
天体望遠鏡の初心者・小学生むけの選び方・おすすめの機種にはじまり、種類による特徴・仕組みと適正倍率や使い方、オプション、メーカーによる価格、鏡筒=屈折式と反射式の違い、架台=経緯台と赤道儀の違い、観測対象別におすすめの望遠鏡、などをまとめました。また、中級者以上におすすめの本格的な天体望遠鏡もご紹介しています。小学生ですでに「自動追尾式赤道儀つき反射望遠鏡+屈折望遠鏡」を所持していた、長年の天体マニアの筆者ですので、その内容は保証付きです。
天体望遠鏡の種類
天体望遠鏡の種類は、屈折式・反射式・シュミットカセグレン式の主に三種類です。このほかにもいくつかの派生タイプがあります。
メンテナンスが容易な屈折式天体望遠鏡


最も扱いやすいのが、こちらのような屈折式天体望遠鏡で、カビさえ気をつければ、ほぼメンテナンスフリーです。
欠点はレンズの宿命「色による屈折率の差」ですが、もちろん、屈折率の違う複数の素材を貼り合わせて修正はされています。ただし、修正率の良いものはカメラのレンズ以上に高価になります。
安いレンズだとプリズムを通したように見事に色にじみを起こします。これは高倍率になるほど顕著です。
初心者に扱いやすい種類ですが、良いものは初心者が買うような値段でなくなるというジレンマがあります。
コストパフォーマンスが高い反射式天体望遠鏡


一方、凹面鏡を利用した反射式望遠鏡は色にじみがありません。そして、屈折式にくらべて安価です。
望遠鏡の性能は「倍率」と思われがちですが、それは違います。倍率は主レンズ(鏡)の焦点距離÷接眼レンズの焦点距離、つまり、倍率はどんな望遠鏡でもいくらでもあがります。
望遠鏡の性能で最も大切なのは主レンズ(鏡)の直径。これが大きいほど天体は鮮明に見えます。
ちなみに、多くの人が見たがる土星の輪がちゃんと分離して見えるのは、直径10cmからです。なお、10cmの屈折式望遠鏡は非常に高額になります。
その点、反射式望遠鏡は、最低ランクのものでも直径10cmはありますから、色々見たければこちらがおすすめです。口径に対してコストパフォーマンスの高い天体望遠鏡と言えるでしょう。
ただし、欠点は、鏡が振動などでずれるので、定期的に光軸合わせなどのメンテナンスが必要なことです。
高額だが高性能で便利なカセグレン式天体望遠鏡


そして、屈折式と反射式の両者の欠点を補い合ったのがシュミットカセグレン式望遠鏡です。
ただし、かなり高額になりますが、コンパクトで超高解像度が得られるのは、あまりある魅力があります。
経緯台と赤道儀
天体望遠鏡が乗っている三脚は、正式には二種類あります。

まず、こちらのように水平方向と上下方向、つまりカメラ三脚のように可動するのが経緯台です。
軽くて単純構造なので扱いやすく初心者むきです。しかし、低倍率での天体観察しかできません。100倍以上の高倍率だと、視野に捉えた天体は数秒で視界の外へ動いていくので、経緯台では捉え続けることができません。地球の自転を感じる瞬間です。
天体を高倍率の視野に捉えるのは、実はかなり時間がかかります。やっと見えたと思った次の瞬間には、目標の星はどこかへ消えてしまうのでは観察になりません。

そんな経緯台の問題点を解消したのが赤道儀です。いったん北極星にむけてセットしてしまえば、地球の自転に合わせてワンハンドルで天体を追い続けることが可能となります。

さらに、その軸をモーターで完全自動追尾にするのが、こちらのモータードライブです。これがあると、いつまでもハンズフリーで観察し続けられます。

ちなみに、コンピューター内蔵で、見たい天体座標を入力すれば、全自動で視界に捉えてくれるものもありますが、かなりの高額商品となります。
実際の天体望遠鏡選び
土星の輪の見え方で性能を比較

まずは、こちらの土星の写真をご覧ください。それぞれのレンズまたは主鏡直径と土星の解像度の様子です。おおよその目安になると思います。
買うべきではない天体望遠鏡
最高倍率200倍!に騙されてはいけない

