
スミスマシントレーニングはフリーウエイト(バーベル)筋トレの導入としても最適なトレーニング方法です。ジム初心者を卒業し、中級者ともなるとバーベル筋トレに興味が出てきますが、マシントレーニングとバーベルトレーニングの橋渡し・導入としておすすめのスミスマシン筋トレメニューをご紹介します。
スミスマシンとは?
ガイドレールに沿ってバーベルが動くマシン

スミスマシンとはこの画像のように、バーベルがマシンのラック部分に設けられたガイドレールに沿って上下運動をするマシンです。フリーウエイトトレーニングに近い感覚でトレーニングができる上、グラつきをマシンが支えてくれるので初心者や女性でも扱いやすく、ほとんどのトレーニングジムにも一台は設置されている人気のマシンです。
ガイドレールがあるため安全ということもあり女性や初心者に人気ですが、実はトレーニング上級者にとっても使い方によっては非常にメリットのあるマシンです。つまり、軌道のグラつきをマシンが支えてくれるので、バーベルを挙上することだけに集中できるため、バーベルトレーニングよりも高重量・高負荷で筋肉を追い込むことができます。
反面、スミスマシンだけでバーベルトレーニングをしていると、グラつきを抑える体幹インナーマッスルが育ちにくいというデメリットもありますので、フリーウエイトトレーニングと上手に組み合わせて使っていくのがベストです。
Wikipediaによるスミスマシンに関する記載
スミスマシン(Smith machine)は、筋力トレーニングを行う際に使用される器具である。重量トレーニングに使われ、バーベルがマシンに取り付けられ、固定されていることが特徴である。
バーベルが固定されていることから、フリーウエイトよりも高重量に挑戦しやすく、可動域は狭くなるがパワーラックと違い軌道も安定するので怪我をしにくい。
スミスマシンの種類
スミスマシンには、大きく分けて垂直軌道タイプとスラント軌道タイプの二種類が存在します。どちらもシャフトがレールに沿って動くという基本構造は共通していますが、軌道の角度の違いによって、筋肉への効き方や動作の自由度、関節への負担が大きく変わるため、目的に応じた使い分けが必要になります。
垂直軌道タイプ

垂直軌道タイプは、シャフトが完全に真上と真下に動くよう設計された最も標準的なスミスマシンです。軌道が固定されているため動作が安定しやすく、高重量を扱う際の安全性が高いという特徴があります。ベンチプレスやスクワット、デッドリフトなど、いわゆるBIG3を高重量で実施する際には、動作ブレが抑えられるメリットが大きく、狙った筋肉を確実に刺激したい場面でも効果を発揮します。一方で、軌道が完全に固定されているため、人によっては関節の自然な動線と合わず、肩や肘に負担がかかるケースもあります。また、体幹の安定性を使わずに済む構造であるため、深層筋を動員しにくいという側面もあります。
スラント軌道タイプ
これに対し、スラント軌道タイプは、シャフトがわずかに前後に傾いた軌道を描くよう設計されたモデルで、角度は機種によって異なります。わずかに斜めの軌道が加えられることで、フリーウエイトの動きに近い自然なバーベル軌道を再現しやすく、関節の動きにも馴染みやすいのが特徴です。特にベンチプレスでは、押し出しの軌道が身体の構造に沿いやすくなるため、大胸筋のストレッチや収縮を意識しやすく、インクラインベンチプレスでは大胸筋上部を狙ったトレーニングがよりスムーズになります。またスクワットでは、わずかな傾斜がヒップドライブを自然に起こしやすく、大臀筋やハムストリングスへの刺激が深く入ることもあります。ただし、垂直軌道に比べて安定性がやや落ちるため、高重量を扱う際には軌道の角度による押し返しを感じる場合があり、特定の種目とは相性が悪いこともあります。
2タイプの使い分け
どちらが優れているかは目的によって変わります。BIG3を高重量で行いたい場合や、動作ブレを最小限にして特定の筋肉に負荷を集中させたい場合には、垂直軌道タイプが適しています。一方で、関節への負担を減らしつつ、フリーウエイトに近い自然な感覚でトレーニングしたい場合、または大胸筋上部や広背筋などの“軌道の微妙な変化で効き方が変わる筋群”を狙う場合には、スラント軌道タイプのほうが扱いやすくなります。
スミスマシンは単純なマシンのように見えて、軌道の違いによって得られる刺激は大きく変化します。トレーニーがどの筋肉を優先的に鍛えたいのか、またどの重量帯を扱うのかによって、適したタイプが明確に分かれます。このため、どちらのタイプも特徴を理解したうえで、目的に応じて選ぶことが、効率的で安全なトレーニングにつながります。
筋トレBIG3とは
筋トレには、「それだけで全身のほぼ全ての筋肉が鍛えられる」と言われる「筋トレビッグ3」と呼ばれる種目がありますが、それはバーベルベンチプレス・バーベルデッドリフト・バーベルスクワットの3種類です。
スミスマシントレーニングでは、このBIG3種目をスミスマシンで行うことが可能で、これらがトレーニングの基本となります。
Wikipediaによる記載
ベンチプレス(bench press)は、上半身を鍛えるウェイトトレーニングの種目である。主に大胸筋、上腕三頭筋、三角筋前部が鍛えられる。パワーリフティング競技の三種目の1つである(ほかはデッドリフト、スクワット)。引用:Wikipedia「ベンチプレス」
デッドリフトとは、下背部・臀部・脚部を鍛える代表的なウェイトトレーニングの種目。パワーリフティング競技の3種目の1つである(ほかはベンチプレス、スクワット)。名称の由来はデッドウェイト(静荷重)をリフトアップすることから。主に広背筋、僧帽筋、脊柱起立筋、大臀筋、ハムストリングスが鍛えられる。引用:Wikipedia「デッドリフト」
スクワット(squat)はウエイトトレーニングの基本的な種目でBIG3の1つ(他は、ベンチプレス、デッドリフト)。直立した状態から膝関節の屈曲・伸展を繰り返す運動で、下半身、特に大腿四頭筋・下腿三頭筋・大臀筋・中臀筋などの筋力アップ、筋肥大に大きな効果を持つ。引用:Wikipedia「スクワット」
筋肉の名称と作用
各筋肉の構造や作用および起始停止・支配神経に関しては下記の専門サイトおよび学術文献を参照しています。

