リストラップは恥ずかしいのか?そう感じる人が勘違いしている3つのこと


ジムでベンチプレスやダンベルプレスを続けていると、リストラップを使ってみたいと思う一方で、まだ自分には早いのではないか、初心者なのに巻いていたら恥ずかしいのではないかと感じる人は少なくありません。特に周囲の視線が気になる環境では、道具を使うこと自体に遠慮が出やすいです。しかし、リストラップは強い人を演出するための道具ではなく、手首を安定させて押す動作を保ちやすくするための補助具です。恥ずかしいと感じてしまう人ほど、まずはその前提を整理しておいたほうが判断を間違えにくくなります。

結論から言うと、リストラップは恥ずかしいものではありません。手首が不安定なら、初心者でも低重量でも使って問題ない補助具です。大事なのは周囲からどう見られるかではなく、自分のフォームと手首の安定に必要かどうかです。

執筆者・監修者・運営者情報
筆者は、スポーツ競技の元日本代表としての経験に加え、博物館施設の生物学学芸員として30年にわたり生物の筋肉構造・作用にも知見を積み重ねてきました。さらにその後は設備管理責任者として大型機械設備の構造解析・運用・安全管理を担当し、支点構造や負荷伝達といった工学的知見も蓄積しています。このように「競技者としての経験」「学芸員としての知識」「工学的な構造理解」の三面に精通した上で、本記事の解説を行っています。

勘違い1:リストラップは上級者だけの道具だと思っている

リストラップを巻いている人を見ると、高重量を扱う上級者のイメージを持つ人は多いと思います。そのため、自分の使用重量がまだ軽いうちは使ってはいけないと感じやすいものです。

しかし実際には、リストラップの役割は強く見せることではなく、押す動作の中で手首が過度に反るのを抑え、力の逃げを減らすことにあります。つまり重要なのは扱っている重量の大きさではなく、動作中に手首が不安定になるかどうかです。

特にベンチプレスやダンベルプレスでは、手首が寝た状態になると押す力が散りやすくなり、狙った筋肉に集中しにくくなります。フォームがまだ固まっていない初心者ほど、この影響を受けやすいこともあります。ですので、リストラップを上級者の道具と考えるのではなく、押す種目を安定させるための補助具として考えると良いでしょう。

勘違い2:低重量で使うと見栄を張っているように見えると思っている

リストラップが恥ずかしいと感じる人の多くは、低重量なのに巻いていたら格好をつけているように見られるのではないかと不安が原因です。

ですが、実際のトレーニングでは他人の使用重量を細かく見ている人はそれほど多くありません。多くの人は自分のセットに集中しており、周囲の人の手首に何を巻いているかまで気にしていないことがほとんどです。

それに、道具の使用を見栄と結び付けてしまうと、本来は動作を安定させるために使うべき場面でも無理に我慢することになります。手首が不安定なままトレーニングを続ければ、結果としてフォームが崩れやすくなり、胸や肩や上腕三頭筋にしっかりとウエイトを乗せにくくなります。

これでは、本末転倒ですよね。

ですので、低重量でもリストラップが必要であるなら使う。それだけの判断で十分です。恥ずかしさの正体は周囲の評価ではなく、自分が勝手に作っている思い込みなのです。

勘違い3:リストラップを使うのは弱さの証明だと思っている

補助具を使うことに対して、素手でできないのは弱い証拠だと考える人もいます。しかし、これはかなりズレた見方です。トレーニングの目的は道具を使わずに我慢することではなく、狙った動作をより安定して行い、対象部位に適切な刺激を入れることです。リストラップを使うことで手首の角度が安定し、押す軌道が最適化できるなら、それは弱さではなく合理的な思考です。

特にプレス系種目では、胸や肩より先に手首の不安定さが限界点になってしまう人もいます。その状態で無理に素手にこだわると、本来鍛えたい部位を効率的に鍛えることができません。

補助具は目的に合わせて使うための手段です。弱いから使うのではなく、狙いを外さないために使うという考え方に切り替えるのが合理的です。

一般的なベンチプレスでは手首を立てるのが基本

一般的な筋力トレーニー向けのベンチプレスでは、バーは手のひらの深い位置で受け、前腕の真上に重さを乗せる形が基本になります。このとき手首はできるだけ立った状態を保ち、バーの荷重を骨格で受ける形に近づけたほうが安定しやすいです。手首が大きく寝ると、押す力が逃げやすくなるだけでなく、手首そのものに余計な負担もかかります。そのため、一般論としては、手首を立てたまま支えにくくなった段階がリストラップを考える目安になります。

