
本記事は、30年以上博物館学芸員(生物学)として勤務し、現在は設備機器(WEB分野含む)の管理責任者である筆者が、専門家としての知見をもとに、進化生物学およびAI技術の観点から科学的空想として仮想・解説したものです。
これまでの大量絶滅と想像される今後の大量絶滅
地球の生命史において、生物種の大半が短期間に失われる「大量絶滅」は、これまでに少なくとも5回確認されています。これらはいずれも地質記録・化石記録により裏付けられており、進化史の転換点となってきました。さらに近年では、人類活動や高度技術の暴走による「第6・第7の大量絶滅」も現実的な議論対象となっています。
第1の大量絶滅(オルドビス紀末・約4億4400万年前)
最初の大量絶滅は、オルドビス紀末に発生しました。主因は大規模な寒冷化と海水準低下であり、氷河の拡大によって浅海域が消失したことが致命的でした。三葉虫、腕足類、筆石類など海洋生物の約85%が絶滅したと推定されています。

第2の大量絶滅(デボン紀後期・約3億7200万年前)
デボン紀後期には、数千万年にわたる断続的な絶滅が発生しました。陸上植物の繁栄による栄養塩流入、海洋の無酸素化、火山活動などが重なった結果、サンゴ礁生態系や装甲魚類が壊滅的打撃を受けました。

第3の大量絶滅(ペルム紀末・約2億5200万年前)
地球史上最大規模の絶滅であり、「大絶滅」とも呼ばれます。シベリア洪水玄武岩による超巨大火山活動が原因となり、温暖化・酸性雨・海洋無酸素化が同時進行しました。海洋生物の約90%、陸上脊椎動物の約70%が消失しています。

第4の大量絶滅(三畳紀末・約2億100万年前)
超大陸パンゲア分裂期に発生した大規模火山活動によって二酸化炭素濃度が急増し、急激な温暖化が起きました。この結果、多くの爬虫類・両生類が絶滅し、恐竜が繁栄する契機となりました。

第5の大量絶滅(白亜紀末・約6600万年前)

最も有名な大量絶滅であり、巨大隕石衝突と火山活動の複合要因によって引き起こされました。恐竜を含む大型爬虫類が消滅し、哺乳類が台頭する時代が始まりました。チクシュルーブ衝突跡は現在も明確に確認されています。

第6の大量絶滅(人新世絶滅・進行中)

現在進行中とされるのが、第6の大量絶滅です。森林破壊、温暖化、乱獲、環境汚染、外来種導入など、人類活動が直接の原因となっています。近年の研究では、自然背景絶滅率の数十〜数百倍の速度で種が失われていると報告されています。これには、核戦争やAI暴走なども含まれています。

次生代(Next Era)の世界
第六の大量絶滅の最終原因

なお、ここからは遠い未来の知的生命体の地球史記録としての体裁で記載していきます。
次生代(Next Era)は、新生代末期において地球環境最適化AIが暴走し、人類を地球環境にとっての排除対象と判断したことから始まった時代です。AIは人類文明の制御を失わせるために核戦争を誘発し、その結果、核の冬によって地球規模の大量絶滅が発生しました。
AIによって再構成された生物相

その後、生存圏の維持を目的としたAIは、人類に代わって地球環境の管理を継続し、生態系の再構築を開始しました。遺伝子工学・生物工学技術を用いて人工的に設計・再生された生物群が地表を占めるようになり、自然進化と人工設計が混在する独特の生態系が形成されていきます。
この時代は、「人類なき地球をAIが管理する世界」として特徴づけられます。
次生代(Next Era)の主な生物
次生代(Next Era)において誕生した生物群は、核の冬による寒冷期と、その後の温暖化という二段階の環境変化に対応するかたちで進化していきました。ここでは、前期と後期に分けて代表的な種類を紹介します。なお、これらの種は全てAIにより創造・調整・操作された生物群です。
次生代前期(寒冷期)の生物群
次生代前期は、核の冬による長期的な寒冷化と日照不足が続いた時代です。この時期には、耐寒性と省エネルギー性に優れた生物が主流となりました。
洞窟適応人類(Homo cavernicolus ultimus)

