この記事は30年以上にわたり博物館に務める生物学の学芸員が執筆した専門記事です。

【クマ(熊)の種類一覧図鑑&フリー画像写真集】日本と世界に分布する全種を解説

世界に分布するクマの全種類の特徴・生態を生物学の博物館学芸員である筆者が写真つきで解説します。

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クマってどんな動物?

世界の種類を全部紹介


画像:http://moziru.com/

クマは世界に8種類が分布しています。そして高緯度地方ほど大きくなる明らかな傾向がありますが、これは体積と表面積の比率によると考えられています。

身体が大きくなると表面積あたりの体積が増えるので保温性が高まり、高緯度=寒い地方ほど有利になり、身体が小さくなると放熱性が高まり低緯度=暑い地方ほど過ごしやすくなるからです。

クマ(熊)は、食肉目クマ科(クマか、Ursidae)の構成種の総称。イヌ科やアライグマ科と比較的類縁関係が近いとされる

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/クマ

クマの系統樹

現生クマの系統樹(類縁関係)をあらわしたのがこちらの図です。これを見れば、おおよその関係性・進化の過程が分かります。

世界に分布するクマの種類は以下の通りです。

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ホッキョクグマ

学名:Ursus maritimus Phipps

英名:Polar bear

北極地域に生息する最大のクマで、250cm600kgにもなります。肉食傾向が強い種類です。

シロクマってどんな生き物?

正式にはホッキョクグマと呼ばれ、北半球極地付近のユーラシア大陸や北アメリカ大陸に分布しています。

最大で体長2.5m体重600kgの記録もありますが、地球温暖化の影響により小型化が進むとともに、生息数も減少しています。

ホッキョクグマ(北極熊、学名:Ursus maritimus)は、哺乳綱食肉目クマ科クマ属に分類される食肉類。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ホッキョクグマ

ホッキョクグマの分布

ホッキョクグマは北アメリカ大陸北部およびユーラシア大陸北部の北極圏に分布しています。

ホッキョクグマの餌

ホッキョクグマは完全な捕食獣・肉食性で、主にワモンアザラシ・アゴヒゲアザラシを捕まえて食べるほか、ズキンアザラシ・タテゴトアザラシも捕食します。

ホッキョクグマの寿命

ホッキョクグマの寿命は20~30年です。

ホッキョクグマの繁殖

ホッキョクグマの繁殖期は3~6月で、約200~250日の妊娠期間の後、11~翌年1月に1~4を出産します。

ヒグマ(グリズリー)

学名:Ursus arctos

英名:Brown bear|Grizzly bear

ユーラシア大陸~北米大陸の高緯度地域に生息するクマで、最大250cm500kgになります。雑食性ですが肉食傾向はかなり強い種類です。

ヒグマとはどんな生き物?

ヒグマ(羆、緋熊、樋熊、学名:Ursus arctos)は、クマ科に属する哺乳類である。ホッキョクグマと並びクマ科では最大の体長を誇る。また、日本に生息する陸棲哺乳類(草食獣を含む)でも最大の種である。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒグマ

ヒグマの分布

ヒグマはヨーロッパからアジアにかけてのユーラシア大陸と北アメリカ大陸の針葉樹林を中心とした森林地帯に分布しています。

ヒグマの餌

ヒグマは雑食性ですが肉食傾向が強く、シカ・イノシシからネズミまで大小の哺乳類、サケ・マスといった魚類のほか果実などを主に食べています。

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アメリカグマ

学名:Ursus americanus

英名:American black bear

北米大陸の中緯度地域に生息するクマで、200cm400kgになります。植物食傾向の強い雑食性で、ツキノワグマに比較的近縁です。

アメリカグマとはどんな生き物?

アメリカグマ(Ursus americanus)は、食肉目クマ科クマ属に分類されるクマ。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/アメリカグマ

アメリカグマの分布

アメリカグマは北アメリカ大陸北部を中心に、ヒグマ(グリズリー)を避けるように森林部に分布しています。

アメリカグマの餌

アメリカグマは植物食傾向の強い雑食で、果実・種子・草・昆虫・魚類・動物の死骸を食べ、あまり捕食性は強くありません。

アメリカグマの繁殖

アメリカグマの繁殖期は5~7月で、妊娠期間は2か月ですが着床遅延するため、翌年の1~2月に1~5頭を出産します。

ツキノワグマ

学名:Ursus thibetanus

英名:Asian black bear

ユーラシア大陸の中緯度地域に生息するクマで、180cm120kgほどの中型クマです。植物食傾向が強い雑食性です。

ツキノワグマとはどんな生き物?