参考画像:一般ベンチプレスの図解

ベンチプレスの正しいフォーム図解。ベンチに仰向けで肩甲骨と腰の3点で身体を支え、足で上半身の支持点を押す。顎を軽く引き、バーはやや斜め上に押し上げながら肩甲骨を寄せて安定させるポイントを示している

ただし競技ベンチプレスでは前提が変わる

ここで話が少し変わります。一般的なベンチプレスでは手首を立てる考え方が基本ですが、競技ベンチプレスでは必ずしもそうとは限りません。競技ではアーチの強さ、グリップ幅、バーの乗せ方、ルールの中での最適化などを踏まえて、あえて手首をやや寝かせる使い方が実戦的になる選手も多いです。これは単純にフォームが悪いという話ではなく、競技動作としての合理性の中でそうなっている場合があります。つまり、一般論のまま競技ベンチを語るとズレます。

関連記事

リストラップはベンチプレス何kgから必要か?一般ベンチと競技ベンチで異なる考え方
ベンチプレスを続けていると、リストラップは何kgから必要になるのかが気になってくる人は多いと思います。高重量を扱う人の装備という印象が強いため、まだ早いと感じる人もいれば、もっと早く使うべきだったのではないかと迷う人もいます。ただ、この...

恥ずかしいかどうかではなく必要かどうかで判断するべき

リストラップを使うかどうかを決める基準は、見た目ではなく必要性です。ベンチプレスやダンベルプレスで手首が後ろに折れやすい人、セット後に手首まわりの不安定さが気になる人、押している途中で手首から力が逃げる感覚がある人は、リストラップを使うべきです。

逆に、軽重量でフォームも安定していて、手首に何の不安もない段階なら急いで導入する必要はありません。

大事なのは、周囲にどう見られるかではなく、自分のトレーニング動作が安定するかどうかです。筋トレは他人の評価を集める場ではなく、自分の身体を計画的に強くしていく作業です。その判断軸が定まっていれば、リストラップを巻くこと自体を恥ずかしいと感じることはなくなります。

リストラップが向いている人

ベンチプレスやダンベルプレスで手首が寝やすい人、セット後に手首周辺の疲労感ばかりが残る人、押している最中にバーやダンベルを真っすぐ支えにくい人は、リストラップを試す意味があります。逆に、何となく格好よさそうだから使うという発想だけだと、巻き方も使い方も雑になりやすく、効果を感じにくいはずです。

道具は目的と1セットで使うものです。手首の安定という目的があるなら、初心者でも導入して問題ありません。そこに変な遠慮は不要です。使うべき場面で使うだけです。

まとめ

リストラップが恥ずかしいと感じる人の多くは、上級者だけの道具だと思っていること、低重量で使うと見栄に見えると思っていること、補助具を使うのは弱さだと思っていること、この3つの勘違いを抱えています。しかし実際のリストラップは、強さを見せるための道具ではなく、押す動作を安定させるための実用品です。必要があるなら初心者でも使っていいですし、低重量でも使って問題ありません。恥ずかしいかどうかではなく、自分の手首とフォームに必要かどうかで判断したほうが、筋トレは確実に進めやすくなります。

ベンチプレス世界王者監修執筆記事

【ベンチプレス100kgを挙げるやり方】フォームとメニューの組み方を元全日本王者が解説

上記記事の技術理論の根拠となる監修者

監修者:奥谷元哉|株式会社ONI 代表取締役社長

奥谷元哉氏プロフィール
武器屋.net トレーニング用品セレクトショップ

主戦績:ベンチプレス競技

2011日本ベンチプレス選手権大会74kg級3位
2014日本ベンチプレス選手権大会74kg級3位
2015年全日本ベンチプレス選手権大会74kg級3位
2018年全日本ベンチプレス選手権大会74kg級3位
2022年世界マスターズベンチプレス選手権大会M1・74kg級優勝

主戦績:パワーリフティング競技

2009年全日本パワーリフティング選手権大会75kg級優勝
2011年全日本パワーリフティング選手権大会74kg級優勝
2011年世界パワーリフティング選手権大会ベンチプレス種目別74kg級2位
2012年アジアパワーリフティング選手権大会ベンチプレス種目別74kg級1位
2017年全日本パワーリフティング選手権大会74kg級3位