
斜め懸垂は、懸垂が苦手な筋トレ初心者や女性でも簡単に行える背筋の総合トレーニングです。その自宅で机を使った2種類のやり方を動画をまじえて解説します。
斜め懸垂が効果のある筋肉部位
各筋肉の構造や作用および起始停止・支配神経に関しては下記の専門サイトおよび学術文献を参照しています。

Skeletal Muscle: A Brief Review of Structure and Function(PDF)
広背筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止

読みかた:こうはいきん
英語名称:latissimus dorsi muscle
部位詳細:上部|下部
起始:下位第6胸椎~第5腰椎の棘突起・肩甲骨下角第9~12肋骨|正中仙骨稜・腸骨稜後方
停止:上腕骨小結節稜
僧帽筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止

読みかた:そうぼうきん
英語名称:trapezius muscle
部位詳細:上部|中部|下部
起始:後頭骨上項線・外後頭隆起・頚椎棘突起|第7頚椎・第1~3胸椎棘突起|第4~12胸椎棘突起
停止:肩甲棘・肩峰
上腕二頭筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止

読みかた:じょうわんにとうきん
英語名称:biceps
部位詳細:長頭|短頭
起始:肩甲骨関節上結節|肩甲骨烏口突起先端
停止:橈骨粗面
斜め懸垂は、僧帽筋・広背筋・上腕二頭筋などの上半身の引く筋肉に効果があります。
順手斜め懸垂では、広背筋→僧帽筋→上腕二頭筋の順に効果があり、逆手斜め懸垂では上腕二頭筋→僧帽筋→広背筋の順に効果的です。
順手斜め懸垂の動画とやり方
順手斜め懸垂は、このように机の下に潜り込んで行うことができます。胸を張り、身体を持ち上げながら肩甲骨を寄せることで背筋群が完全収縮します。
◆斜め懸垂のやり方と動作ポイント
①肩幅よりも広い手幅でバーをグリップし、背すじを伸ばして構える
②肩甲骨を寄せながら、腰を曲げたりお腹を突き出したりせずに体を引き上げていく
③身体を引き上げたら、肩甲骨を寄せきり、やや顎を上げて背筋群を完全収縮させる
④コントロールした速度で身体を下ろし、反動を使わずに再び身体を引き上げる
◆ワンポイントアドバイス
顎をバーより上に出すのではなく、バーに胸をつけにいく軌道で動作を行い、背筋群を完全収縮させることが重要です。
逆手斜め懸垂の動画とやり方
逆手斜め懸垂は、先ほどとは逆に身体を構えることで行うことが可能です。あまり肩甲骨を寄せずに行うと上腕二頭筋に、肩甲骨を寄せて行うと僧帽筋に効果的です。

当サイト執筆者は、運営しているクラブチームジム「FutamiTC」で日常的にトレーニング指導を行っており、本記事の内容も実際の指導現場で得た経験をもとにフォームのポイントやアドバイス点をまとめています。
ジムトレーナーとしての実際の指導ポイント
トレーニング動作と首の連動性

トレーニングフォーム全般において重要となるのは、実施する種目の動作と首の位置関係を適切に保つことです。特に、身体の前側の筋群(大胸筋・三角筋・上腕三頭筋・大腿四頭筋など)を収縮させる局面では、動作フィニッシュで軽く顎を引き、首を安定させることが有効です。
一方で、身体の後ろ側の筋群(広背筋・僧帽筋・上腕二頭筋・脊柱起立筋・ハムストリングスなど)を収縮させる局面では、動作フィニッシュで首の位置をわずかに後方へ誘導し、顎の角度を適切に調整することで動作が安定します。
トレーニング動作と呼吸

トレーニング動作における呼吸タイミングも重要な要素です。一般に、筋肉は息を吐く局面で収縮が高まり、息を吸う局面で弛緩しやすくなります。そのため、動作フィニッシュの位置では息をしっかり吐いて筋活動を安定させ、いったん動作を止めてから息を吸い、元の姿勢へ戻る流れを作ることが有効です。
それでは、次の項目では、実際に筆者がジムトレーナーとして運営ジムで選手に指導している本種目の具体的な動作ポイント・フォームについて解説します。
本種目の具体的な動作ポイント・フォーム