ツキノワグマ(月輪熊、学名: Ursus thibetanus)は、哺乳綱食肉目クマ科クマ属に分類される食肉類。別名アジアクロクマ、ヒマラヤグマ。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ツキノワグマ

ツキノワグマの分布


ツキノワグマは東アジア~東南アジア~西アジアと非常に広い範囲に分布しています。

ツキノワグマの餌

ツキノワグマは雑食性で、植物の果実・芽といった植物質のほか、小型脊椎動物・昆虫・各種無脊椎動物などを食べます。

ツキノワグマの繁殖

ツキノワグマは秋に交尾し、翌年の冬~早春にかけて出産します。

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ヒグマとツキノワグマの違い

日本に生息するクマはヒグマとツキノワグマの二種類ですが、分類学的背景、生態、行動、生息環境など、多くの点で大きく異なっています。ここでは、生物学の視点から両者の違いを丁寧に解説します。


分類学的な違い

ヒグマ(Ursus arctos)はヒグマ属に分類され、ホッキョクグマやアメリカグマなどと比較的近縁な系統に含まれます。

一方、ツキノワグマ(Ursus thibetanus)はツキノワグマ属とされ、ヒグマ属とは属レベルで異なる分類群に位置づけられています。

両者は約200〜300万年前の更新世前期〜中期に分岐したと考えられており、遺伝的距離も明確に存在します。同じクマ科であっても、異なる進化史をたどってきた動物種なのです。


形態学的な違い

ヒグマはクマ科の中でも非常に発達した筋群を持ち、とくに前肢周辺の筋肉(僧帽筋・上腕三頭筋・広背筋など)が顕著に発達しています。肩峰部が盛り上がる“肩峰隆起”はヒグマの特徴で、重い倒木の移動や土壌掘削、捕食活動に適応した形態です。

ツキノワグマはヒグマに比べ筋量が控えめで、肩峰隆起もあまり発達しません。体重や体長も小柄で、骨格の比率も軽量化している点が特徴です。

また、頭骨形態も異なり、ヒグマは大きく頑丈な頭骨と強い矢状稜を持つのに対し、ツキノワグマはより細身で咬頭も小さめです。


食性と消化生理の違い

ヒグマは高度な雑食性を示し、北海道ではサケなどの魚類に強く依存する時期があります。季節によって食性が大きく変化し、時に大型哺乳類の捕食や死肉利用も行います。

ツキノワグマは植物質への依存度が高く、堅果類(ブナ・ミズナラ)や果実、草本類を主要な食物としています。歯の形態にも植物食寄りの特性が見られます。


行動生態の違い

ヒグマの行動圏は非常に広く、オスでは数百平方キロメートルに達することもあります。行動圏の重複を許容しつつも、繁殖期や餌場では高い攻撃性を示すことが知られています。

ツキノワグマはヒグマより行動圏が狭く、森林に強く依存した生活を送ります。警戒心が強く、人間を避ける傾向が顕著ですが、母子個体では防衛行動が強くなるなど、状況に応じて攻撃性が高まる場合があります。


生息環境・分布の違い

ヒグマは寒冷地や亜寒帯の針葉樹林・広葉樹林に適応した種で、日本では北海道にのみ生息しています。

ツキノワグマは温帯の落葉広葉樹林に生息し、本州と四国に広く分布しています。九州ではほぼ絶滅したと考えられています。


人間との軋轢・危険性の違い

ヒグマは体格・筋力・攻撃性のすべてが高く、遭遇した場合の危険性は極めて高いものです。北海道ではヒグマによる深刻な事故が毎年報告され、野生動物管理上の重要課題となっています。

ツキノワグマは通常は人間を避けますが、餌不足の年や母子個体との遭遇では攻撃的になることがあります。体格は小型でも、決して安全というわけではありません。

ジャイアントパンダ

学名:Ailuropoda melanoleuca

英名:Giant panda

中国の一部地域にのみ分布する中型クマです。笹を主食にしていますが、小動物や昆虫なども捕食します。150cm150kgほどになります。

▼詳細記事

【パンダ種類図鑑】現生2種と絶滅化石種を博物館学芸員が画像つきで解説

ナマケグマ

学名:Melursus ursinus

英名:Sloth bear

インド大陸に分布する190cm150kgほどにな

るクマです。シロアリを主食にしていますが、花や果実なども食べる雑食性です。

ナマケグマとはどんな生き物?

ナマケグマ(懶熊、学名: Melursus ursinus)は、哺乳綱ネコ目(食肉目)クマ科ナマケグマ属に分類されるクマ。本種のみでナマケグマ属を構成する。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ナマケグマ

ナマケグマの分布


ナマケグマはインド亜大陸を中心にスリランカにも分布しています。

ナマケグマの餌

ナマケグマは主にシロアリを食べますが雑食性で、シロアリ以外の昆虫・鳥類の卵といった動物質のほか、花・果実蜂蜜といった植物質も食べます。

ナマケグマの繁殖

ナマケグマの妊娠期間は6~7ヶ月で、一度に2頭を出産します。

マレーグマ

学名:Helarctos malayanus

英名:Malayan sun bear

東南アジアに分布する150cm70kgのクマ類最小種で雑食性をしています。

マレーグマとはどんな生き物?