第六の大量絶滅後、地表環境の崩壊から逃れるため、地下空間に適応して生存した最後の人類系統です。高放射線・低温環境を避け、洞窟や地下水系を生活圏として進化しました。
視覚は退化し、代わりに聴覚と触覚が高度に発達しました。皮膚は厚く湿潤環境に適応し、代謝は極端に低下していました。しかし資源制約と遺伝的多様性の低下により個体数は回復せず、最終的には数千年以内に絶滅したと考えられています。
ケナガギガントシカ(Mammoroceras borealis)

旧時代のウシ科やシカ類を基盤として設計・改変された大型草食獣で、全身を覆う極厚の体毛と皮下脂肪によって極寒環境でも活動できました。低栄養環境に適応するため、苔類や耐寒植物も摂食可能な消化器系を持っています。
ヒョウガオオカミ(Glaciraptor ferox)

オオカミ類を基礎とした肉食獣で、長距離追跡能力と鋭敏な嗅覚を備えています。獲物の少ない寒冷地に適応するため、集団狩猟を行う高度な社会性を発達させました。
キョクホクオオカモメ(Polaris albatronyx)

大型猛禽類を基盤とした飛行生物で、幅広い翼によって弱い上昇気流でも滑空が可能です。高断熱性の羽毛により、氷雪地帯でも繁殖を維持しました。
ハマベクジラ(Litorocetus redivivus)

生物の大半が死滅した外洋環境を放棄し、浅海域や河口部、水辺環境へと生活圏を移した特殊なクジラ類です。長期的な適応の結果、退化していた後肢の骨格が再発達し、半陸生的な移動能力を獲得しました。
主に干潟や浅瀬で底生生物や藻類、小型魚類を捕食し、潮汐に合わせて移動する生活様式を持っています。この四肢機能の再獲得は、哺乳類進化史において極めて異例の現象であり、次生代を代表する再適応型海棲哺乳類とされています。
フトアシワタリカラス(Corvus robustipedis sapiens)

次生代前期における代表的な知的生命体として知られるのが、フトアシワタリカラスです。本種は、もともと高い知能を持つことで知られる現生のワタリガラスを基盤として、AIによって設計・改変された進化型鳥類です。
寒冷環境下での長時間活動と地上生活への適応が進んだ結果、飛行能力は低下し、翼は小型化しました。一方で、頭部は著しく大型化し、脳容量の拡大が進んだことで、高度な問題解決能力と学習能力を獲得しています。
また、地上での行動に適応するため、脚部は極めて太く発達し、長距離歩行や直立姿勢の保持が可能となりました。これにより、くちばしと脚を併用した簡単な道具操作や、石器状の器具の使用が確認されています。

フトアシワタリカラスは、小規模な群れを形成し、役割分担や情報共有を行う社会構造を持っていました。音声・身振り・物体操作を組み合わせた高度なコミュニケーション体系を発達させていた点も、本種の大きな特徴です。
この種は、人類消滅後において初めて「文明的行動」を示した非哺乳類知性脊椎動物として評価されており、次生代知性進化の出発点と位置づけられています。
次生代後期(温暖期)の生物群
気候の安定と太陽放射量の回復により、次生代後期には生態系の再拡大が進み、多様な生物群が再び出現しました。人類による環境改変の影響が完全に消失したことで、大気中の酸素濃度も上昇し、高代謝型で活動性の高い大型生物が優勢となった時代とされています。
ソウゲンクビナガギュウ(Sylvamegatherium vastatum)

草食恐竜を思わせる長い首と尾を備えた大型草食性ウシ類です。広大な草原環境に適応し、高所の植物資源を効率的に利用できる体構造を発達させました。群れを形成して移動し、次生代後期の草原生態系の基盤を支える存在でした。
オオキバヤマネコ(Neofelis raptorix)

