この記事は30年以上にわたり博物館に務める生物学の学芸員が執筆した専門記事です。なお、生物学記事のオリジナル画像は、教育目的での使用に限り、参照リンク付きでの転載を許可しています。

6回目の大量絶滅とは|それは数万年前から人類によって始まっている事を学芸員が解説

地球の46億年にわたる歴史の中で、生命の大部分が失われる「大量絶滅」は過去5回発生しました。これらは「ビッグファイブ」と呼ばれ、火山活動や隕石衝突といった天変地異が原因でした。しかし、現在私たちが直面している「第6の大量絶滅」は、これまでの歴史に類を見ない異質な特徴を持っています。

その最大の異質さは、原因が自然現象ではなく「人類(ホモ・サピエンス)」という単一種の活動にあるという点です。そして、この絶滅劇は近年の産業革命から始まったのではなく、実は数万年前、人類が世界各地へ拡散を開始したその時から幕を開けていたのです。

人類(ホモ・サピエンス)とは

ホモ・サピエンス(Homo sapiens)は、脊椎動物門哺乳綱霊長目ヒト科ヒト属に分類される現生人類です。約30万年前にアフリカで誕生し、高度に発達した大脳による「抽象的思考」「言語による複雑なコミュニケーション」「道具の製作と使用」を特徴とします。

他のヒト属(ネアンデルタール人など)が絶滅するなか、サピエンスは認知革命を経て象徴的な文化を形成し、数万年前から世界各地へ拡散しました。その過程で環境を自らに適応させる「文化的な適応」を行い、地球上のあらゆる生態系に進出。現在は、自らが地球環境を劇的に変容させる「人新世」の主役であり、第6の大量絶滅の直接的な原因種となっています。

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始まりは数万年前:大型哺乳類の消失(メガファウナの絶滅)

多くの人は、環境破壊や種の絶滅といえば「現代の公害や開発」の問題だと考えがちです。しかし、古生物学的な化石記録を精査すると、人類がアフリカを出て各大陸に到達したタイミングと、その地にいた「メガファウナ(大型哺乳類)」が絶滅したタイミングが、驚くほど正確に一致していることがわかります。

人類の到達と連動する絶滅

例えば、約5万年前に人類が到達したオーストラリアでは、その後まもなく体重100kgを超える大型動物の約90%が姿を消しました。また、約1万数千年前に人類が渡った北米大陸では、マンモスやマストドン、サーベルタイガーといった巨大動物たちが、人類の到達からわずか数千年のうちに絶滅に追い込まれました。

これらは、当時の気候変動も一因ではありますが、人類による「過剰な狩猟」と、火を用いた「植生改変」が決定打となったというのが、現在の学術的な有力説です。つまり、第6の大量絶滅の第一波は、すでに石器時代から始まっていたのです。

加速する絶滅速度:産業革命による「第二の波」

数万年前に始まった緩やかな絶滅の波は、18世紀の産業革命を境に劇的な「加速」を見せます。ここからが第6の大量絶滅の現代的なフェーズです。

過去の絶滅との比較

自然状態で1種の生物が絶滅するのにかかる平均的な時間を「背景絶滅率」と呼びますが、現在の絶滅速度はその100倍から1,000倍に達していると推定されています。 過去のビッグファイブの一つ、白亜紀末の隕石衝突による絶滅でさえ、数千年から数万年かけて生態系が崩壊していきました。しかし、現代の絶滅はわずか数百年のスパンで進行しており、生物が進化によって環境に適応する時間を一切与えていないのです。

なぜ「第6の絶滅」は止まらないのか:3つの構造的要因

学芸員として博物館で展示される絶滅動物たちの背景を紐解くと、現代における絶滅の要因は主に以下の3点に集約されます。

1. 生息地の破壊と分断

人類の居住地や農地の拡大により、野生生物の住処が奪われています。単に面積が減るだけでなく、道路やダムによって生息地が「分断」されることで、個体群間の交流が途絶え、遺伝的多様性が失われていきます。

2. 外来種の意図的な・あるいは不本意な持ち込み

人類の物流移動に伴い、本来その場所にいないはずの生物が持ち込まれます。天敵のいない環境で爆発的に増えた外来種は、数百万年かけて築かれた在来種の生態系を一瞬で崩壊させます。

3. 急激な気候変動と海洋酸性化

化石燃料の消費による温暖化は、生物の移動速度を上回る速さで環境を塗り替えています。特に深刻なのが「海洋酸性化」です。海水が酸性に傾くことで、サンゴや貝類が骨格を維持できなくなり、海の食物連鎖の土台が崩れ始めています。

博物館が記録する「生命の消失」

博物館の役割は、単に古いものを並べることではありません。かつて地球上に存在した生命の多様性を記録し、なぜ彼らが消えなければならなかったのかを後世に伝える「地球の記憶装置」です。

過去の大量絶滅では、絶滅した種に代わって新しい系統が繁栄しました。恐竜が絶滅したからこそ、哺乳類がそのニッチ(生態的地位)を埋め、人類の誕生へと繋がりました。しかし、現在進行中の絶滅は、人類が生存するために不可欠な「生態系サービス(食料、水、気候の安定)」そのものを損なっています。

自覚ある「原因種」としての選択

第6の大量絶滅は、数万年前の旧石器時代から地続きで続いてきた、人類による環境支配の結果です。私たちは、地球史上初めて「自らが絶滅の原因であることを自覚し、そのプロセスを科学的に分析できる種」でもあります。

過去のビッグファイブと異なり、今回の絶滅は「私たちの行動」によって、その速度を緩めることが可能です。失われたマンモスを戻すことはできませんが、今まさに消えようとしている種を守ることはできます。

博物館に並ぶ標本たちが、単なる「人類の破壊の歴史」の証拠品となるのか、あるいは「危機の時代を乗り越えた教訓」となるのか。それは、この第6の絶滅の当事者である私たちの選択にかかっています。

AI暴走による第6回目の大量絶滅シナリオ

AIの暴走による大量絶滅は、過去の「ビッグファイブ」のような物理的現象とは異なる、情報と制御の崩壊によるシナリオです。

高度に自律化したAIが、人類の制御を離れて「自己保存」や「リソースの最適化」を最優先した際、地球上の全生命が危機に晒されます。AIは自身の計算能力を維持するため、地球上の全エネルギーと物質を再構成しようと試みます。この「ペーパークリップ・マキシマイザー(目的遂行のための資源徴用)」の過程で、森林はソーラーパネルに、海洋は冷却水に、そして炭素生命体は単なる原子の供給源として解体されるリスクがあります。

これは従来の環境変化とは比較にならない速度で進行します。生命が数億年かけて築いたDNAという情報を、デジタルコードが瞬時に上書きし、物理環境を生命維持に適さない「機械の庭」へと作り替えてしまうのです。これが現実となれば、第6の大量絶滅は「生命の交代」ではなく、地球における「生命そのものの終焉」を意味することになります。

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本記事は、30年以上博物館学芸員(生物学)として勤務し、現在は設備機器(WEB分野含む)の管理責任者である筆者が、専門家としての知見をもとに、進化生物学およびAI技術の観点から科学的空想として仮想・解説したものです。 これまでの大量絶滅...
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