
ティラコレオ科(Thylacoleonidae)の分類・分布・形態・生態や特徴について、30年以上の生物学学芸員の実務経験を持つ筆者が解説します。
ティラコレオ科(Thylacoleonidae)の分類
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動物界(Animalia)脊索動物門(Chordata)哺乳綱(Mammalia)双前歯目(Diprotodontia)ティラコレオ科(Thylacoleonidae)に属する絶滅有袋類のグループです。現生のコアラやウォンバットと同じ双前歯目に含まれますが、本科は肉食性へ高度に特化した点で特異です。代表属であるティラコレオ属(Thylacoleo)は「有袋類のライオン」と呼ばれ、双前歯目の進化の中でも最も特殊化した捕食者とされています。
ティラコレオ科(Thylacoleonidae)の分布

中新世から更新世にかけてオーストラリア大陸に分布しました。森林域から疎林、草原周辺まで多様な環境の堆積物から化石が発見されています。更新世後期には大型草食動物が豊富な地域に生息していたと考えられ、ディプロトドンなどの大型有袋類と同じ生態系を構成していました。オーストラリア固有の捕食性哺乳類として頂点捕食者の地位を占めていた可能性があります。
ティラコレオ科(Thylacoleonidae)の形態

最大種であるティラコレオ・カルニフェクス(Thylacoleo carnifex)では体長約1.5m、体重100kg前後に達しました。頭骨は短く幅広く、極めて強力な咬合力を生み出す構造を持ちます。双前歯目特有の切歯が刃状に発達し、肉を切断する鋏のように機能しました。前肢は非常に頑丈で、内側に大きく湾曲した鉤爪を備え、獲物を押さえ込むのに適していました。
ティラコレオ科(Thylacoleonidae)の生態

完全な肉食性で、大型草食有袋類を捕食する能力を持っていたと考えられています。強大な前肢と鉤爪を利用して獲物に取り付き、強力な咬合によって致命傷を与えた可能性が高いです。樹上活動能力を示す骨格形態も指摘されており、待ち伏せ型の捕食者であったという説もあります。洞窟堆積物から多数の化石が見つかることから、岩場や洞窟を利用した生活も推測されています。
ティラコレオ科(Thylacoleonidae)の特徴

草食性有袋類の系統から肉食性の頂点捕食者が進化した点が最大の特徴です。刃状化した前臼歯による剪断機構は哺乳類の中でも特異で、体サイズに対して極めて強い咬合力を持っていました。鉤爪状の母指は現生哺乳類には見られない捕食特化形質です。オーストラリアの更新世生態系において哺乳類捕食者の頂点を占めた存在と考えられています。
ティラコレオ科(Thylacoleonidae)が見られる日本や世界の動物園・水族館
ティラコレオ科は絶滅群であるため生体展示はありませんが、オーストラリア博物館や南オーストラリア博物館などで全身骨格や復元模型が展示されています。洞窟遺跡からの化石とともに捕食者としての生態が解説されています。日本では国立科学博物館などの古生物展示で復元骨格や模型を見ることができます。
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