Skeletal Muscle: A Brief Review of Structure and Function(PDF)

身体を鍛えていく上で、まず理解したいのが全身の主な筋肉の名称と作用です。それぞれの筋肉の役割を知ることで、効率のよいトレーニングを行うことが可能になります。

女性がスミスマシンを使うメリット
女性にとってスミスマシンは、フリーウエイトよりも安全性が高く、なおかつ狙った筋肉を確実に刺激できるという点で、とても相性の良いトレーニングマシンです。とくに下半身のトレーニングでは、動作軌道がレールによって固定されるため、フォームのブレが少なく、筋肉に負荷を集中させやすいという特徴があります。スクワットでは、バーベルスクワットよりも軌道が安定するぶん、膝や腰に不安のある方でも動作に集中しやすく、初心者でも正しいフォームを維持しやすくなります。
また、女性は骨格の特性上、股関節の可動域が広い反面、腰椎が反りやすい傾向があり、フリーウエイトではフォームを崩しやすいことがあります。スミスマシンを使用することで、腰の反りすぎや膝の入り込みといったフォームの乱れを抑えることができ、自分の骨格に合わせた安定した姿勢でトレーニングができます。そのため、お尻の位置を上げるのや太もものシェイプアップなど、美容目的のボディメイクでは、高重量に挑戦しやすく、効きやすさという点でも非常に有利です。
さらに、スミスマシンは動作中のバランスをとる必要がないため、筋肉の出力そのものに集中しやすいメリットがあります。これは特にお尻のトレーニングで効果を発揮し、ブルガリアンスクワットやヒップスラストのような動作でも、フォームを安定させたまま狙った部位に負荷をかけられます。足を前後に大きく開く種目や、左右の安定性が問われる種目でも、マシンが軌道を補助してくれるため、女性にとって怪我のリスクを抑えつつ高強度トレーニングができる点は大きな利点です。
こうした特徴から、女性がスミスマシンを使うことは、単に安全にトレーニングできるというだけでなく、効率的に下半身をシェイプアップし、お尻の位置を上げるを目指し、全身を美しく整えるための有効なアプローチになります。フォームの安定、関節負担の軽減、負荷の集中、これらの要素が揃うことで、女性のボディメイクにおいてスミスマシンは非常に優れた選択肢になります。
大胸筋のスミスマシントレーニング
スミスマシンベンチプレス

いきなりバーベルベンチプレスにチャレンジするのは、多くの女性にとって敷居の高いものです。そのような場合は、バーベル感覚でトレーニングができるスミスマシンベンチプレスがおすすめです。
◆スミスマシンベンチプレスのやり方と動作ポイント
①ベンチに仰向けになり、肩甲骨を寄せ、80cm前後の手幅でシャフトをグリップし、足を踏ん張りブリッジを作って構える
②バーベルをラックアウトし、胸の真上まで水平移動させる
③肩甲骨を寄せたまま、ある程度筋力でコントロールしてシャフトを胸の上に下ろす
④肩甲骨を寄せたまま、腕を押し出しバーベルを元の位置まで上げる
⑤しっかりと肘を伸ばし、顎を少し引いて大胸筋と上腕三頭筋を完全収縮させる
◆ワンポイントアドバイス
ストリクトに効かせるためには、勢いをつけてシャフトをバウンドさせないようにすることと、腰を浮かせないようにすることが大切です。
ミスボディーフィットネス選手のポイント解説

