サメの全9目をご紹介するとともに、代表的なサメを生物学の博物館学芸員である筆者が解説します。
サメとはどんな魚?
サメ(鮫)は、軟骨魚綱板鰓亜綱に属する魚類のうち、鰓裂が体の側面に開くものの総称。鰓裂が下面に開くエイとは区別される。2016年3月末時点で世界中に9目34科105属509種が存在し、日本近海には9目32科64属130種が認められている。
サメの全9目
ネコザメ目 Heterodontiformes
テンジクザメ目 Orectolobiformes
ネズミザメ目 Lamniformes
メジロザメ目 Carcharhiniformes
カグラザメ目 Hexanchiformes
ツノザメ目 Squaliformes
キクザメ目 Echinorhiniformes
カスザメ目 Squatiniformes
ノコギリザメ目 Pristiophoriformes
サメの身体のつくり
頭部
目・鼻・吻・口・鰓穴
胴部
背鰭棘・背鰭・胸鰭・腹鰭
尾部
尾鰭・尻鰭
交接器:オスにだけあり繁殖行動に必要
第二背鰭:無い種類もあるが、有る種類は旋回能力が高い
ジンベエザメ(テンジクザメ目)

ジンベエザメは、世界中の熱帯~亜熱帯~温帯海域に分布している世界最大の軟骨魚であるだけでなく、全長20mを越える個体の記録もあり、現生の魚類でも最大の種類です。
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ジンベイザメは世界中の海の熱帯~亜熱帯~温帯にかけて広く分布してます。基本的には開けた表層海域を回遊していますが、時に珊瑚礁海域にも入り込みます。
ジンベイザメメの繁殖生態は長らく謎でしたが、1995年に妊娠中のメスが捕獲され、約60cmの生まれる直前の稚魚が見つかり「卵胎生」であることが判明しました。
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その巨体を維持するためには、最低限の運動量で大量の餌を摂る必要があるため、巨大海生生物の例にもれず、プランクトン食をしています。
大きな口を開けたまま海表を遊泳し、鰓耙(さいは)と呼ばれるクシ状になったエラで、海表を漂うプランクトンやオキアミといった小型甲殻類を濾しとって食べています。
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長命を誇り、平均で70~80年、なかには150年も生きる個体もいます。性質はいたって温和で、野生個体でもダイバーが近づき一緒に泳ぐことも可能です。
その他のテンジクザメ目のサメ
オオセ
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オオセは太平洋西部の日本南部から朝鮮半島沿岸、フィリピン・東シナ海・東南アジアの沿岸海域に分布しています。水深200m以浅の砂泥質の海底を好みますが、岩礁・サンゴ礁などにも生息しています。
トラフザメ

トラフザメは西太平洋とインド洋の亜熱帯から熱帯にかけての沿岸海域に分布しています。深度60m以浅のサンゴ礁・礫底・砂底に生息しています。
イヌザメ

イヌザメは西太平洋とインド洋の熱帯から温帯にかけての沿岸海域に分布している最大全長1.4mの小型のサメ類です。
ネコザメ(ネコザメ目)
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ネコザメは太平洋北西部に分布しており、最大全長は1.2mと小型のサメ類です。硬い殻を持つ生物を好んで食べるため「サザエワリ」という別称を持ちます。
ウバザメ(ネズミザメ目)
ウバザメは世界中の亜寒帯~温帯にかけて生息している回遊性の生活を送っています。分布域からわかるように、水温10~15℃の冷たい海を好みます。平均で全長7.9m、最大個体では全長10mと巨大です。
メガマウス(ネズミザメ目)

メガマウスは世界中の海洋の熱帯~亜熱帯粋の水深200m前後のやや深い海域を回遊して生活しています。メガマウスは世界的にも捕獲例が少ないものの、これまで確認された最大の個体は全長約7mとウバザメに近い巨大さがあることで知られています。
ホオジロザメ(ネズミザメ目)
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ホホジロザメ(ホオジロザメ)は寒帯を除く世界中のほぼ全ての海域に分布しています。全長4~4.8m・体重700~1100kgにもなる巨大種で、現生する肉食サメ類としては最大の大きさを持っています。
アオザメ(ネズミザメ目)
アオザメは世界の寒帯・温帯・熱帯に広く分布しており、外洋回遊性を持っています。全長3m・体重120kgほどで、記録されている最大サイズは全長4m・体重500kgです。
シロワニ(ネズミザメ目)