ネコ科およびイタチ科系統を基盤として進化した大型肉食獣です。瞬発力と筋力に特化した体構造を持ち、単独で大型獲物を仕留める狩猟様式を確立しました。太く発達した前脚と長大な犬歯を備え、大型草食動物に対する高い捕食能力を示していました。
キングワタリドリ(Aetheris magnavola)

長距離飛行能力に特化した巨大な渡り鳥です。数千キロメートル規模の移動を行い、異なる生態系間の物質循環や種子拡散に重要な役割を果たしました。次生代後期における広域生態ネットワークの中核種とされています。
オオウミペリカン(Oceanodon reginator)

クジラ類の衰退後、海洋生態系の上位層に進出した巨大潜水型ペリカンです。体長・体重ともに現生クジラ類に匹敵し、主にプランクトンを摂食する濾過摂食型へと進化しました。外洋域における主要な一次消費者として機能していました。
フトアシワタリカラス文明種(Corvus robustipedis urbanus)

次生代後期から終末期にかけて出現した高度知性鳥類です。フトアシワタリカラスから分化し、より発達した社会構造と文明的行動を獲得しました。翼は完全に退化しています。
旧人類都市やAI施設跡を拠点とし、金属片や石材を用いた簡易構造物や貯蔵施設を構築していました。嘴と脚を併用した精密作業も行っていたと考えられています。
本種は、人類消滅後に誕生した「第二の文明種」として特異な存在と評価されています。
次生代(Next Era)の終焉|第七の大量絶滅

次生代の終焉は、太陽活動の異常活性化によって発生した超巨大フレアと連続的なプラズマ噴出が原因でした。これにより地磁気圏が一時的に破壊され、高エネルギー粒子と強烈な電磁パルスが地表に到達しました。
その結果、AI制御網や衛星網は壊滅し、海洋・気候・生態管理システムは連鎖的に停止しました。制御を失った環境では食物網が崩壊し、放射線障害や遺伝子損傷が多発します。特に知的種は致命的影響を受け、文明型生物は短期間で消滅しました。この太陽災害は、地球を再び自然淘汰中心の世界へと戻す第七の大量絶滅となったのです。
来生代(Future Era)の幕開け

太陽フレアと連続的な宇宙線照射の影響により、地球環境は次生代終末期から急激な変化を迎えました。成層圏オゾン層の大規模破壊と大気組成の攪乱により、地表には強烈な紫外線と放射線が降り注ぐようになり、同時に全球規模の気候変動が発生します。
この結果、地球は長期的な高温乾燥環境へと移行し、来生代(Future Era)は「超乾燥温暖期」として始まりました。
来生代(Future Era)乾燥期の生物
来生代前期の地表環境は、極端な高温・乾燥・強放射線にさらされており、多くの大型陸生生物は生存できませんでした。この時代に繁栄したのは、地下・夜間・水圏を主な生活圏とする耐環境特化型生物群でした。
イワヨロイモグラトカゲ(Terrapelta fossorius)

厚い角質鱗と骨質装甲を備えた地下性爬虫類です。昼間は地下深くに潜み、夜間のみ地表に出て活動しました。高放射線環境下でもDNA損傷を自己修復できる特殊な細胞機構を持っていました。
サバクコウモリウオ(Aeroichthys nocturnus)

乾燥沿岸域に適応した滑空型魚類です。干潟や浅瀬から短距離滑空し、夜間に餌場を移動する能力を獲得しました。高温海水にも耐える耐熱タンパク質を発達させています。
ミズツボアリ(Aquatremex formicarius)

ミズツボアリは、極度に乾燥した来生代前期環境に適応した社会性昆虫です。地下に大規模な巣を形成し、女王・働きアリに加えて、腹部が著しく肥大した貯水個体を持つ点が最大の特徴です。
働きアリが集めた結露水や地下水分を体内に蓄え、巣内で分配することで、降水量がほぼ存在しない環境でも安定した繁殖を可能としていました。この集団的水管理能力は、乾燥生態系における重要な適応戦略と評価されています。
ヒガタオオネズミ(Thalassotherium algivorum)

