
筋トレ界隈では、プロテインバーは「手軽」「高タンパク」「間食に最適」という扱いを受けています。バッグに入れておける、コンビニで買える、忙しくてもタンパク質が摂れる。こうした利便性が評価され、あたかも筋トレ向き食品の代表格のように語られています。しかし、競技者視点で冷静に数字を追うと、この評価はかなり危険です。
プロテインバーで必要なタンパク質量を確保しようとすると、先に身体が壊れます。
なぜプロテインバーが筋トレ向きだと思われているのか
プロテインバーが支持される理由は単純です。
「プロテイン」という名前がついており、一本あたり10〜20g前後のタンパク質が含まれている。しかも甘くて食べやすい。多くの人が「お菓子よりマシ」「間食ならこれ」と思い込み、筋トレと結びつけてきました。
しかし、この評価は量の錯覚によって成り立っています。
一本あたりのタンパク質量は筋トレ的には少なすぎる
一般的なプロテインバー1本に含まれるタンパク質は、おおよそ10〜15g、多くても20g程度です。一方、筋肥大を目的とした筋トレでは、体重1kgあたり約2g前後のタンパク質が一つの目安になります。体重70kgなら、1日140g前後です。
ここで現実を計算します。仮に1本15gのプロテインバーで140gを満たそうとすると、1日9〜10本必要になります。
この時点で、すでに無理があります。
標準的なプロテインバーのカロリー・栄養素
プロテインバー 1本(約55〜60g)のカロリー・栄養素
エネルギー:約200 kcal
タンパク質:10〜15g
脂質:8〜12g
炭水化物:20〜30g(うち糖質15〜25g)
一日10本も食べたらどうなるか、容易に想像できますよね。正直、1本で限界です。
糖類の標準摂取量の目安(WHO基準)
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糖類(遊離糖類)については、世界保健機関(WHO)が明確な基準を示しています。
ここでいう糖類とは、砂糖・ブドウ糖・果糖・水あめ・シロップ類・果汁濃縮物など、食品や飲料に添加される「遊離糖(free sugars)」を指します。
白米や芋などに含まれるデンプン由来の糖質は、この基準には含まれません。
WHO(世界保健機関)の推奨
WHOは2015年に発表したガイドラインにおいて、成人および小児に対し、遊離糖類の摂取量を制限することを強く推奨しています。
- 総エネルギー摂取量の10%未満に抑えるべき(強い推奨)
- さらなる健康効果を得るためには5%未満が望ましい(条件付き推奨)
数値に換算した場合の目安
1日の総摂取カロリーを2000kcalと仮定した場合、WHO基準は以下の数値になります。
- 10%未満:糖類 約50g/日
- 5%未満:糖類 約25g/日
この「25〜50g」という範囲が、健康面から見た糖類摂取量の現実的な上限です。
プロテインバーとの関係性
一般的なプロテインバー1本には、糖類が15〜25g前後含まれているものが多く見られます。
つまり、プロテインバー1本で、WHOが示す「望ましい摂取量(25g)」のほぼ全量、または「上限(50g)」の半分以上に到達する計算になります。
プロテインバーをタンパク質源として複数本摂取すると、タンパク質量より先に糖類摂取量が基準を大きく超える構造になっている点は、見過ごせません。
参考:WHO公式情報
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WHO公式発表(2015)
WHO calls on countries to reduce sugars intake among adults and children
WHOファクトシート(Healthy diet)
Healthy diet – World Health Organization
WHOガイドライン原文(PDF)
Sugars intake for adults and children (WHO guideline)
タンパク質より先に糖質と脂質が限界を超える
プロテインバーの最大の問題は、タンパク質ではありません。糖質と脂質です。
多くのプロテインバーは、食感と味を成立させるために、砂糖・水あめ・チョコレート・植物油脂を大量に使っています。1本あたりの糖質は15〜30g前後、脂質も5〜10g程度入っているものが珍しくありません。
これを9本食べるとどうなるか。タンパク質以前に、血糖値とカロリーが先に破綻します。
筋トレのために食べているつもりが、やっていることは「高糖質菓子の連続摂取」です。
「手軽さ」と引き換えに支払っている代償
プロテインバーは確かに手軽です。しかし、その手軽さの代償として
糖質過多
脂質過多
血糖値の乱高下
食事全体の崩壊
を同時に引き受けています。
筋トレのためにタンパク質を摂っているはずなのに、身体は糖処理に追われ続ける。
これは競技者の食事構造ではありません。
プロテインバーは「タンパク質食品」ではない
ここをはっきりさせる必要があります。プロテインバーは筋肉を作るための食品ではありません。正確に言えば、タンパク質を少し混ぜ込んだ菓子です。
肉・魚・卵・乳製品・大豆製品と違い、タンパク質が主役ではない、主役は糖質と脂質です。
名前に「プロテイン」とついているだけで、筋トレ向きだと判断するのは危険です。
使える場面があるとすればどこか
それでも、完全否定はしません。使える場面はあります。
外出中で他に何もない、食事と食事の間のつなぎ、低血糖気味の応急処置、この程度です。
タンパク質摂取の主軸に据える食品ではありません。
結論
筋トレにプロテインバーがいいかと聞かれたら、結論はこうです。必要なタンパク質量をプロテインバーで確保しようとする時点で設計ミスです。
プロテインバーは便利ですが、筋肉を作る食品でも、長期的に身体を強くする食品でもありません。
競技者は「楽だから」「名前がそれっぽいから」で食事を選びません。筋肉の材料を、余計なものを極力含まない形で確保します。その原則から見れば、プロテインバーは主役になり得ない食品です。
常識として語られすぎているからこそ、ここははっきり線を引く必要があります。
バルクアップ筋トレと身体作り筋トレの食事の特徴

