この記事は30年以上にわたり博物館に務める生物学の学芸員が執筆した専門記事です。

【テナガエビの飼い方】餌・混泳や繁殖など飼育方法を生物学学芸員が解説

テナガエビの家庭水槽(アクアテラリウム)での初心者向き飼い方を博物館学芸員の筆者が、長年の経験をもとに解説します。

なお、筆者はミナミテナガエビの人工繁殖に、日本の水族館で初めて成功し、日本動物園水族館協会から繁殖賞を授与された経緯もあります。

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テナガエビとはどんな生き物?

テナガエビ(手長蝦)はテナガエビ科テナガエビ属 Macrobrachium に分類されるエビの総称。熱帯・温帯の淡水域や汽水域に生息する大型のエビで、和名通り第2歩脚が長く発達する分類群である。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/テナガエビ

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テナガエビの種類

九州以北の日本には以下の三種類が生息しています。飼育方法はいずれもほぼ同じです。

テナガエビ Macrobrachium nipponense

ヒラテテナガエビ Macrobrachium japonicum

ミナミテナガエビ Macrobrachium formosense

また、このほかに南西諸島には以下のようなテナガエビが生息しており、本土産のテナガエビよりも飼育水温が高めでも飼うことができますが入手は困難です。

ザラテテナガエビ Macrobrachium australe

ショキタテナガエビ Macrobrachium shokitai

コンジンテナガエビ Macrobrachium lar

オニテナガエビ Macrobrachium rosenbergii

テナガエビの特徴と飼い方

適正水質:中性~弱酸性
適正水温:0~25℃
餌の種類:冷凍赤虫・配合飼料など
繁殖:難しい
混泳:難しい

テナガエビは南方産を除いて高水温には弱いので、夏場の暑さ対策をする必要があります。また、酸欠にも弱いのでエアレーションは必須です。

本種は捕食性が強いため、小型魚や小型甲殻類などとの混泳は避けたほうが無難です。

テナガエビ(Macrobrachium nipponense)の陸封型は完全淡水でも産卵し、孵化したゾエア幼生は淡水プランクトンを食べて育ちますので、屋外で培養したグリーンウォーター水が必要になります。

他の種類は抱卵した親エビを15‰(パーミル)程度の汽水に移すとゾエア幼生を放出します。ゾエア幼生はかなり小さいため、餌としてワムシを用意して与えます。

なお、テナガエビのゾエア幼生は強い走光性を持ちます。室内で偏光した照明を当てると、そこにばかり集まり摂餌もせずに死んでしまいます。ですので、ゾエア幼生期には直接照明を当てず、間接光で飼育することが重要です。

このように、テナガエビの産卵・繁殖にはそれなりの設備と準備が必要となるため、不可能ではありませんがかなり困難です。

※遺伝子のかく乱を避けるため、入手した生物は野外へは放流せずに必ず最後まで飼いきるようにしてください。

※日本産生物は種類・地域により保護されている場合がありますので、野外採集はせずブリード個体を入手してください。

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アクアテラリウムとは

「アクアテラリウム」とは陸場と水場がある形式の水槽システムのことで、魚類以外の多くの水生昆虫・甲殻類・両生類・爬虫類を飼育する場合に必要になります。

アクアテラリウムでは、通常の水槽と違って水量が半分程度になりますので、あまり小さな30cmや45cmの水槽では水質が安定しません。やはり60cmクラス以上の水槽が必要でしょう。また、陸場を広くとるためには奥行き30cmタイプではなく45cmタイプをおすすめします。

詳しくは下記の関連記事で必要な機材から具体的な組み立て方まで解説していますのでご参照ください。

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アクアテラリウムの作り方と飼育生物一覧|博物館学芸員が必要な器材を解説

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