「いきなりバーベルベンチプレスは不安だな…と感じる方はまずスミスマシンで基本フォームの練習から始めるといいと思います。真上からのし掛かる重りをしっかり受け止めて、それを押し戻す感覚に慣れましょう!
まずセーフティーバーを最適な場所にセットさえすれば、女性でも一人で不安なく練習できますよ。
安全の確保ができたらベンチ台に仰向けになり、シャフトを見つめましょう。シャフトには81cm幅のところに印が刻まれています。この辺りを握ったらバストトップまでスーッとシャフトを降ろし、また押し戻します。
シャフトを下ろした時、肘の角度がおよそ90℃になるように手幅を調整しましょう。」
是非、チャレンジしてみてください。
背筋群のスミスマシントレーニング
スミスマシンデッドリフト

スミスマシンデッドリフトはフリーウエイトの感覚で行えるマシントレーニングです。
膝をつま先より前に出さず、胸を張り腰を反らせる動作ポイントはバーベルデッドリフトと同様です。
◆スミスマシンデッドリフトのやり方と動作ポイント
①背すじを伸ばし、足を肩幅程度に開き、膝がつま先よりも前に出ないようにお尻を突き出し、足の外側でシャフトをグリップして構える
②まずは膝を伸ばす動作で初動を行い、ウエイトが床から浮いたら、肩甲骨を寄せながら立ち上がりシャフトを引き上げていく
③シャフトを引き上げたら、肩甲骨を寄せきり背筋群を完全収縮させる
④ある程度コントロールした速度で元に戻り、反動を使わずに再びバーベルルを引き上げていく
◆ワンポイントアドバイス
スミスマシンは軌道が垂直に固定されているので腰がシャフト重心から離れやすく、腰を痛める原因になりますので、バーベルデッドリフトよりもさらに足を前に置き、シャフトから身体が離れないようにすることが重要です。
スミスマシンベントオーバーロー

スミスマシンベントオーバーローはフリーウエイトトレーニングに近い感覚で背中シェイプエクササイズができるジムマシン筋トレです。
スミスマシンショルダーシュラッグ

スミスマシンショルダーシュラッグはフリーウエイトトレーニングに近い感覚で肩こり解消エクササイズができるジムマシン筋トレです。
三角筋のスミスマシントレーニング
スミスマシンショルダープレス

スミスマシンショルダープレスはバーベルトレーニングに近い感覚で行える三角筋の筋トレ方法です。
マシンのレールがウエイトのブレを止めてくれるので、バーベルより高重量で負荷をかけることができます。
◆スミスマシンショルダープレスのやり方と動作ポイント
①背すじを伸ばし、肩の高さでシャフトをグリップして構える
②背中が丸くならないように視線を上に向け、腕を上に押し出していく
③腕を押し出したら、腕をしっかりと伸ばし三角筋を完全収縮させる
④ウエイトに耐えながら、筋肉に効かせつつ元に戻る
◆ワンポイントアドバイス
三角筋は背筋や大胸筋に隣接しているため、肩甲骨を動かしてしまうと負荷がそれらの体幹表層筋に逃げてしまいますので、セット中は肩甲骨を動かさないことが大切です。
スミスマシンアップライトロー

スミスマシンアップライトローは動作にコツのいる三角筋トレーニングのなかでもテクニックがあまりいらず、さらにウエイトのぐらつきをマシンが支えてくれるので効率よく三角筋を鍛えることが可能な種目です。
◆スミスマシンアップライトローのやり方と動作ポイント
①背すじを伸ばし、腕を伸ばした位置でシャフトをグリップして構える
②肘を先行させて、肩甲骨を寄せないように気をつけて、シャフトを真上に引き上げていく
③シャフトを肩の高さまで引き上げたら、ウエイトに耐えながら筋肉に効かせつつ元に戻る
◆ワンポイントアドバイス
肩甲骨を寄せる動作をしてしまうと背筋群に負荷が逃げてしまうので注意してください。
上腕三頭筋のスミスマシントレーニング
スミスマシンナローベンチプレス

