養殖サーモンの種類と特徴を国内外の事例に基づき生物学の学芸員が解説

この記事の数値は食品成分データベース(文部科学省)に基づいて算出し、栄養(PFC)バランスに関しては食事バランスガイド(農林水産省)の情報を参照しています。

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サーモン養殖は、回遊性を持つサケ科魚類の生活史を人為的に制御することで成立しています。降海によって急成長するという生理を利用し、短期間で高エネルギーの筋肉と脂質を蓄積させる点が生物学的な核心です。現在流通している養殖サーモンは同じ名称で扱われていても、分類学的には異なる種によって構成されています。

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タイセイヨウサケ|Salmo salar

世界の養殖サーモン生産の中心となっている種で、ノルウェー、チリ、イギリス、カナダ、タスマニアなどの冷水海域で大規模に養殖されています。

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本種はスモルト化によって海水適応すると急激に成長速度が高まり、筋肉中に脂質を効率的に蓄積します。群泳性が強く高密度飼育に耐えること、配合飼料への適応性が高いこと、周年出荷が可能であることが世界標準種となった理由です。現在「サーモン」として国際流通しているものの大半は本種です。

ギンザケ|Oncorhynchus kisutch

日本の海面養殖を代表するサーモンで、主に三陸沿岸で生産されています。タイセイヨウサケと比較すると海水飼育期間が短く、回転率が高いという特徴があります。銀化個体を海面いけすに移行すると急速に成長し、脂肪含量の高い筋肉を形成します。国内では刺身用途に適した肉質として評価されており、日本の養殖サーモン文化を形成した種です。

ニジマス(トラウトサーモン)|Oncorhynchus mykiss

本来は淡水性ですが、スモルト化によって海水適応させることで短期間に大型化させることができます。チリ、ノルウェー、日本で重要な養殖対象となっており、「トラウトサーモン」として流通します。成長速度が速く、飼育期間を短縮できるため内水面養殖との組み合わせが可能です。脂質含量が高く、身色は飼料中のカロテノイドによって調整されます。

サクラマス|Oncorhynchus masou

日本固有のサケ科魚類で、降海型の生活史を持つ個体を養殖に利用します。海水移行後の成長速度が高く、上質な脂質を筋肉中に蓄積するため高付加価値の地域ブランドとして展開されています。天然資源のイメージが強い種ですが、人工種苗による完全養殖の技術も進んでいます。

アマゴ|Oncorhynchus masou ishikawae

サクラマスの亜種で西日本に分布する在来系統です。河川残留型のイメージが強いものの、降海型を利用することで海面養殖が可能になります。小型でも成熟する生活史を持つため生産回転率が高く、地域ブランド型サーモンとして各地で展開されています。日本の養殖サーモンの中では在来遺伝資源を利用している点に生物学的な特徴があります。

キングサーモン|Oncorhynchus tshawytscha

ニュージーランドやカナダで養殖されている大型種で、サケ科の中でも特に成長後の体サイズが大きく、筋肉中の脂質含量が高いことで知られています。成長に時間を要するため生産効率は高くありませんが、高付加価値市場向けの養殖対象となっています。

ベニザケ|Oncorhynchus nerka

動物プランクトンへの食性依存度が高く、配合飼料による効率的な肥育が難しいため養殖は限定的です。生物学的には湖沼適応型の生活史を持つことが養殖効率を低下させる要因になっています。

養殖サーモンの生物学的本質

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サケ科魚類は降海によって成長速度が飛躍的に上昇し、回遊のためのエネルギーを脂質として筋肉に蓄積します。養殖はこの生理機構を利用し、回遊距離を人工環境に置き換えることでエネルギーを成長へ転換させています。つまり養殖サーモンとは、回遊魚のエネルギー貯蔵戦略を人為的に固定した存在です。

まとめ

現在の養殖サーモンは単一の魚ではなく、タイセイヨウサケ(Salmo salar)を中心に、ギンザケ(Oncorhynchus kisutch)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)、サクラマス(Oncorhynchus masou)、アマゴ(Oncorhynchus masou ishikawae)など複数種によって構成されています。それぞれの種の生活史と成長様式の違いが、生産形態と肉質の差として現れています。

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