この記事は30年以上にわたり博物館に務める生物学の学芸員が執筆した専門記事です。

【センザンコウ種類図鑑】鱗を持つ哺乳類(絶滅危惧種)の生態やアルマジロとの違いも学芸員が解説

鱗を持つ変わった哺乳類であるセンザンコウの種類と生態について、博物館学芸員の筆者が解説します。

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センザンコウとはどんな動物?

センザンコウは鱗甲目に分類される哺乳類の一群で、同目はセンザンコウ科のみで構成されています。

センザンコウ科には下記の1属5亜属8種が現生しています。なお、記載は標準和名|学名|英名です。

Manis亜属

インドセンザンコウ|Manis crassicaudata|Indian pangolin

ミミセンザンコウ|Manis pentadactyla|Chinese pangolin

Paramanis亜属

パラワンセンザンコウ|Manis culionensis|Philippine pangolin

マレーセンザンコウ|Manis javanica|Sunda pangolin

Phataginus亜属

キノボリセンザンコウ|Manis tricuspis|Tree pangolin

Smutsia亜属

オオセンザンコウ|Manis gigantea|Giant pangolin

サバンナセンザンコウ|Manis temminckii|Ground pangolin

Uromanis亜属

オナガセンザンコウ|Manis tetradactyla|Long-tailed pangolin

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センザンコウの形態

センザンコウの体表は、腹部と四肢を除いて硬い鱗で覆われています。外敵に襲われると丸くなり、この硬い鱗で身を守ります。

頭部は先細りの細い形状をしており、歯は退化してありません。また、食物を租借するための顎周辺の筋肉も退化しています。長い舌を持っており、これをアリ塚に差し込んでアリやシロアリを舐めとります。

最大種のオオセンザンコウで頭胴長75~85cm・尾長65~80cm・体重25~35kgの中~小型哺乳類です。

センザンコウの生態

基本的に夜行性で、樹上性のキノボリセンザンコウとオナガセンザンコウ以外は陸上性です。昼間は窪みに潜み、夜間に活動し、アリやシロアリを食べて生活しています。

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センザンコウの分布と現状

アフリカ大陸とアジア大陸の熱帯域の森林やサバンナに分布しています。いずれの生息地でも、食用または薬用に乱獲され全種類が絶滅の危機に瀕しています。

それでは、次の項目からはセンザンコウの各種類をご紹介していきます。

インドセンザンコウ

本種はインド亜大陸に分布しており、トラなどの捕食者に襲われると丸くなって身を守ります。

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ミミセンザンコウ

本種はインド亜大陸北部・東南アジア北部・中国南部に分布しており、2014年からワシントン条約の絶滅危惧種に記載されています。

パラワンセンザンコウ

フィリピンのパラワン島にだけ生息する固有種で、絶滅危惧種に指定されています。

マレーセンザンコウ

本種はアジア地域でもっとも分布の広い種類で、ミャンマー・タイ・カンボジア・ラオス・マレーシア・シンガポール・ベトナムと周辺の諸島といった東南アジア全域に生息しています。

キノボリセンザンコウ

本種はセンザンコウ類のなかでも小型の種で、樹上性の一群です。アフリカ大陸中西部に分布しています。

オオセンザンコウ

本種は西アフリカからウガンダにかけての熱帯アフリカに分布しており、センザンコウのなかで最大種です。

サバンナセンザンコウ

本種はアフリカ大陸の南東部に分布しており、全てのセンザンコウのなかでもっとも絶滅に瀕しています。

オナガセンザンコウ

本種はアフリカ大陸中央西部の熱帯雨林に分布している小型種で樹上性です。シロアリではなく樹上のアリを食べます。

センザンコウはアルマジロに近い仲間?

硬い鱗を持ち、丸くなって身を守る哺乳類としては、アルマジロ以外にアジアに生息するセンザンコウの仲間が知られています。

この二つのグループは近い(親戚関係)なのでしょうか?

こちらが、哺乳類の系統樹ですが、被甲目のアルマジロと有鱗目のセンザンコウでは、かなり遠い類縁関係です。

このように、まったく違う分類なのに、生活スタイル(生態的地位|ニッチ)が似ていると姿形も似てしまう進化のことを「収斂進化」と言います。

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