一万円以下で売られている天体望遠鏡を、安価だからといって購入したものの、全く使い物にならない……というのはよく聞く話です。そうならないためにも、望遠鏡の基礎的な部分を解説します。
安価に売られている天体望遠鏡は屈折式望遠鏡であり、また、最低ランクとしておすすめできるのも屈折式望遠鏡なので、本記事では屈折式望遠鏡に焦点を絞って解説します。
なお、屈折式望遠鏡=ダメな望遠鏡ではありませんので誤解のないようにしてください。天体ファンの多くは安価な屈折式望遠鏡にはじまり、コスパの良い反射式望遠鏡を使い込み、最終的には高性能屈折式望遠鏡に戻ると言われています。
話を元に戻します。
ホームセンターや量販店で「最高倍率200倍!」などの売り文句で販売されている、一万円もしないようなコンパクトでカメラ三脚つきの天体望遠鏡を見たことがありますよね?
それこそが、買うべきでない、いや、買ってはいけない天体望遠鏡です。
上の図を見てください。
望遠鏡の倍率は対物レンズ(図中1)の焦点距離÷接眼レンズ(図中2)で決まります。
つまり、どんなに性能が悪くても、レンズ製品でありさえすれば接眼レンズの焦点距離を短くするだけで「いくらでも倍率は上げられる」のです。
まして、接眼レンズの焦点距離を短くするということは、より屈折率の高いレンズを使用するということです。焦点距離の短い接眼レンズほど精密に加工する必要があります。
少し精度の良いルーペ(接眼レンズと同じ構造)なら数千円ほどします。それを考えると、数千円できちんとした天体望遠鏡が作れるはずはありませんよね。最高倍率に騙されてはいけません。
では、天体望遠鏡の性能とは何によって決まるのでしょう?
レンズ直径比の二乗で性能は上がっていく

天体望遠鏡の性能を一言で言えば、対象の天体をどれだけ詳細に見られるか、ということになります。それは言い換えると、どれだけ多くの光を集められるか、ということです。
つまり、対物レンズの直径が大きければ大きいほど、天体望遠鏡はよく見えます。具体的には、小口径のレンズではいくら倍率を上げても土星の輪は本星にくっついてレモン型にしか見えません。そして、大口径のレンズでは低倍率でもくっきりと土星の輪が分離して見えます。
なお、よく誤解されていますが、直径5cmの対物レンズと直径10cmの対物レンズの性能差(集光力)は倍ではありません。光を集める性能はレンズの面積に比例しますので、直径比の二乗、すなわち四倍の差があります。
色収差を補正する性能

素材がガラスでもプラスチックでも、レンズは光を通す透明な固体です。このため、レンズを通過する光は色による屈折率の違いで分離します。
この色の分離=にじみのことを色収差といいます。天体望遠鏡の対物レンズは、この色収差を補正するために、屈折率の違う複数のレンズを貼りあわせた構造になっています。この補正が効いたレンズほど性能が高く、価格も同様に高くなります。
色収差補正レンズには、二色に対して二枚のレンズ群で補正をしたアクロマートと、三色に対して三枚のレンズ群で補正をしたアポクロマートがあり、当然ながら後者のほうが高額になります。
また、高級な屈折式望遠鏡には、色による屈折率のすくない特殊素材である蛍石(フローライト)を対物レンズに使用したものがありますが、数十万円から百万円ほどと、かなり高額になります。
実際の天体望遠鏡選び

Vixen 天体望遠鏡 ミニポルタ A70Lf
最低ラインの入門機がこちらです。このクラスだと月と大きい星雲はばっちり見えます。ただし、直径7cmクラスなので土星の輪とか木星の縞は無理です。そもそも経緯台なので、すぐ見失います。
ちなみに、メーカーランクはミザール<ケンコー=ミード<ビクセン<<ペンタックス=ニコンが一般的な評価です。ただし、ペンタックスとニコンの天体望遠鏡は車が買える値段になります。

Vixen 天体望遠鏡 ポルタII R130Sf
惑星観察がしたければ、直径130cmクラスの反射式望遠鏡がおすすめです。ただし、こちらも経緯台なので、天体を追い続けるのに精一杯で、ゆっくり観察はできないはずです。

MEADE 天体望遠鏡 EQM-70
赤道儀つきの最安値ランクがこちらです。直径7cmクラス屈折式と、やや本体が能力不足で、せっかく土星を捉えて追尾できても、輪が分離せず、茶色い楕円形にしか見えないでしょう。

MIZAR-TEC 天体望遠鏡 反射式 LTH-150SS
ちなみに、直径15cmクラス反射式・赤道儀天体望遠鏡が格安の場合もありますが、肝心の反射鏡の加工が難ありのものもありますで、5年もすれば曇ってきます。やはり、最低でもこちらのような前述のメーカーの製のものをおすすめします。

