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ジュゴンとは?分布・形態・生態などを画像と動画をまじえて解説|沖縄や水族館でも見られる

ジュゴンは人魚伝説のモデルとなった海牛類に属する海生哺乳類で日本では沖縄に分布するほか水族館などでも見られます。その動画を含めて形態や生態について詳しく解説します。

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ジュゴンの分類と分布

カイギュウ目ジュゴン科ジュゴン属

ジュゴン(学名:Dugong dugon)は、カイギュウ目ジュゴン科ジュゴン属に分類される海生哺乳類で、現生種としては本種の一科一属のみとなっています。

ジュゴン(儒艮、Dugong dugon)は、ジュゴン目ジュゴン科ジュゴン属に分類される哺乳類。本種のみでジュゴン属を構成し、現生種では本種のみでジュゴン科を構成する。

引用:https://ja.wikipedia.org/ジュゴン

ジュゴンの系統分類と祖先

ジュゴンは現生の哺乳動物ではゾウに近い仲間で、ゾウと共通する祖先はデスモスチルス(上図:束柱目デスモスチルス科)と名付けられた、カバに似た海岸性の半水生陸上動物だったと推測されています。このデスモスチルス科の一種が、今から約7000~5000万年前(中新世中期~後期)に、捕食圧から逃れ、また、新たな餌資源を得るために海中へと進化進出したものが、海牛目全体の始祖になったと考えられています。

海牛目は、海岸付近の海草を主食とする食生から遠洋には進出せず、大陸の海岸線づたいに分布を広げていったと推測されています。

なお、海牛目の祖先の化石は日本国内(山形県および北海道)からも発見されており、ヤマガタダイカイギュウと名付けられました。

太平洋側・インド洋に分布するジュゴン

上の図の太平洋とインド洋の青い範囲が2007年時点でのジュゴンの分布域です。西はモザンビーク~マダガスカル島にはじまり、紅海・ペルシャ湾・インド沿岸・インドシナ半島沿岸・ボルネオ島周辺・ニューギニア島周辺・ニューカレドニア・バヌアツ近海にかけて分布しています。ジュゴンの分布北限は日本の沖縄諸島周辺で、南限はオーストラリア沿岸となっています。

古くはアフリカ大陸東側海岸~東シナ海~オーストラリアと広範囲に分布していましたが、現在は上図の海域のみでしか確認されていません。にしか分布していないといわれる。なお、紀元前の頃には地中海にも分布していたと推測されています。

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ジュゴンの形態

全長3m体重450kgで鼻を使って餌を掘り起こす

ジュゴンの全長は最大で3m、体重は450kgに達します。海生哺乳類の特徴として骨端閉鎖を起こさないため、長齢個体ほど体長が長くなります。体の色は灰色~肌色で腹面はやや淡い色をしています。全身には短い剛毛がでまばらに生えています。

鼻は下向きの円盤状をしており、これを使って海底の海草を掘り起こして摂食しますなお、海底にレールのように残された餌の食べ跡をジュゴントレンチと呼びます。

鼻の穴は吻端の前方に開いており、呼吸時以外は蓋がされる構造で海水の浸入を防いでいます。眼と耳は体躯に似合わず小さく、それぞれ頭部側面と頭部背面付近に位置しています。

ジュゴンにはゾウと同じ牙がある

意外と知られていない事ですが、ジュゴンには長さ15~20cmになる牙状の切歯が2本あり、ゾウと祖先を同じくする系統を偲ばせます。また、臼歯の数は6本です。

前肢の変化した胸ビレはしゃもじ形で、後肢は小さな痕跡骨が埋没するのみです。鰭ビレは切れ込みのある三角形で、近縁種のマナティーの丸形と異なり、見分けるポイントにもなります。

なお、繊維が多くて消化しづらい海草を主食とするため全長45mにもおよぶ長大な腸を有しています。

ジュゴンの生態

暖かく浅い海に住み海草を主食とする

ジュゴンは太平洋沿岸やインド洋沿岸の熱帯~亜熱帯にある海草の茂る砂地の浅海に生息しています。単独または母子で構成された数頭の小さな群れで生活しますが、オーストラリア沿岸では、時に数百頭にもなる群れを形成することもあります。

泳ぐスピードは通常3km/hですが、緊急時には20km/hで遊泳することもあります。また、潜水時間は1分30秒前後と海生哺乳類としては短い部類に入りますが、最長で6分40秒の記録もあります。なお、潜水深度は水深11~12mですが、水深30m以深でジュゴントレンチが発見された事例も報告されています。

食性は植物食(海草食で海藻は食べない)で、その対象はウミジグサ属・ベニアマモ属・ウミヒルモ属・リュウキュウスガモ属など比較的多岐にわたります。基本的に昼行性で日中に採食行動をとりますが、時に夜間にも採食を行います。

摂食量は1日に体重の15%前後が必要と推測されており、摂取した海草類は一週間ほどをかけてゆっくりと消化吸収されます。

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沖縄や水族館のジュゴン

ジュゴンが飼育されている水族館は、国内では鳥羽水族館のみで、海外ではシンガポール・アンダーウォーターワールド、インドネシア・シーワールド、オーストラリア・シドニー水族館となります。

また、野生のジュゴンが見られるのは、国内では沖縄諸島(極めて稀)のみで、海外ではオーストラリアでジュゴンウォッチツアーなどが開催されています。

野生のジュゴン動画

非常に貴重な野生ジュゴンの水中映像

こちらが、野生のジュゴンを水中からたらえた映像です。

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ジュゴンと人魚伝説

洋の東西を問わず伝承として語られるのが「人魚」ですが、このモチーフとなったのがジュゴンであるという説は少なからず支持されています。

幼獣を抱きかかえて授乳するジュゴンの姿などは、とても人間臭く、擬人化から人魚伝説へと発展したのではないかと推測されています。

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