バルクアップを目的とした筋トレでは、体重1kgあたり約2g前後のタンパク質を目安にしつつ、あわせてその2~3倍程度のエネルギー(主に糖質や脂質)を摂取するケースが一般的です。
健康的な身体作りを目的とした筋トレでは、体重1kgあたり約1g前後のタンパク質を一つの目安とし、糖質や脂質の摂取量を調整しながら、全体のエネルギー量をコントロールしていきます。
筋トレと食事の基礎情報・知識
タンパク質の安定摂取

筋トレの成果を継続的に出していくためにはタンパク質の安定的な摂取が必要で、そのためには冷凍タンパク質食材をストックしておくことも有効です。下記は筆者が日本代表競技者として実際に常時ストックしていた冷凍の肉類・魚介類の一例です。
PFCバランスについての基礎知識

食品は、タンパク質(P)・脂質(F)・炭水化物(C)の三大栄養素から構成されており、これらの摂取比率をPFCバランスと呼びます。一般的には「2:2:6」が一つの目安とされますが、筋トレを行う場合は、タンパク質の比率を高めた「4:1:5」前後のPFCバランスがよく用いられます。
ライフスタイルに合わせたPFCバランスの調整
筋トレの食事ではタンパク質重視が基本ですが、カロリー量はトレーニング量だけでなく生活の運動量に合わせ、活動量が多ければ脂質・炭水化物を増やし、少なければ控えめに調整します。
タンパク質とは
タンパク質は筋肉(筋繊維)の主成分であり、筋肥大を目的とした筋力トレーニングでは最も重要な栄養素です。筋肥大には体重1kgあたり約2gの純タンパク質が必要で、これは肉類・魚介類換算でおよそ10gに相当します。
脂質について
脂質は1gあたり9kcalと高カロリーで敬遠されがちですが、エネルギー効率が高く長時間トレーニング前のカロリー源として有効であり、腹持ちの良さから適度に摂取することで間食防止にも役立ちます。
炭水化物について
炭水化物は運動時の主要なエネルギー源で、吸収が速くトレーニング前のエネルギー補給に適しており、筋トレ後は筋再合成に必要なエネルギー確保のためタンパク質と合わせて摂取することが重要です。
具体的な筋トレ向き食品・食事例

下記の記事はバルクアップ・身体作りそれぞれの筋トレ目的別に、具体的な食事メニュー・レシピを解説したものです。是非、ご活用ください。
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