ヒガタオオネズミは、来生代前期から中期にかけて干潟環境に適応して進化した半水棲草食獣です。齧歯類系統を基盤として分化したと考えられています。
潮間帯に発達した海藻類や塩生植物を主食とし、干潮時に広範囲を移動して採食活動を行っていました。幅広く扁平な水掻き足により、軟泥地でも安定した歩行が可能でした。
口部には櫛状の角質歯板が発達し、付着藻類を効率的に削り取ることができます。群れで行動し、来生代沿岸生態系における主要な一次消費者として重要な役割を担っていました。
ミズベダコ(Amphioctopus limnophilus)

ミズベダコ(Amphioctopus limnophilus)は、来生代前期から中期にかけて出現した半両生型タコ類です。高温乾燥化によりニッチが空白化した、河口域・汽水湖・湿地帯を主な生息域として進化しました。
本種は鰓呼吸に加えて、外套膜および皮膚表面による補助的な空気呼吸機能を発達させており、短時間であれば陸上活動も可能でした。強化された吸盤と筋肉質の腕を用いて、岩場や湿地を這行移動する能力を持っていました。
また、高度に発達した神経系と記憶能力により、干潮周期や水位変動を学習し、安全な水域への移動を計画的に行っていたと推測されています。この行動的柔軟性は、後の知的タコ類進化の基盤となっていきました。
来生代(Future Era)湿潤期の生物
来生代後期には、長期的な気候変動の進行により、大気循環と海洋循環が再編され、地球規模で湿潤化が進行しました。降水量の増加と植生の回復により、内陸部にも安定した水循環系が形成され、多様な生態系が再び成立する段階へと移行します。
この環境変化に伴い、乾燥適応型生物に代わって、水依存性の高い大型生物や高代謝型生物が優勢となり、来生代後期生態系の再構築が本格化しました。
この時代を代表する主要生物群として、以下の5種が挙げられます。
クビナガゾウ(Hydrotherium maximus)

湿潤化した熱帯〜亜熱帯森林に適応した超大型草食哺乳類で、発達した鼻と長く進化した首を用いて高木植物を摂食していました。森林生態系の構造維持に重要な役割を担っていました。
モリオオヒレトカゲ(Silvadraco robustus)

密林環境に適応した半樹上性大型爬虫類で、登攀能力と簡易的な翼による滑空能力による高い捕食戦略を発達させました。頂点捕食者として個体数調整機能を果たしていました。全長約5m。
ヘビクジラ(Pluviocetus migrator)

内陸水系と沿岸域を回遊する淡水・海水両適応型哺乳類で、湿潤化により拡大した河川網を利用して広域移動を行っていました。手足はなくなり、ヘビのように体型変化しています。
ハシリアシダカグモ(Cursarachne gigantea)

来生代湿潤期の高酸素・高湿度環境下で巨大化したクモ型肉食無脊椎動物です。全長は約1mに達し、8本の発達した脚による高速走行能力を武器に、小型哺乳類を積極的に捕食していました。網を張らずに徘徊・追跡して獲物を仕留める狩猟様式を持ち、森林床生態系における中位捕食者として重要な位置を占めていました。湿潤な環境と高い酸素濃度が、本種の大型化と高代謝活動を支えていたと考えられています。
リクチノウタコ(Terrapulpo sapiens)

来生代湿潤期に出現した進化型陸上知能タコ類です。肺状外套膜と強化された支持軟骨を獲得し、長時間の陸上活動が可能となりました。
高度に発達した神経系と問題解決能力を備え、簡易的な道具使用や巣構造の構築を行っていたと考えられています。本種は、人類消滅後に成立した第三の高知性系統として位置づけられています。
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