
ウォンバット(Vombatus ursinus)の分類・分布・形態・生態や特徴について、30年以上の生物学学芸員の実務経験を持つ筆者が解説します。
ウォンバット(Vombatus ursinus)の分類
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動物界(Animalia)脊索動物門(Chordata)哺乳綱(Mammalia)双前歯目(Diprotodontia)ウォンバット科(Vombatidae)に属し、種小名はVombatus ursinusです。ウォンバット科はオーストラリア固有の地上性有袋類で、現生では3種のみが知られています。本種はその中で最も広く分布する種で、頑丈な体と掘削生活への高度な適応を示す点で有袋類の中でも独特な進化を遂げています。
ウォンバット(Vombatus ursinus)の分布

オーストラリア南東部およびタスマニア島に分布し、森林、ユーカリ疎林、草原、山地の低木地帯などに生息します。土壌が柔らかく巣穴を掘りやすい環境を好み、乾燥地帯や湿潤な高山帯には少ない傾向があります。夜行性で、昼間は自ら掘った長い巣穴の中で休息します。生息地の分断や交通事故、外来捕食者の影響を受ける地域もあります。
ウォンバット(Vombatus ursinus)の形態
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体長は約80〜120cm、体重は20〜35kgに達するずんぐりした体形を持つ地上性有袋類です。四肢は短く強靭で、前肢には大きく湾曲した爪があり、土壌を掘削するのに適しています。尾は極めて短く外見上ほとんど見えません。頭骨は幅広く、臼歯は草本類をすり潰すのに適した構造を持ち、歯はげっ歯類のように伸び続けます。後躯には厚い軟骨質の皮膚が発達しています。
ウォンバット(Vombatus ursinus)の生態
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主に夜間に活動し、草本類や根、樹皮など繊維質の多い植物を食べる完全な草食性です。長大な消化管によって栄養価の低い餌から効率よくエネルギーを得ます。単独生活を基本とし、巣穴は数十メートルに及ぶこともあります。外敵に追われた場合は巣穴に逃げ込み、硬い後躯で入口を塞いで身を守る行動が知られています。
ウォンバット(Vombatus ursinus)の特徴
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掘削生活に特化した骨格と筋肉構造、そして立方体に近い形状の糞を排出することで知られます。この糞は縄張り表示に利用され、転がりにくい形状は岩の上などに安定して残るためと考えられています。育児嚢は後方に開く構造で、掘削時に土が入りにくい適応を示します。低代謝で省エネルギー型の生活史も本種の重要な特徴です。
ウォンバット(Vombatus ursinus)が見られる日本や世界の動物園・水族館
日本では長野市茶臼山動物園で飼育展示が行われており、国内でウォンバットを観察できる数少ない施設となっています。海外ではオーストラリア各地の動物園や野生動物保護施設で一般的に見ることができ、夜行性展示や巣穴構造を再現した展示によってその生態が紹介されています。タスマニアでは野生個体を観察できる地域もあります。
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