シロワニは太平洋・大西洋・インド洋など世界各地の海の温帯から亜熱帯海域に広く分布しています。最大全長3.2mになる大型のサメです。
ミツクリザメ(ネズミザメ目)

ミツクリザメは世界各地から採集例があり、1000m以上の深海に生息している深海魚です。これまでに記録されているミツクリザメの最大全長は3.1mです。
その他のネズミザメ目のサメ
オオワニザメ

オオワニザメは世界中の温帯から熱帯にかけて広く分布していると推測されていますが、捕獲例が少ないため、記録としては世界各地で分断的に確認されてます。最大全長4.5mと大型のサメ類です。
ミズワニ

ミズワニは全世界の亜熱帯から熱帯にかけての深海(深度500m)に分布しています。最大全長1.1mと小型のサメ類です。
ニタリ

ニタリは太平洋とインド洋に広く分布しています。外洋性ですが沿岸部にも出現します。最大全長3.8mと大型のサメ類です。ニタリは胎生ですが、胎盤を形成しない卵食型です。外洋性の魚類を主に捕食しますが、イカ類もかなり食べることが知られています。
ハチワレ
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ハチワレは世界各地の熱帯から温帯にかけての海域(沿岸・外洋)で記録されていますが、深度100m以深に生息するやや深海性のため捕獲例が少なく、分布域は完全には解明されていません。最大全長4.8mになる大型のサメ類です。
ハチワレは卵食性の胎生です。妊娠期間は約12ヶ月で1度に2尾の稚魚を産みます。サバ・ニシン・カジキといった魚類のほか、甲殻類・頭足類も捕食します。長い尾鰭で獲物を叩いて失神させるという変わった習性を持っています。
マオナガ

マオナガは世界各地の亜寒帯から熱帯にかけての外洋に広く分布しています。最大全長7.6mと超大型のサメ類です。
マオナガは胎盤を形成しない卵食型の胎生で、妊娠期間は約9ヶ月、一度に2~4尾を産みます。主に外洋性の魚類を餌としますが、底生性魚類やイカ・タコなどの頭足類、甲殻類を捕食します。また、海鳥を捕食した例も観察されています。
イタチザメ(メジロザメ目)
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イタチザメは世界各地の温帯~熱帯域に分布しています。沿岸性が強い種類ですが、外洋に進出することもあります。イタチザメの最大サイズは全長350cm・体重600kgと、肉食サメ類としてはかなり巨大な部類に入ります。全長740cm・体重3110kgとホオジロザメに匹敵するサイズの個体も捕獲された記録があります。
ヨシキリザメ(メジロザメ目)
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ヨシキリザメは世界中の亜寒帯・温帯・亜熱帯。熱帯の海に広く分布しています。最大全長3mです。
シュモクザメ(メジロザメ目)
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シュモクザメは全9種が知られていますが、いずれも沿岸性で世界中の温帯~熱帯海域にかけて各種が分布しています。
▼詳細記事
その他のメジロザメ目のサメ
オオメジロザメ

オオメジロザメは世界中の沿岸域に分布しており、さらには淡水域にも侵入できるため、ミシシッピ川・ザンベジ川・アマゾン川にも生息しています。最大全長4mと大型のサメ類です。
オオメジロザメは胎盤形成型の体性で妊娠期間は10~11ヶ月、一度に10尾前後を産みます。魚類・頭足類・甲殻類だけでなく鳥類や哺乳類も捕食する貪欲な肉食性で、人間が襲われることもあります。
ドチサメ

ドチザメは太平洋北西部の日本海や東シナ海に分布しています。最大全長1.5mの小~中型のサメ類です。ドチザメは非胎盤型の胎生で、一度に10~20尾を産みます。小型の魚類・甲殻類を中心として、さまざまな底生生物も捕食します。
ナヌカザメ

