この記事は30年以上にわたり博物館に務める生物学の学芸員が執筆した専門記事です。

【トンボ種類一覧フリー画像図鑑】翅の形状による分類の基本と生活史などについても解説

トンボの仲間の分類の基本(翅の形状の差異による分け方)と共通する生活史について解説するとともに、主な種類をフリー画像を用いてご紹介していきます。

なお、画像は全てhttps://ja.wikipedia.org/wiki/トンボの各個別種ページより直接出力しています。

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翅の形状によるトンボの分類

トンボは大きくは2つの仲間に分けられます。それは、均翅亜目(イトトンボ亜目)Zygopteraと不均翅亜目(トンボ亜目)Anisopteraで、前者は前翅と後翅が相似形であるのに対し、後者は前翅と後翅が異なります。

また、静止しているときの翅の状態も異なり、前者は羽を閉じてとまりますが、後者は羽を開いてとまります。

進化の度合いとしては、均翅亜目(イトトンボ亜目)Zygopteraのほうが原始的で不均翅亜目(トンボ亜目)Anisopteraのほうがより進化しており、飛翔能力についても後者のほうがかなり優れています。

なお、中間的な形状の均翅不均翅亜目(ムカシトンボ亜目)Anisozygopteraがあり、ムカシトンボ1種のみが含まれます。

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トンボの生活史

トンボはサナギの期間を持たない原始的な不完全変態の昆虫で、幼虫期は全種類が水中で生活します。一般的にトンボ類の幼虫はヤゴと呼ばれ、成虫の生活に適さない低温期をこの姿で過ごし、気温の上昇する春から秋にかけて羽化・繁殖を行います。

それでは、次の項目からは日本の代表的なトンボをご紹介していきます。各種の詳細につきましてはそれぞれのリンク先ページをご参照ください。

キイトトンボ

キイトトンボの特徴

キイトトンボは本州以南および朝鮮半島・中国東部に分布しています。平地から低山地にかけての池沼周辺や湿地帯に生息しています。全長31~48mm・後翅長15~26mmです。

アオモンイトトンボ

アオモンイトトンボの特徴

アオモンイトトンボはアフリカから東アジアまで広く分布し、国内では本州以南から南西諸島まで分布しています。平地部の流れのない(または非常に緩やかな)水域周辺に生息しています。体長32mm前後です。

セスジイトトンボ

セスジイトトンボの特徴

セスジイトトンボは日本全国、朝鮮半島・中国・ロシア極東部など東アジアに広く分布しています。全長27~37mm・後翅長が13~22mmです。平地から丘陵地にかけての水草の多い池沼や緩やかな河川周辺に分布しています。

モノサシトンボ

モノサシトンボの特徴

モノサシトンボは国内では北海道から九州にかけて、国外では朝鮮半島と中国東部の温帯域に分布しています。亜熱帯域の琉球列島や小笠原諸島では確認されていません。全長39~50 mm・後翅長18~26 mmです。平地から丘陵地にかけての周囲を樹林で囲まれた池沼周辺に生息しています。

アオイトトンボ

アオイトトンボの特徴

アオイトトンボはユーラシア大陸とその周辺(ヨーロッパ・ロシア・中国・朝鮮半島・日本)の温帯域に広く分布しています。亜熱帯域である琉球列島と小笠原諸島では確認されていません。全長34~-48 mm・後翅長18~25 mmです。平地から山地にかけての抽水植物が多い池沼や湿地帯に生息しています。

オツネントンボ

オツネントンボの特徴

オツネントンボはユーラシア大陸から東アジア(ヨーロッパ・ロシア・中国・朝鮮半島・日本列島)にかけての温帯域に広く分布しています。全長35~41mm・後翅長20~24mmです。平地から山地にかけての抽水植物が多く生えた池沼周辺に生息しています。

ヤエヤマハナダカトンボ

ヤエヤマハナダカトンボの特徴

ヤエヤマハナダカトンボは八重山諸島の固有種です。体長29~34mm・後翅長25mm程度です。薄暗い渓流地域に生息しています。

ニホンカワトンボ

ニホンカワトンボの特徴

ニホンカワトンボは日本列島の亜寒帯から温帯にかけて広く分布しています。全長47~68mm・後翅長31~43mmです。平地から丘陵地にかけての水草のある水質の良い河川中流域周辺に生息しています。

ハグロトンボ

ハグロトンボの特徴

ハグロトンボは東アジア全域(日本列島・朝鮮半島・中国東部・ロシア東部)および北アメリカ大陸に分布しています。体長は57~67mm・後翅長35~44mmです。平地から低山地にかけてのヨシや水草の多い流れのゆるい河川中流域周辺に生息しています。

コナカハグロトンボ

コナカハグロトンボの特徴

コナカハグロトンボは八重山諸島に分布しています。後翅長23~27mmです。山間部の河川渓流域~上中流域のあまり開けていない環境に生息しています。

ムカシトンボ

ムカシトンボの特徴

ムカシトンボは北海道から九州にかけて分布しています。体長50mm前後・後翅長およそ30mm前後です。山間部の水質の良好な渓流域周辺に生息しています。

ギンヤンマ

ギンヤンマの特徴

ギンヤンマは日本を含む東アジアから中央アジア・インド亜大陸の温帯地域に分布しています。全長70mm・翅長50mmになる大型のトンボです。流れのない明るい開けた池沼周辺に生息し、河川などでは見られません。

ルリボシヤンマ

ルリボシヤンマの特徴

ルリボシヤンマはユーラシア大陸から北アメリカ大陸の北半球全域の温帯に分布しています。全長75~85mmの大型のトンボです。低地の湿地や浅い池沼周辺に生息しています。

