リストラップはベンチプレス何kgから必要か?一般ベンチと競技ベンチで異なる考え方

ベンチプレスを続けていると、リストラップは何kgから必要になるのかが気になってくる人は多いと思います。高重量を扱う人の装備という印象が強いため、まだ早いと感じる人もいれば、もっと早く使うべきだったのではないかと迷う人もいます。ただ、このテーマは単純に重量だけで区切るとズレやすいです。一般的なベンチプレスでは、手首をできるだけ立てて前腕の真上で支える考え方が基本になりますが、競技ベンチプレスではあえて手首を寝かせる使い方も珍しくありません。リストラップの必要性は、この前提の違いでかなり変わります。

本記事の前半では、一般的なトレーニーのベンチプレスについて解説し、後半部分ではベンチプレス世界王者の理論と実演写真を加えながら競技ベンチプレスの解説を行います。

執筆者・監修者・運営者情報
筆者は、スポーツ競技の元日本代表としての経験に加え、博物館施設の生物学学芸員として30年にわたり生物の筋肉構造・作用にも知見を積み重ねてきました。さらにその後は設備管理責任者として大型機械設備の構造解析・運用・安全管理を担当し、支点構造や負荷伝達といった工学的知見も蓄積しています。このように「競技者としての経験」「学芸員としての知識」「工学的な構造理解」の三面に精通した上で、本記事の解説を行っています。

リストラップはベンチプレス何kgから必要なのか

結論から言うと、一般的なベンチプレスでは何kgから必須と一律に決めることはできません。必要になる目安は、重量そのものよりも手首の安定性です。60kgでも手首が後ろに反ってバーを支えにくい人は使う意味がありますし、100kg近くまで手首が安定している人は急いで使わなくてもよい場合があります。つまり、見るべきなのは数字ではなく、バーの重さに対して手首の角度を保てているかどうかです。

一般的なベンチプレスでは手首を立てるのが基本

一般的な筋力トレーニー向けのベンチプレスでは、バーは手のひらの深い位置で受け、前腕の真上に重さを乗せる形が基本になります。このとき手首はできるだけ立った状態を保ち、バーの荷重を骨格で受ける形に近づけたほうが安定しやすいです。手首が大きく寝ると、押す力が逃げやすくなるだけでなく、手首そのものに余計な負担もかかります。そのため、一般論としては、手首を立てたまま支えにくくなった段階がリストラップを考える目安になります。

参考画像:一般ベンチプレスの図解

ベンチプレスの正しいフォーム図解。ベンチに仰向けで肩甲骨と腰の3点で身体を支え、足で上半身の支持点を押す。顎を軽く引き、バーはやや斜め上に押し上げながら肩甲骨を寄せて安定させるポイントを示している

手首が崩れ始める段階がリストラップ使用の目安

リストラップが必要になる本当のサインは、セット終盤や高重量で手首が後ろに折れ始めることです。下ろした位置でバーの重さに負けて手首が寝る感覚があるなら、そこから出力が逃げています。押す力そのものが弱いのではなく、手首が土台として耐えきれていない状態です。この段階でリストラップを使えば、手首の角度を保ちやすくなり、今ある力をバーへ伝えやすくなります。つまり、リストラップは急に何十kgも伸ばす魔法の道具ではなく、崩れやすい土台を補強する道具です。

重量だけで必要性を決めるのは間違い

ベンチプレスでは80kgから必要、あるいは100kgから必要といった話を聞くことがあります。たしかに、そのあたりから手首への負担を感じ始める人は増えます。ただ、それは多くの人に起こりやすい傾向であって、全員に当てはまる基準ではありません。手首が細い人、過去に手首を痛めたことがある人、バーを深く受けるのが苦手な人は、もっと軽い重量から必要になることがあります。逆に手首が強く、フォームが安定している人は、かなり高重量になるまで不要なこともあります。重量だけで考えると、この個人差を見落としやすいです。

ただし競技ベンチプレスでは前提が変わる

ここで話が少し変わります。一般的なベンチプレスでは手首を立てる考え方が基本ですが、競技ベンチプレスでは必ずしもそうとは限りません。競技ではアーチの強さ、グリップ幅、バーの乗せ方、ルールの中での最適化などを踏まえて、あえて手首をやや寝かせる使い方が実戦的になる選手も多いです。これは単純にフォームが悪いという話ではなく、競技動作としての合理性の中でそうなっている場合があります。つまり、一般論のまま競技ベンチを語るとズレます。

競技では手首を寝かせる使い方が主流

競技ベンチプレスでは、バーを押すというより、全身の形を組んで最短かつ最強の軌道で出力を通すことが重視されます。その中で、手首をやや寝かせたほうがバーの位置関係や押し出しやすさが合う選手もいます。この場合、一般トレーニー向けの手首垂直の理屈だけでは説明しきれません。競技者にとってのリストラップは、単なる保護具ではなく、寝かせた手首を高強度で固定し、出力を逃がしにくくする競技ギアの意味合いが強くなります。だから競技ベンチでは、使用開始の段階が一般論より早くなりやすいです。

競技用リストラップは保護具ではなく出力補助

一般トレーニーにとってのリストラップは、まず手首保護と安定補助の意味が大きいです。一方で競技者にとっては、それに加えて、高重量を成立させるための出力補助としての意味が強くなります。手首を寝かせた状態で高重量を受けるなら、ラップなしでは形を維持しにくいからです。そのため、競技ベンチの世界では、まだ手首が痛くないから不要という考え方にはなりません。高重量を安定して扱うために必要だから使う、という発想になります。

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紹介した各記事の技術理論の根拠となる監修者

監修者:奥谷元哉|株式会社ONI 代表取締役社長

奥谷元哉氏プロフィール
武器屋.net トレーニング用品セレクトショップ

主戦績:ベンチプレス競技

2011日本ベンチプレス選手権大会74kg級3位
2014日本ベンチプレス選手権大会74kg級3位
2015年全日本ベンチプレス選手権大会74kg級3位
2018年全日本ベンチプレス選手権大会74kg級3位
2022年世界マスターズベンチプレス選手権大会M1・74kg級優勝

主戦績:パワーリフティング競技

2009年全日本パワーリフティング選手権大会75kg級優勝
2011年全日本パワーリフティング選手権大会74kg級優勝
2011年世界パワーリフティング選手権大会ベンチプレス種目別74kg級2位
2012年アジアパワーリフティング選手権大会ベンチプレス種目別74kg級1位
2017年全日本パワーリフティング選手権大会74kg級3位

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