Vixen 赤道儀 AP赤道儀 AP-R130Sf
結局、自信を持っておすすめできるのはこのクラスからになります。ちゃんと天体観察をしたければ、このクラスからが入門機と言えるでしょう。直径13cmあれば、大気がよければ土星の輪だけでなく縞も見えます。また、木星はかなりシマシマに見えて感動するはずです。

ビクセン SXP・PFL-AX103S
耐久性やメンテに優れた屈折式天体望遠鏡の直径10cmオーバーはかなり高額になってきます。もちろん、このクラスだとレンズも高級補正レンズなので色にじみもわずかです。

Kenko 天体望遠鏡 NEW Sky Explorer SE200N
どうせ20万円以上出すなら、直径20cmクラスの反射式がおすすめです。ただし、やたら巨大になってくるので、観察に行くのがおっくうになるかもしれません。

CELESTRON 天体望遠鏡 OTA C9.25-XLT
直径20cmオーバーは、レンズと凹鏡を組み合わせてコンパクトにしたシュミットカセグレン式の独壇場ですが、中古車が買えるくらいの値段になってきます。
このクラスあたりから、ステップアップ買い替え需要がメインなので、鏡筒単体での販売が主流です。ちなみに、直径35cmクラスだとかなり高額になってきます。
天体望遠鏡の自作キット

天体望遠鏡はかなり高価なものですので、天体観測に興味を覚えたら、まずはこちらのように安価な自作キットで試してみるのも一つの方法です。また、天体学の基本である天体望遠鏡の仕組みも二種類(ケプラー式とガリレオ式)が理解できるのも利点です。
とくに、小学生低~中学年であれば、その天体観測への興味がどれくらい強まるかも試せます。あくまで安価なキットですので、性能は月面クレーターの観察レベルと考えてください。
小学生におすすめの天体望遠鏡

MIZAR 天体望遠鏡 屈折式 TS-70
自作キットでは物足りないけれど、高価な天体望遠鏡の購入はもう少し考えたい、という方は、こちらのような一万円以下の簡易天体望遠鏡で天体観測を体験してみるのもよいでしょう。
安価な簡易天体望遠鏡は数多くありますが、こちらは天体望遠鏡メーカー製なので安心できます。ただし、性能はやはり月面クレーター観察レベルです。
ここからは、国内外主要天体望遠鏡メーカーの主力製品を並べて紹介しますので、詳細は各リンク先でご確認ください。
初心者におすすめの60~70mm屈折式望遠鏡+経緯台

Vixen 天体望遠鏡 ポルタII経緯台シリーズ ポルタIIA80Mf

MEADE 天体望遠鏡 EQM-70 屈折式

MIZAR 天体望遠鏡 屈折式 80mm VH-8800
中級者におすすめの10~15cm反射式望遠鏡+赤道儀

CELESTRON 天体望遠鏡 130EQ 反射式 赤道儀式

MEADE 天体望遠鏡 EQM-114 ニュートン反射式

MIZAR-TEC 天体望遠鏡 反射式 LTH-150SS
上級者におすすめの20cm反射式望遠鏡+赤道儀

Kenko 天体望遠鏡 NEW Sky Explorer SE200N

Vixen 天体望遠鏡 反射式鏡筒 R200SS
マニアにおすすめのドブソニアン式望遠鏡

Sky-Watcher ドブソニアン望遠鏡 DOB8(S)

MEADE 天体望遠鏡 ライトブリッジ10 反射式 口径254mm
なお、直径の大きさを追求した半開放式の特殊な望遠鏡がドブソニアン式です。
大口径での土星の輪の見え方

なお、こちらの土星の写真は主鏡40cmのドブソニアンで撮影したものです。
各惑星観察におすすめの天体望遠鏡と選び方

ここからは、実際に観察対象になる各惑星や各星雲・星団をきちんと見るために、最低限のスペックを備えた天体望遠鏡を具体的に各メーカーからご紹介します。各天体望遠鏡の仕様などはリンク先ページでご確認ください。
月観察におすすめの天体望遠鏡

惑星ではありませんが、地球の衛星である月は地球に最も近い天体なので、かなり小口径の天体望遠鏡でもクレーターまで観察可能です。また、倍率も低くてすむので経緯台でも十分です。
水星観察におすすめの天体望遠鏡

水星は地球に比較的近い惑星ですが、大きさが小さいので中口径・高倍率の天体望遠鏡に手動の赤道儀が最低限の装備になります。
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金星観察におすすめの天体望遠鏡

