
野生のイヌ科猛獣を最強ランキングの順位に、種類ごとに詳しく解説するとともに、ネコ科猛獣との違いなどについても博物館学芸員の筆者が解説します。
イヌ科とは

イヌ科(イヌか、Canidae)は、哺乳綱食肉目に分類される科。鼻口部(吻)は長く、顎が発達する。歯列は門歯が上下6本、犬歯が上下2本、小臼歯が上下8本、大臼歯が上顎4本・下顎6本と計42本の種が多い(ヤブイヌ38本・ドール40本・カニクイイヌ44本・オオミミギツネ46 – 48本)。引用:Wikipedia|イヌ科
オオカミ

イヌ科最強の種は、やはり文句なしでオオカミ(Canis lupus)でしょう。群れを成し集団で協力し、知的に獲物を追い詰める習性は、ただ大きいだけでなく、ネコ科猛獣とは一味違った怖さがあります。

オオカミはユーラシア大陸と北アメリカ大陸、つまり北半球に広く分布しており、数多くの亜種に分かれています。絶滅したニホンオオカミもそのなかに含まれています。
このように、オオカミは1種ですが、分布する地域によって30以上の亜種に分けられています。
オオカミの主な亜種
シベリアオオカミ|Canis lupus albus
アラビアオオカミ|Canis lupus arabs
ホッキョクオオカミ|Canis lupus arctos
メキシコオオカミ|Canis lupus baileyi
カスピオオカミ|Canis lupus cubanensis
イエイヌ|Canis lupus familiaris
エゾオオカミ|Canis lupus hattai(絶滅)
ニホンオオカミ|Canis lupus hodophilax(絶滅)
イタリアオオカミ|Canis lupus italicus
ヨーロッパオオカミ|Canis lupus lupus
シンリンオオカミ|Canis lupus lycaon
グレートプレーンズオオカミ|Canis lupus nubilus
アラスカオオカミ|Canis lupus occidentalis
インドオオカミ|Canis lupus pallipes
オオカミの大きさ

オオカミは亜種によって差異はあるものの、体長100~160cm・体重20~50kgと現存するイヌ科のなかでも最大種です。
オオカミの餌
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オオカミは雌雄のペアを中核とした、高度に組織化された10頭前後の群れで狩りをしています。げっ歯類やウサギなどの小型哺乳類、イノシシやヤギなど中型の哺乳類を中心に捕食していますが、時には群れでヘラジカなどの大型哺乳類を狩ることもあります。
オオカミの繁殖

オオカミの繁殖期は冬で、妊娠期間は約60日、春先に5頭前後を出産します。
タテガミオオカミ

タテガミオオカミ(Chrysocyon brachyurus)はオオカミとは異なる種で、南アメリカ大陸の中央部東側に分布しています。体重は最大で20kgを超え、イヌ科なのかではオオカミに次いで大きな種です。
オオカミと違い群れは作らず、基本的にペアで生活しています。食性は雑食で、齧歯類・アルマジロ類・ウサギ類などの哺乳類のほか、鳥類・爬虫類・魚類・昆虫だけでなく果実なども食べます。
ネコ科のチーター並みの走力を持つことでも知られています。
コヨーテ

コヨーテは極地を除く北アメリカ大陸に広く分布しており、オオカミの近縁種です。体長75~100cm・体重10~20kgと大型犬並みのサイズですが、同所的に分布しているオオカミよりは小型ですが、イヌ科猛獣の中ではトップ3の大きさです。
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コヨーテはネズミ・ウサギ・オグロプレーリードッグのほか魚類なども捕食する肉食性です。

コヨーテの繁殖期は冬期で、妊娠期間は約60日で5~10頭を産みます。
ジャッカル

ジャッカルはインド・中東とアフリカ大陸に分断されて分布しており、それぞれの種は以下のとおりです。
キンイロジャッカル|C. aureus

中東からインドにかけて分布。
アビシニアジャッカル|C. simensis

エチオピアに生息。
セグロジャッカル|C. mesomelas
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南部アフリカに生息。
ヨコスジジャッカル|C. adustus
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中部アフリカに生息。
ジャッカルの大きさ
ジャッカルは最大種のキンイロジャッカルで体長65〜106cm・体重7~15kgと大きな体躯をしています。最小種でもヨコスジジャッカルの体長80cmです。
ジャッカルの餌
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ジャッカルは死肉を食べるイメージがありますが、それだけでなく実際にはイタチやウサギなどを狩って餌にしています。また、時にサトウキビなどカロリーのある植物を摂食することも知られています。
ジャッカルの繁殖