マレーグマ (馬来熊、学名:Helarctos malayanus) は、哺乳綱食肉目クマ科マレーグマ属に分類される食肉類。本種のみでマレーグマ属を構成する。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/マレーグマ

マレーグマの分布


マレーグマはインド亜大陸~東南アジア(インド・インドネシア・カンボジア・中華人民共和国南西部・タイ・バングラデシュ・ブルネイ・ベトナム・マレーシア・ミャンマー・ラオス)に広く分布しています。

マレーグマの餌


マレーグマは雑食性で、トカゲ・鳥類・鳥卵・小型哺乳類・昆虫類といった動物食のほか、果実や植物の若芽や根など植物質も食べます。

マレーグマの繁殖

マレーグマの妊娠の期間は96日間で、一度に2匹を出産します。

メガネグマ

学名:Tremarctos ornatus

英名:Spectacled bear

南米大陸に分布しており、南半球唯一のクマ類で、200cm200kgと比較的大型です。植物食傾向が強い雑食性です。

メガネグマとはどんな生き物?

メガネグマ(眼鏡熊、Tremarctos ornatus)は、哺乳綱ネコ目(食肉目)クマ科メガネグマ属に分類されるクマ。現生種では本種のみでメガネグマ属を構成する。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/メガネグマ

メガネグマの分布


メガネグマは南アメリカ大陸北西部(エクアドル・コロンビア・ペルー・ベネズエラ・ボリビア)に分布しています。

メガネグマの餌

メガネグマは植物食傾向の強い雑食性をしており、果実のほか木の葉・樹皮といった植物質、昆虫・小型哺乳類なども食べます。

メガネグマの繁殖

メガネグマの妊娠期間は160~220日で1回の出産で1~3頭を産みます。

ホラアナグマ(絶滅種)


学名:Ursus spelaeus

英名:Cave bear

ホラアナグマはヨーロッパ、アジア南西部に生息していた大型種で2万4千年前に絶滅しました。雄の体重は350~600kgあったと推測されています。

絶滅危惧種の現状

クマ科に属する現生8種のうち、複数種が国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧カテゴリに指定されています。これらの種は、気候変動や生息地の喪失、違法な狩猟、餌資源の減少など複合的な要因により、個体群の維持が困難になっているのが現状です。ここでは、生態学・保全生物学の視点から、絶滅の危険にさらされているクマ達の現状を解説します。


ホッキョクグマ(Ursus maritimus)の危機

ホッキョクグマは IUCN によって「危急(Vulnerable)」に分類されています。最大の要因は海氷の減少です。温暖化により北極海の海氷が縮小し、主要な狩猟対象であるアザラシ類の捕獲が難しくなっています。

海氷の消失は、狩猟効率の低下、長距離移動の増加によるエネルギー消耗、母グマの繁殖成功率低下を引き起こし、個体群動態に深刻な影響を与えています。


ナマケグマ(Melursus ursinus)の危機

南アジアに生息するナマケグマは「危急(Vulnerable)」に分類されています。主な脅威は生息地の大規模な減少と人間による影響です。森林伐採や農地開発により本来の生息環境が分断され、個体群が孤立化する傾向があります。

また、養蜂家との軋轢や農作物への加害が問題視され、人間側からの駆除が進んだ地域もあります。


メガネグマ(Tremarctos ornatus)の危機

南米アンデス山脈に生息するメガネグマは「危急(Vulnerable)」に分類されています。生息地であるアンデスの雲霧林が農地転換や森林伐採により縮小し、個体群分布が高度方向・地域方向の両面で制限されています。

生態学的には樹上生活に適応した貴重なクマであり、その消失は地域生態系への影響が大きいと考えられています。


マレーグマ(Helarctos malayanus)の危機

東南アジアに生息するマレーグマは「危急(Vulnerable)」に分類されています。森林伐採やパーム油産業の拡大によって熱帯雨林が急速に失われ、野生個体群が減少しています。

さらに、幼獣が「ペット目的」で違法に捕獲される問題も深刻で、保全活動を複雑化させています。


ツキノワグマ(各地域個体群)について

ツキノワグマは種全体としては「低リスク(LC)」扱いですが、地域個体群は絶滅の恐れが高いケースがあります。特に、中国の一部地域、ヒマラヤ山麓、東南アジア北部では個体群が急速に縮小しており、局所的な絶滅が懸念されています。

日本では本州の個体群は比較的安定しているものの、四国では「絶滅寸前」とされ、長期的な保全活動が必要とされています。


人間活動と気候変動の影響

クマ類の絶滅リスクは、単一の要因ではなく複数の人為的要因が重なった結果です。

主な脅威は次の通りです。

・生息地の消失・分断化

・違法狩猟・密猟

・農作物被害を理由とした駆除

・気候変動による餌資源の減少

・遺伝的多様性の低下と個体群の孤立

これらが複合的に作用し、個体群動態に長期的な影響を及ぼしています。

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