ナヌカザメは太平洋の北西部、日本列島から沖縄・台湾にかけて分布しています。最大全長1.4mと小~中型のサメ類です。
ナヌカザメは卵生で特に繁殖期はなく周年を通して産卵します。卵は鞘に包まれており、孵化には1年と言う長い時間を要します。魚食性はが強く、特にマサバ・マイワシ・ウマヅラハギ・チゴダラを好んで捕食します。
ラブカ(カグラザメ目)
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ラブカは採集例が少ない希種ではあるものの、太平洋と大西洋の熱帯・亜熱帯・温帯から捕獲記録があります。水深100~200mの海域に暮らす深海魚です。最大全長約2mです。
カグラザメ(カグラザメ目)
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カグラザメは世界中の温帯から熱帯にかけてに分布しており、水深2000mもの深海にも生息しています。浅海ではほとんど見ることはできません。最大全長6mの大型のサメ類です。
ダルマザメ(ツノザメ目)

ダルマザメの記録はあまり多くありませんが、世界中の温帯から熱帯にかけて分布しており、深度1000m以上の深海に生息しています。最大全長50cmと小型のサメ類です。
ダルマザメは頭足類(深海性のイカ)を主に捕食していますが、特殊な口と歯の形状をしており、自身よりも大型の魚類に噛みつき、その肉の一部を削り取って食べるという特異な習性も持っています。
オンデンザメ(ツノザメ目)
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オンデンザメは太平洋北部の温帯から寒帯にかけての海域に分布しており、浅海から水深2000mの深海まで広く生息しています。最大全長4.4mになる大型のサメ類です。
カスザメ(カスザメ目)
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カスザメは太平洋西部の日本周辺・日本海・東シナ海に分布し、水深300m以浅の砂泥底に生息しています。最大全長2m弱と中~大型のサメ類です。
キクザメ(キクザメ目)
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キクザメは東太平洋以外の全世界の温帯から熱帯にかけての海域に分布し、深度400~900mの深海に生息しています。最大全長1.5mと小~中型のサメ類です。
ノコギリザメ(ノコギリザメ目)
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ノコギリザメは南アフリカからオーストラリアにかけての広い海域に、全10種類がそれぞれ分布しています。日本近海にもPristiophorus japonicusが分布しています。
メガロドン(絶滅化石種)
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メガロドン(Carcharocles megalodon)は、今からおよそ1800万年前~150万年前の新生代・第三紀にかけて海の覇者として君臨していた超大型のサメです。その巨大化の一因として、当時の海水温が現在より高かったためと考えられています。
全長は最大推定値でおよそ13~20mで、現生の近縁種・ホホジロザメの最大個体6mをはるかに凌駕する大きさです。その巨大さは、現世の魚類で最大であるジンベエザメに匹敵します。
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クセナカンサス(絶滅化石種)

クセナカンサスは淡水性のサメで、頭部に1本の長い棘を持っていました。この棘は有毒であったと推測されています。小型の魚類や甲殻類を捕食していたと考えられています。
クレトキシリナ(絶滅化石種)
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クレトキシリナは白亜紀に生息していた巨大肉食サメで、最大全長7mと現生のホホジロザメよりも巨大であったと考えられています。
ヒボドゥス(絶滅化石種)

ヒボドゥスはペルム紀に出現し、三畳紀・ジュラ紀・白亜紀と繁栄しましたが、白亜紀末に絶滅しました。異なる2種類の歯を持つことから、現生のホホジロザメのように獰猛ではなく、中型から小型の幅広い生物を捕食していたと推測されています。
スクアリコラックス(絶滅化石種)
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スクアリコラックスは白亜紀初期に出現し、白亜紀末に絶滅しました。肉食性で、魚類やウミガメ類を捕食していたと考えられています。
スカパノリンクス(絶滅化石種)

スカパノリンクスは現生のミツクリザメに近い生態を持ち、深海性で底生生物を広く捕食していたと考えられています。
プチコドゥス(絶滅化石種)
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プチコドゥスは白亜紀から古第三紀にかけて生息していました。特徴的な平らな歯を500個も持っており、貝類やアンモナイトといった硬い殻を持つ生き物を捕食してすり潰して食べていたと考えられています。最大全長10mに達する、その時代で最大のサメ類でした。
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