マルタンヤンマ

マルタンヤンマの特徴

マルタンヤンマは日本から台湾・インドにかけての温帯域に分布しています。全長65~84mm・後翅長41~50mmになる大型のトンボです。平地から丘陵地にかけての比較的暗い池沼周辺に生息し、成虫は主に夕方に活動します。

マダラヤンマ

マダラヤンマの特徴

マダラヤンマは北海道から関東以北にかけて分布しています。体長63~74mmになります。水生植物の豊富な池沼周辺に生息しています。

カトリヤンマ

カトリヤンマの特徴

カトリヤンマは北海道から沖縄にかけて日本全国に広く分布しています。体長70~75mmになります。平地の水辺周辺に生息しています。

ミルンヤンマ

ミルンヤンマの特徴

ミルンヤンマは日本固有種で、北海道・本州・九州・四国にかけて分布しています。体長70~75mmになります。河川の源流域から上流域周辺にかけて生息しています。

ヤブヤンマ

ヤブヤンマの特徴

ヤブヤンマは東アジアの温帯~亜熱帯域に分布しており、国内では本州以南で見ることができます。全長79~93mm・後翅長51~59mmになります。平地から丘陵地にかけての森林に囲まれた薄暗い池沼周辺に生息しています。

オニヤンマ

オニヤンマの特徴

オニヤンマは北海道から八重山諸島にかけての日本列島全域に分布しています。全長90mm~110mm・後翅長は55mm~65mmになる日本最大のトンボです。平地の水質の良い小川から山間部の渓流周辺にかけての幅広い環境で生息しています。

エゾトンボ

エゾトンボの特徴

エゾトンボは東アジアの温帯~亜寒帯域に分布しており、国内では北海道から九州にかけて見ることができます。体長およそ50mmになります。冷涼な地域の湿地帯周辺に生息しています。

ウチワヤンマ

ウチワヤンマの特徴

ウチワヤンマは東アジアの熱帯から温帯域にかけて広く分布しています。国内では北海道から九州にかけて見ることできます。全長70~87mm・後翅長40~51mmになります。平地から丘陵地にかけての開けた池沼周辺に生息しています。

コオニヤンマ

コオニヤンマの特徴

コオニヤンマは東アジアの温帯から亜熱帯地域に広く分布しており、国内では北海道から屋久島にかけて見ることができます。全長75~93mm・後翅長46~62mmになります。水質の良い河川の上流域から中流域にかけて生息しています。

オナガサナエ

オナガサナエの特徴

オナガサナエは日本固有種で本州・九州・四国にかけて分布しています。体長58〜65mmになります。河川の中流域周辺に生息しています。

ダビドサナエ

ダビドサナエの特徴

ダビドサナエは日本固有種で、本州・九州・四国にかけて分布しています。体長42〜49mmになります。水質の良い河川の上流~中流域周辺に生息しています。

ショウジョウトンボ

ショウジョウトンボの特徴

ショウジョウトンボは北海道から沖縄にかけての日本全国に広く分布しています。体長44~55mmになります。平地の池沼・水田周辺に生息しています。

コフキトンボ

コフキトンボの特徴

コフキトンボは東アジアの亜寒帯から亜熱帯にかけて広く分布しており、国内では北海道から沖縄にかけて見ることができます。体長38mm~48mmになります。平地から丘陵地にかけての水草の豊富な池沼・河川中流域周辺に生息しています。

カオジロトンボ

カオジロトンボの特徴

カオジロトンボはユーラシア大陸から東アジアにかけての亜寒帯地域に広く分布しており、国内では関東以北の山岳地帯で見ることができます。全長31~39mm・後翅長20~30mmになります。山地の池沼周辺に生息しています。

ベッコウトンボ

ベッコウトンボの特徴

ベッコウトンボは東アジアの温帯域に分布しており、国内では静岡県・兵庫県・山口県および九州の一部で見ることができます。体長37~45mmになります。平地の植生の豊かな池沼周辺に生息しています。かつては本州から吸収にかけて広く分布していましたが、生息環境の減少にともない分布域は非常に狭くなっています。

ハッチョウトンボ

ハッチョウトンボの特徴

ハッチョウトンボはオーストラリア北部~東南アジア~インド~東アジアの熱帯から温帯地域に広く分布しています。国内では本州・四国・九州で見ることができます。17~21mmになります。平地から丘陵地にかけての水質の良い湧水地周辺に生息しています。このため、水質指標生物の一つとして用いられることもあります。

シオカラトンボ

シオカラトンボの特徴

シオカラトンボはロシア・中国・韓国・台湾・日本全土と東アジアの温帯地域に広く分布しています。体長50~55mm・後翅長43mm前後になります。平地のため池や湿地周辺に生息しています。

オオシオカラトンボ

オオシオカラトンボの特徴

オオシオカラトンボは中国中南部から日本全土にかけての東アジアの温帯域に広く分布しています。体長50~57mmになります。平地の池沼や湿地周辺に生息しています。

ウスバキトンボ

ウスバキトンボの特徴

ウスバキトンボは世界中の熱帯から温帯にかけて広く分布しています。体長およそ50mm・後翅長およそ40mmになります。成虫になると水辺から離れ、都市部を含めたあらゆるところに出現します。

コシアキトンボ

コシアキトンボの特徴

コシアキトンボは東南アジアから東アジアにかけての熱帯~温帯域に分布しており、日本国内では北海道以外で見ることができます。体長50mm前後になります。平野部の水辺周辺に広く生息しています。

チョウトンボ

チョウトンボの特徴

チョウトンボは日本では本州(青森県津軽~上北地方以南)および四国・九州にかけて分布しており、国外では朝鮮半島、中国に分布しています。腹長は20-25mmほどになります。平地から丘陵地にかけての植生豊かな池沼などで見られます。

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