肉牛の起源(原種)と家畜化の歴史|主な種類と特徴を生物学学芸員が解説

この記事の数値は食品成分データベース(文部科学省)に基づいて算出し、栄養(PFC)バランスに関しては食事バランスガイド(農林水産省)の情報を参照しています。

ウシは人類史の中で最も重要な大型家畜の一つであり、その肉は筋肉という生物組織そのものです。本稿では肉牛を単なる畜産物としてではなく、一つの進化系統として、生物学的起源と家畜化の過程から解説します。

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肉牛の原種

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家畜ウシの祖先はオーロックス(Bos primigenius)で、この大型野生牛は更新世から完新世にかけてユーラシアから北アフリカまで広く分布していました。

オーロックスは肩高180cmを超える個体も存在した極めて大型の草食獣で、長大な角と高い走行能力を持つ開放環境適応型のウシでした。洞窟壁画に描かれることからも分かるように、初期人類にとって重要な狩猟対象でもありました。

この種は1627年にポーランドで絶滅しましたが、現生ウシはすべてこの系統に由来します。

家畜化の起源

ウシの家畜化は約1万年前に始まり、少なくとも2つの系統で独立に行われました。

西アジア系統

Bos primigenius primigenius(原種) → Bos taurus(牛)

インダス系統

Bos primigenius namadicus(原種) → Bos indicus(牛)

Bos taurusはヨーロッパ・東アジア・日本の和牛を含む系統であり、温帯適応型です。
Bos indicusはゼブ牛と呼ばれ、肩のコブと高い暑熱耐性を持ち、熱帯・亜熱帯に適応しています。

肉牛化の歴史

古代のウシは乳・役用・肉を兼ねた多用途家畜でした。肉生産に特化した改良が本格化するのは近代以降です。

選抜の対象となったのは、成長速度・筋肉量・飼料効率・脂肪交雑、といった形質であり、これは野生のオーロックスには見られない、人為選択による進化形質です。

主な肉牛の種類

ヨーロッパ系肉牛(Bos taurus)

アンガス

早熟で脂肪交雑能力が高く、現在の穀物肥育型肉牛の代表的存在です。

ヘレフォード

放牧適性が高く粗飼料利用性に優れます。

シャロレー

大型で成長速度が速く、赤身肉生産能力が高い品種です。

リムーザン

筋肉量が多く枝肉歩留まりに優れます。

和牛(Bos taurus)

黒毛和種

脂肪交雑能力が極めて高く、世界的にも特異な肉質を持ちます。

褐毛和種

放牧適性と赤身肉生産に優れます。

日本短角種

成長が早く粗飼料利用性が高い品種です。

無角和種

飼育効率を重視して改良された系統です。

ゼブ系肉牛(Bos indicus)

ブラーマン

高温・寄生虫・乾燥に強い熱帯適応型肉牛です。

ネローレ

南米の肉牛生産の基盤となっている大型品種です。

これらはBos taurusとの交雑によって世界の肉牛生産を支えています。

生物学的に見た肉牛

肉牛とは筋肉量の増大という形質を人為的に固定されたウシです。これは反芻動物としての消化戦略によって植物を高品質な動物性タンパク質へ変換する能力を最大化した存在と言えます。

第一胃における微生物発酵によってセルロースを利用可能にするという草食獣の進化と、人類による選抜が結びついた結果、現在の肉牛が成立しました。

まとめ

肉牛は単なる食肉資源ではなく、オーロックス(Bos primigenius)を起源とする大型草食獣を人類が進化操作した生物です。

その本質は、草を筋肉へ変換する反芻動物の代謝・人為選択による筋肉量増大・環境適応による系統分化、という生物学と人類史が重なった存在にあります。

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