この記事は30年以上にわたり博物館に務める生物学の学芸員が執筆した専門記事です。

【鳴く虫種類一覧&鳴き声図鑑】夏から秋にかけて音色を奏でる昆虫を生物学博物館学芸員が解説

夏から秋にかけての風物詩でもある「鳴く虫」の種類を、夏から晩夏に鳴くキリギリスの仲間、秋に鳴くコオロギの仲間それぞれの主な種類の鳴き声・特徴・分布・大きさについて生物学の博物館学芸員である筆者がご紹介・解説します。

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コオロギの仲間

コオロギとはどんな虫?

コオロギ(蟋蟀、蛬、蛩、蛼)は、昆虫綱バッタ目(直翅目)キリギリス亜目(剣弁亜目)コオロギ上科の総称である。オス成虫の翅にはやすり状の発音器や共鳴室があり、発音器をこすり合わせて「鳴く」ものが多い。

引用:Wikipedia「コオロギ」

ケラ:Gryllotalpa orientalisの鳴き声と特徴

ケラは土中で生活するのに特化・進化したコオロギの仲間で、初夏によく鳴きます。体長30mm前後。北海道・本州・四国・九州の草原や田畑などの土中に生息。

鳴き声

「ジジジジジ……」

カネタタキ:Ornebius kanetatakiの鳴き声と特徴

カネタタキは樹上性のコオロギの仲間で、メスの翅が退化しているのが特徴です。本州・四国・九州・南西諸島の里山の樹上に生息しています。体長9~15mm前後。

鳴き声

「チッチッチッチッ」

スズムシ:Homoeogryllus japonicusの鳴き声と特徴

スズムシは古くから鳴く虫の代表格として有名で、日本人にとってもっとも親しみ深い鳴く虫の一つです。東北南部以南の本州・四国・九州の林縁部のススキ原や茂みに生息しています。体長17〜25mm。

鳴き声

「リーンリーンリーン」

マツムシ:Xenogryllus marmoratusの鳴き声と特徴

マツムシは鈴虫と並び鳴く虫の代表格とも言える虫で、本州・四国・九州のススキ原に生息しています。体長19〜33mm前後。

鳴き声

「チンチロリンチンチロリン」

アオマツムシ:Truljalia hibinonisの鳴き声と特徴

アオマツムシは明治時代に中国から移入された帰化種ですが、現在では非常に分布域を拡大し、特に都市部ではもっとも鳴き声を耳にする虫です。本州・四国・九州の市街地の街路樹などに生息しています。体長20~25mm前後。

鳴き声

「リーリーリー」

エンマコオロギ:Teleogryllus emmaの鳴き声と特徴

エンマコオロギは鳴く虫のなかでも民家に近いところに生息し、また生息数も多いのでよく鳴き声を耳にするコオロギの代表格です。本州・四国・九州の草原や茂みに生息しています。体長26~32mm前後。

鳴き声

「コロコロコロコロ」

ツヅレサセコオロギ:Velarifictorus micadoの鳴き声と特徴

ツヅレサセコオロギは北海道・本州・四国・九州の農耕地・庭・草地といった身近な場所に普通に見られる種です。体長13~22mm前後。

鳴き声

「リィリィリィ」

ミツカドコオロギ:Loxoblemmus doenitziの鳴き声と特徴

ミツカドコオロギは逆三角形に角ばった扁平な頭部が特徴の中型コオロギで、北海道・本州・四国・九州の農耕地・庭・草地といった身近な場所に生息しています。体長15~20mm前後。

鳴き声

「キッキッキッキ」

ハラオカメコオロギ:Loxoblemmus campestrisの鳴き声と特徴

ハラオカメコオロギはオーバーハングした頭部が外見上の特徴で、北海道・本州・四国・九州の農耕地・庭・草地に生息しています。体長13~18mm前後。

鳴き声

「リ・リ・リ・リ・リ…」

マダラスズ:Dianemobius nigrofasciatusの鳴き声と特徴

マダラスズは北海道・本州・四国・九州・南西諸島の農地・荒れ地・庭などに普通に生息している小型のスズムシ類です。体長6~7mm前後。

鳴き声

「ジージージー」

カンタン:Oecanthus longicaudaの鳴き声と特徴

カンタンは北海道・本州・四国・九州のクズやヨモギが茂った平地の草むらに生息しています。アブラムシを好んで食べる変わった習性を持ています。体長11~20mm。

鳴き声

「ルルルルルルルル」

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キリギリスの仲間

ツユムシ:Phaneroptera falcataの鳴き声と特徴

ツユムシは北海道・本州・四国・九州の明るい開けた草むらに生息しています。キリギリスの仲間としては数少ない完全草食性でキク科やマメ科の葉・花を好んで食べます。体長29~38mm前後。

