営しているクラブチームジム「FutamiTC」で日常的にトレーニング指導を行っており、本記事の内容も実際の指導現場で得た経験をもとにフォームのポイントやアドバイス点をまとめています。
ジムトレーナーとしての実際の指導ポイント
トレーニング動作と首の連動性

トレーニングフォーム全般において重要となるのは、実施する種目の動作と首の位置関係を適切に保つことです。特に、身体の前側の筋群(大胸筋・三角筋・上腕三頭筋・大腿四頭筋など)を収縮させる局面では、動作フィニッシュで軽く顎を引き、首を安定させることが有効です。
一方で、身体の後ろ側の筋群(広背筋・僧帽筋・上腕二頭筋・脊柱起立筋・ハムストリングスなど)を収縮させる局面では、動作フィニッシュで首の位置をわずかに後方へ誘導し、顎の角度を適切に調整することで動作が安定します。
トレーニング動作と呼吸

トレーニング動作における呼吸タイミングも重要な要素です。一般に、筋肉は息を吐く局面で収縮が高まり、息を吸う局面で弛緩しやすくなります。そのため、動作フィニッシュの位置では息をしっかり吐いて筋活動を安定させ、いったん動作を止めてから息を吸い、元の姿勢へ戻る流れを作ることが有効です。
それでは、次の項目では、実際に筆者がジムトレーナーとして運営ジムで選手に指導している本種目の具体的な動作ポイント・フォームについて解説します。
本種目の具体的な動作ポイント・フォーム

スミスマシンワイドスクワットでもっとも注意する点は、膝をつま先よりも前に出さないということです。膝がつま先より前に出た時点で、負荷は筋力ではなく膝関節の弾性で支えられているだけの状態になり、故障の原因になりますので十分い注意してください。
また、スミスマシンの特性として軌道が固定されていますので、本セットの前にシャフトだけで軌道確認を行い、腰や膝に負担のないフォームを確認することをおすすめします。
スミスマシンワイドスクワットの順番と回数設定
ターゲットにする筋繊維に最適な反復回数

筋肉を構成している筋繊維には主に三種類があり、それは、筋繊維TYPE2b(速筋|FG筋)、筋繊維TYPE2a(速筋|FO筋)、筋繊維TYPE1(遅筋|SO筋)で、それぞれの特徴と鍛えるのに適切な反復回数は以下の通りです。
筋繊維TYPE2b(速筋|FG筋)
筋肥大を目的とした筋力トレーニングを実施する場合は、筋肥大しやすい特性を持つ「筋繊維タイプ2b(短時間に爆発的な収縮をする筋繊維)」を対象として行います。具体的には8~10回前後の反復動作で限界がくる負荷設定で筋力トレーニングを実施します。
筋繊維TYPE2a(速筋|FO筋)
体力作りを目的とした筋力トレーニングを実施する場合は、中程度に筋肥大する特性を持つ「筋繊維タイプ2a(持久要素のある瞬発的な収縮をする筋繊維)」を対象として行います。具体的には12~15回前後の反復動作で限界がくる負荷設定で筋力トレーニングを実施します。
筋繊維TYPE1(遅筋|SO筋)
筋肥大を伴わない筋力トレーニングを実施する場合は、ほぼ筋肥大せずに緊密度が向上する特性を持つ「筋繊維タイプ1(持久的に収縮をする筋繊維)」を対象として行います。具体的には20回以上の反復動作で限界がくる負荷設定で筋力トレーニングを実施します。
トレーニング種目を実施する順序
トレーング種目を実施する順序は、コンパウンド種目(複数の筋肉と関節を動かす多関節運動種目)を先に行い、その後でアイソレーション種目(単一の筋肉と関節を動かす単関節運動)を行うのが基本です。また、複数のコンパウンド種目・アイソレーション種目を実施する場合は、それぞれ使用重量の高い種目から先に行います。

スミスマシンワイドスクワットは下半身の複合関節種目なので、大腿四頭筋やハムストリングスの単関節種目の前に行うようにしてください。
また、適切な1セットの負荷回数設定は以下の通りです。
○筋肥大トレーニング:6~10回
○通常トレーニング:15回前後
○シェイプアップ筋トレ:20回以上
筋肉の名称と作用

身体を鍛えていく上で、まず理解したいのが全身の主な筋肉の名称と作用です。それぞれの筋肉の役割を知ることで、効率のよいトレーニングを行うことが可能になります。
▼筋肉名称デジタル図鑑
【筋肉名称デジタル図鑑】各部位の名前・作用・筋トレ方法(鍛え方)
さまざまな筋トレメソッド

筋トレ効果を高める各種のメソッド・トレーニング方法を詳細解説したものが下記の記事です。刺激を変えたい、さらに追い込みたいときなどに是非ご活用ください。
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身体を鍛えたら食事にも気を使う

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