ジャッカルの妊娠期間は50~60日で、5頭前後を出産します。
キツネ

キツネはアフリカ大陸・北アメリカ大陸・ユーラシア大陸とその周辺諸島に分布しており、日本国内にもアカキツネの亜種であるホンドキツネとキタキツネが生息しています。
なお、世界に分布するキツネには以下の種があります。
ベンガルギツネ|Vulpes bengalensis・ Bengal fox
ブランフォードギツネ|Vulpes cana・Blanford’s fox
ケープギツネ|Vulpes chama・Cape fox
コサックギツネ|Vulpes corsac・Corsac fox
チベットスナギツネ|Vulpes ferrilata・Tibetan sand fox
ホッキョクギツネ|Vulpes lagopus・Arctic fox
キットギツネ|Vulpes macrotis・Kit fox
オグロスナギツネ |Vulpes pallida・Pale fox
オジロスナギツネ Vulpes rueppelli・Rüeppel’s fox
スイフトギツネ Vulpes velox・Swift fox
アカギツネ Vulpes vulpes・Red fox
フェネックギツネ Vulpes zerda・Fennec fox
最も北に住むキツネ
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最も北に住むキツネは極地を分布域とする北極キツネで、-70℃の環境に耐えることも可能です。主にホッキョクグマの食べ残しや自身で狩猟した小動物・魚類などを食べています。
最も小さなキツネ
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最も小さなキツネはアフリカ大陸の熱帯サバンナに分布しているフェネックギツネで、体長30~40cm・体重1~2kgとキツネ属だけでなくイヌ科でも最小です。
最も分布域の広いキツネ
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もっとも分布域の広いキツネは、日本にも分布しているアカキツネで、ユーラシア大陸と北アメリカ大陸のほぼ全域に生息しています。
キツネの大きさ
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もっとも一般的な種であるアカキツネは、体長45~86cm・尾長30~55cm・体重2.5~6.5kgと中型犬程度の大きさですが、特に尾が長く大きいのが特徴です。
キツネの餌
キツネの餌対象となる生物は多岐にわたり、齧歯類・ウサギ・昆虫類・ミミズ・卵・鳥類・その他小動物などのほか、果実を食べることもあります。
キツネの繁殖
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キツネの繁殖期は分布域と種によって差異があるもののおおむね冬で、餌が豊富になる春に離乳をするようになっています。
タヌキ
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民話などでも我々日本人になじみが深いのがタヌキです。イヌ科としてはずんぐりとしており、また顔つきも丸みをおびていますが、正真正銘のイヌ科動物です。
タヌキの分布

タヌキの本来の分布域は上図青の極東地域ですが、毛皮目的の移入の結果、現在はロシアからヨーロッパにかけても生息しています。
タヌキの大きさ

タヌキは体長50~65cm・体重6~10kgと中型犬程度の大きさです。
タヌキの餌
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タヌキは肉食傾向の強い雑食性で、齧歯類・鳥類・両生類・魚類・昆虫類・甲殻類などのほか果実や種子なども食べます。
タヌキの繁殖

タヌキはペアで生活し、ペアのつながりは強く基本的に終生同一のペアで暮らします。繁殖期は冬期で、妊娠期間は50~60日、春先に5頭前後を出産します。
カニクイイヌ
カニクイイヌは南米大陸の北部、アマゾンなどを含む森林地帯に分布しており、体重は最大でも8kg程度と小型のイヌ科動物です。
食性は動物食を中心とした雑食性で、小型哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・カニなどのほかバナナ・マンゴーといった果実も餌にします。
ヤブイヌ

ヤブイヌは現生のイヌ科の中でもっとも原始的な種で、南米大陸の中央~北部にかけて分布しています。体重は最大で7kgほどです。
水辺を好み、泳ぐことだけでなく水に潜ることもでき、カピバラや水鳥・甲殻類などを捕食します。
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