鳴き声

「ピチ・ピチ…ジ・ジィ・ジィ・ジィ」

アシグロツユムシ:Phaneroptera nigroantennataの鳴き声と特徴

アシグロツユムシは北海道・本州・四国・九州の平地から亜高山帯までの草地に生息しています。体長30~35mm前後。

鳴き声

「ジキーッ・ジキーッ」

セスジツユムシ:Ducetia japonicaの鳴き声と特徴

セスジツユムシは北海道・本州・四国・九州・南西諸島の林縁部のつる性植物の茂った草むらに生息しています。体長31-40mm前後。

鳴き声

「チ・チ・チ・ジュキー」

ホソクビツユムシ:Shirakisotima japonicaの鳴き声と特徴

ホソクビツユムシは本州・四国・九州の高地の森林外縁部に生息しています。樹上性で落葉広葉樹の葉を餌にしています。体長35mm前後。

鳴き声

「チィチィチィ…キチキチジュキチキチ…」

クツワムシ:Mecopoda nipponensisの鳴き声と特徴

クツワムシは本州・四国・九州のクズの茂った草むらに生息している、キリギリスの仲間ではカヤキリと並ぶ最大種です。体長50~53mm。

鳴き声

「カシャカシャカシャカシャ」

ウマオイ:Hexacentrusの鳴き声と特徴

ウマオイは本州・四国・九州の林縁部から里山の草むらに生息するハタケノウマオイ(Hexacentrus unicolor)とハヤシノウマオイ(Hexacentrus japonica)の総称です。肉食傾向がかなり強いことが知られています。体長16~18mm前後。

鳴き声

ハタケノウマオイ「シッチョン・シッチョン」

ハヤシノウマウイ「スィーーーッ・チョン」

クサキリ:Homorocoryphus lineosusの鳴き声と特徴

クサキリは本州・四国・九州のイネ科の草むらに生息しています。体長40~55mm前後。

鳴き声

「ジーーーー」

クビキリギス:Euconocephalus thunbergiの鳴き声と特徴

クビキリギスは北海道・本州・四国・九州・南西諸島の林縁部のイネ科の草むらに生息しています。体長55~65mm前後。

鳴き声

「ヴィーーー」

カヤキリ:Pseudorhynchus japonicusの鳴き声と特徴

カヤキリは本州・四国・九州のアシ・ススキなど背の高いイネ科植物が茂る草むらに生息しており、クツワムシと並びキリギリス類の中で最大種の一つです。

鳴き声

「ジャーーーーーーーーーーーーーーー」

ササキリ:Conocephalus melaenusの鳴き声と特徴

ササキリは本州・四国・九州・南西諸島のササ林に生息しています。体長15mm前後。

鳴き声

「シリシリシリシリシリ……」

ホシササキリ:Conocephalus maculatusの鳴き声と特徴

ホシササキリは本州・四国・九州・南西諸島の日当たりのよい開けた草むらや荒れ地に生息しています。体長15mm前後。

鳴き声

「シリリリリ……」

ヤブキリ:Tettigonia orientalisの鳴き声と特徴

ヤブキリは本州・四国・九州のやや背の高い草が生い茂る藪に生息しています。キリギリス類のなかでも最も肉食傾向が強く、捕食に特化した体形をしています。体長45~55mm前後。

鳴き声

「シリリリリ…ギー…」

ヒメギス:Metrioptera engelhardtiの鳴き声と特徴

ヒメギスは北海道・本州・四国・九州のやや湿った草むらに生息しており、キリギリスよりも地上性の強い種類です。体長24~30mm前後。

鳴き声

「シリリリリ…」

キリギリス:Gampsocleis buergeriの鳴き声と特徴

キリギリスは本州・四国・九州のやや乾いた草むらに普通に見られる種類です。生息環境によって緑色型から褐色型までカラーバリエーションが豊富です。また、成虫の体長も24~40mmと生育環境によって大きく変化します。

鳴き声

「ギーギーギー・チョン」

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