
約4億1920万年前から3億5890万年前まで続いたデボン紀。古生物学の世界では、この時代を「魚類の時代(Age of Fishes)」と呼びます。
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シルル紀に始まった「顎(あご)」の進化が爆発的な多様化を招き、海や川には恐ろしい武装をした魚たちが溢れました。そして、この時代の後半には、生命の歴史における最大級の転換点である「脊椎動物の陸上進出」というドラマが完結へと向かいます。緑豊かな森林が地表を覆い、現代へと繋がる生態系の基礎が築き上げられた、まさに生命の躍進期です。
デボン紀の地球:緑の惑星への変貌

デボン紀の幕開けとともに、陸上には大きな変化が訪れました。それまで膝丈ほどの高さしかなかった植物が、木材組織を獲得することで数メートルから数十メートルの「木」へと成長し、地球史上初の森林が形成されました。
これにより陸上の酸素濃度が上昇し、土壌が豊かになったことで、節足動物だけでなく、脊椎動物もその豊かなリソースを求めて水辺から陸へと目を向け始めたのです。
デボン紀を代表する5種の生物
この時代の主役である巨大な「板皮類」から、陸上への架け橋となった「肉鰭類」まで、象徴的な生物たちを紹介します。
ダンクルオステウス (Dunkleosteus)

デボン紀の海において、最強かつ最恐の地位に君臨したのがこのダンクルオステウスです。体長は最大で6〜10メートルに達し、頭部から肩にかけて頑丈な「装甲板」で覆われていました。
特徴: 現代の魚のような「歯」は持っていませんでしたが、代わりに剥き出しになった顎の骨がカミソリのように鋭く発達していました。その咬合力(噛む力)は凄まじく、サメや他の装甲魚を文字通り噛み砕いていたと考えられています。
ティクタアリク (Tiktaalik)

「魚」と「四肢動物」の中間形態を持つ、進化のミッシングリンクを埋める極めて重要な生物です。
特徴: 外見は魚のようですが、頑丈な胸鰭(むなびれ)の内部には、腕の骨(上腕骨や橈骨など)に対応する構造がありました。さらに、魚にはない「首」を持ち、頭部を独立して動かすことができました。これにより、浅瀬で頭を出し、周囲をうかがうことができたのです。
イクチオステガ (Ichthyostega)

ティクタアリクよりもさらに「陸上仕様」に進化した、最古の両生類の一つです。
特徴: 頑丈な肋骨と四肢を持ち、重力に抗って体を支えることができました。しかし、後ろ足はヒレのような形を残しており、尾には魚の名残である「尾鰭(おびれ)」がありました。主に水辺で生活し、時折陸に上がって獲物を探していたと考えられています。
クラドセラケ (Cladoselache)

現代のサメの遠い祖先にあたる、初期の軟骨魚類です。
特徴: 体長は約2メートル。現代のサメとは異なり、口は頭の先端にあり、鱗もほとんどありませんでした。しかし、その流線型の体と鋭い歯は、スピードを生かしたハンターとしての完成度を既に示していました。ダンクルオステウスのような重装甲の捕食者が支配する海を、その機動力で生き抜いていました。
アーケオプテリス (Archaeopteris)

「最古の木」と呼ばれる、現代の樹木の先駆けです。
特徴: シダ植物のような胞子による繁殖を行いながら、内部構造は現代の針葉樹に近い木質を持っていました。高さは30メートル以上に達し、地球上に最初の本格的な森林を作り出しました。この木々が落とす葉や枝が川に流れ込み、水辺の栄養を豊かにしたことが、魚たちの進化を後押ししたとも言われています。
絶滅と次代へのバトン
デボン紀の終わりには、再び大規模な絶滅イベント(デボン紀後期絶滅)が地球を襲いました。この影響で、海を支配していたダンクルオステウスなどの板皮類は完全に絶滅してしまいます。
しかし、生き残った小さな軟骨魚類や、陸に活路を見出した四肢動物たちが、その後の石炭紀、ペルム紀へと命を繋ぎ、恐竜や哺乳類へと続く長い道のりを歩み始めることになりました。
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