スミスマシンナローグリップベンチプレスは、上腕三頭筋を中心に大胸筋内側にも効果的なマシントレーニングです。
手幅を狭めたクローズグリップで不安定になりがちなバーベルを、マシンのレールが支えてくれるので、より高負荷で鍛えることが可能です。
ただし、軌道が一直線になるため、あまり手幅を狭めすぎると動作の逃げ場がなくなり、手首関節に負担がかかりますので注意が必要です。
◆スミスマシンナローグリップベンチプレスのやり方と動作ポイント
①ベンチに仰向けになり、肩甲骨を寄せ、60~70cm前後の手幅でシャフトをグリップして構える
②肩甲骨を寄せたまま、ある程度筋力でコントロールしてシャフトを胸の上に下ろす
③肩甲骨を寄せたまま、腕を押し出しバーベルを元の位置まで上げる
④しっかりと肘を伸ばし上腕三頭筋を完全収縮させる
◆ワンポイントアドバイス
肘を外に張り出すと上腕三頭筋短頭に、肘を絞って行うと上腕三頭筋長頭に効果があります。
下半身のスミスマシントレーニング
スミスマシンスクワット

バーベルトレーニングに近い感覚で大腿四頭筋を鍛えることのできるのが、スミスマシンを使ったスミスマシンスクワットです。
マシンがウエイトのブレを止めてくれるので、バーベルスクワットに比べ、より高重量で集中的に鍛えることが可能です。
◆スミスマシンスクワットのやり方と動作ポイント
①足を肩幅程度に開き、背すじを伸ばし、シャフトをかついで構える
②膝がつま先よりも前に出ないように気をつけ、お尻を突き出しながらしゃがんでいく
③太ももが床と平行になるまでしゃがんだら、反動を使わずに同じ軌道で立ち上がる
◆ワンポイントアドバイス
フリーウエイトでのスクワットと違い、軌道が垂直に固定されているため、膝への負担を避けるために、やや足を前においてマシンにもたれる意識で構えてください。
スミスマシンの歴史

スミスマシンの歴史は、1950年代にアメリカ西海岸で広がり始めたフィットネス文化の中で誕生しました。当時、大手ジムチェーンであるヴィック・タニー・ジムに勤務していたルディ・スミスという人物が、バーベルをレールに沿って上下させる装置を改良し、安全に高重量を扱えるトレーニングマシンとして完成させたことが始まりです。このため、現在の「スミスマシン」という名称は、ルディ・スミスの名前に由来しています。
ただし、ガイドレール付きのバーベルという発想そのものは、さらに前の1940年代にフィットネス界の先駆者ジャック・ラランによって考案されていました。ラランは、フリーウエイト特有のバランス維持の難しさによるケガのリスクを減らしつつ、高重量でのトレーニング効果を得られる装置を模索しており、そのアイデアが後にルディ・スミスの手によって実用化された形になります。
ラランの発想とスミスの改良が結びついたことで、現在につながるスミスマシンの原型が誕生しました。そのマシンはヴィック・タニー・ジムチェーンに導入され、当時としては画期的な「垂直軌道の固定式バーベル」として多くのトレーニーに受け入れられ、アメリカ全土に普及していきました。初期型のスミスマシンはパイプレールの中をシャフトが滑る構造で、安全フックが備えられていたため、フリーウエイトでは難しかった安全な高重量トレーニングが実現しました。
その後、1970年代〜1980年代のボディビル黄金期には、アーノルド・シュワルツェネッガーをはじめとするトップボディビルダーたちが集まるゴールドジムを中心に、スミスマシンがさらに広く普及していきます。この時代にはベアリングが強化され、フレーム剛性も高まり、滑らかに可動する現在のスミスマシンに近い仕様が整えられました。著名選手のトレーニング映像にも頻繁に登場したことで、一般のジムでもスミスマシンがスタンダードな設備として認知されていきました。
1990年代に入ると家庭用トレーニング器具の市場が拡大し、組み立て式で導入しやすいホームジム向けスミスマシンが登場します。耐荷重はジム用に比べるとやや低いものの、自宅で安全にトレーニングしたいユーザーの需要に応え、多くのメーカーが参入していきました。
さらに2000年代以降は、スミスマシンの多機能化が進みます。スミスマシンにケーブルマシンを組み合わせたタイプや、パワーラック機能を統合したハイブリッドモデルが登場し、スミスマシンは単なる“垂直軌道のマシン”ではなく、「高重量を安全に扱えるトレーニングステーション」として進化してきました。
このようにスミスマシンは、フリーウエイトの危険性を軽減しつつ、高重量に挑戦するための安全性と利便性を追求する中で発展してきた歴史があります。現在ではジムの標準設備として定着し、ホームジムでも最も人気の高い大型マシンのひとつとなっています。