金星は表面の雲の反射が強く、その模様などは観察することができません。小口径低倍率でも満ち欠けは観察できるので、小口径屈折式望遠鏡+経緯台で十分でしょう。
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火星観察におすすめの天体望遠鏡

火星は極部の極冠を観察できるかどうかが問題です。大口径中倍率での観察になりますので、赤道儀は必須です。
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木星観察におすすめの天体望遠鏡

木星観察のポイントは大赤斑と縞模様です。この二つを視認するためには大口径高倍率、赤道儀自動追尾が必要となります。
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土星観察におすすめの天体望遠鏡

土星の観察ポイントは、まずは本星と環の完全分離、そしてA環とB環の隙間であるカッシーニの間隙が観察できるかどうかです。このためには、大口径高倍率、赤道儀自動追尾が必要となります。
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天王星観察におすすめの天体望遠鏡

天王星はかなり遠い惑星で暗いので、面積のある天体であることを確認するのが精一杯です。このため、逆に大口径や高倍率は必要がありません。中口径+経緯台でも十分です。
海王星観察におすすめの天体望遠鏡

海王星はかなり遠い惑星で暗いので、面積のある天体であることを確認するのが精一杯です。このため、逆に大口径や高倍率は必要がありません。中口径+経緯台でも十分です。
星雲星団観察におすすめの双眼鏡
天体観測の時に望遠鏡以外に双眼鏡があると非常に便利です。天体望遠鏡で目的の天体を見つけるのは意外と難しく、双眼鏡でおおよその目星をつけておいてから天体望遠鏡を向けるとスムーズです。また、星雲・星団などの大きな観察対象は、双眼鏡のほうが両目で見える分、立体的に感じられ迫力があります。

双眼鏡はオペラグラス程度のものはあまり天体観測にはむきません。最低でもこのランクのレンズ直径(30mm)のものを選びましょう。

双眼鏡も天体望遠鏡と同じでレンズ直径に性能が左右されます。できれば、こちらのような50mmクラスのものを用意したいものです。

本格的に双眼鏡で天体観測をする場合は、こちらのような対空双眼鏡がおすすめです。レンズ直径が70mmあります。

レンズ直径125mmの本格的天体双眼鏡がこちらになります。並みの天体望遠鏡を遥かにしのぐ解像度で天体を見ることができます。
天体観測に便利な道具
最後に、天体観測に持っていくと便利な道具・グッズ類をご紹介します。

天体観測に必須なのが、こちらのような星座盤です。実際の星空だけでは目的の星座・天体を見つけるのが困難です。

天体観測は夜間なので、当然懐中電灯が必需品です。人間の目の構造上、赤色以外の光を見たあとはしばらく暗視能力が落ち、天体望遠鏡を覗いても対象が見づらくなります。
こちらのような、赤色に点灯できるLED懐中電灯が便利です。

冬の寒い天体観察に是非おすすめしたいのが、こちらの充電式カイロ+携帯チャージャー+LEDライトが一つになったアイテムです。ライト部分に赤いセロファンを巻くと、さらに天体観察むきですよ。
主な天体望遠鏡メーカー
付録情報として、国内で入手可能な主な天体望遠鏡のメーカーと公式ページをご紹介します。
信頼の国産メーカー・ビクセン
現在、国内天体望遠鏡シェアナンバーワンのビクセンは、古くから天体望遠鏡中心の光学メーカーとして知られています。
▼公式ホームページ
光学機器の名門・ケンコートキナー
カメラレンズで知られるトキナーと光学機器の老舗ケンコーが合併したメーカーです。合併後、双方の技術が融合し製品の質がランクアップしています。
▼公式ホームページ
ミード
ミードはドイツの有名な光学メーカーで、国内ではケンコートキナーが輸入代理を行っています。
▼公式ホームページ
国産品を安く・ミザール
東京の下町の工場から始まったメーカーで、よい製品をリーズナブルに提供するのがモットーの国産メーカーです。
▼公式ホームページ
マニア御用達・高橋製作所
高橋製作所は、天体ファンによる天体ファンのためのこだわりの天体望遠鏡を製作しているメーカーで、天体ファンなら知らない人はいません。とにかく、高品質です。
▼公式ホームページ
壮大な宇宙の映像
太陽系から銀河系まで天体の大きさを比較

なお、下記の記事は、天体の大きさを視覚的にわかりやすいよう画像や動画などの映像でご紹介した記事です。気の遠くなるような宇宙の壮大さが感じられると思いますので、ぜひ、ご一読ください。