斜め懸垂は男性にとってはそれほど負荷の高いトレーニングではありませんので、しっかりと効かせるためには動作スピードを落とし、身体を引き上げる時も下ろす時もゆっくりとコントロールして動作を行うことが大切です。
斜め懸垂の順番と回数設定
ターゲットにする筋繊維に最適な反復回数

筋肉を構成している筋繊維には主に三種類があり、それは、筋繊維TYPE2b(速筋|FG筋)、筋繊維TYPE2a(速筋|FO筋)、筋繊維TYPE1(遅筋|SO筋)で、それぞれの特徴と鍛えるのに適切な反復回数は以下の通りです。
筋繊維TYPE2b(速筋|FG筋)
筋肥大を目的とした筋力トレーニングを実施する場合は、筋肥大しやすい特性を持つ「筋繊維タイプ2b(短時間に爆発的な収縮をする筋繊維)」を対象として行います。具体的には8~10回前後の反復動作で限界がくる負荷設定で筋力トレーニングを実施します。
筋繊維TYPE2a(速筋|FO筋)
体力作りを目的とした筋力トレーニングを実施する場合は、中程度に筋肥大する特性を持つ「筋繊維タイプ2a(持久要素のある瞬発的な収縮をする筋繊維)」を対象として行います。具体的には12~15回前後の反復動作で限界がくる負荷設定で筋力トレーニングを実施します。
筋繊維TYPE1(遅筋|SO筋)
筋肥大を伴わない筋力トレーニングを実施する場合は、ほぼ筋肥大せずに緊密度が向上する特性を持つ「筋繊維タイプ1(持久的に収縮をする筋繊維)」を対象として行います。具体的には20回以上の反復動作で限界がくる負荷設定で筋力トレーニングを実施します。
トレーニング種目を実施する順序
トレーング種目を実施する順序は、コンパウンド種目(複数の筋肉と関節を動かす多関節運動種目)を先に行い、その後でアイソレーション種目(単一の筋肉と関節を動かす単関節運動)を行うのが基本です。また、複数のコンパウンド種目・アイソレーション種目を実施する場合は、それぞれ使用重量の高い種目から先に行います。

斜め懸垂は背筋の複合関節種目なので、カール系など上腕二頭筋の単関節種目の前に行ってください。
また、適切な1セットの負荷回数設定は以下の通りです。
○筋肥大トレーニング:6~10回
○通常トレーニング:15回前後
○シェイプアップ筋トレ:20回以上
本種目のポイントまとめ
筋肉への効果と役割
インバーテッドロウは広背筋や僧帽筋、菱形筋を鍛える上半身の引く運動です。上腕二頭筋や前腕、回旋筋などの補助筋にも効果があります。背中の引く力・筋力全般を高めることで姿勢改善や背中の安定性強化にもつながります。
正しいフォームと注意点
体はかかとから肩まで一直線を保つように意識し、腰が落ちたり反ったりしないように注意します。バーを引き上げる際は肩甲骨をしっかり寄せて胸をバーに近づけるようにします。降ろすときもコントロールをきかせてゆっくり動作し、勢いに頼らないことが大切です。肘は外に張らず、体側に近い角度を保つと安全性が高まります。
呼吸と動作のテンポ
身体を引き上げるときに息を吐き、降ろしてから息を吸うようにします。動作速度をゆっくりにすることで筋肉への張力を長時間保持でき、トレーニング効果を高められます。
強度調整とバリエーション
足を高い台に置いたりバーの高さを変えたりすることで負荷を調整できます。初心者は膝を曲げたり足の角度を浅くすることで負荷を下げられます。上級者は動作中に一時停止したり、テンポを変えたりして負荷を増やせます。グリップの種類を変えることで狙う筋肉への負荷比率を調整することも可能です。
回数設定
筋力や筋肥大を狙う場合は1セットあたり8から12回を目安に3セット行うと効果的です。持久力を鍛えたい場合は12回から15回程度でも構いません。トレーニングの終盤に行うことで、疲労状態でも背中をしっかり刺激できます。
次のステップと応用
インバーテッドロウは懸垂へのステップアップ種目として有効です。す。
安全性と注意点
腰を反らせたり体幹が崩れた状態で行うと腰や背中に余分な負荷がかかります。腕の幅や肘の角度にも注意して、肩に無理な負荷をかけないようにします。初心者は徐々に負荷を上げるようにすると安全です。前腕や手首に痛みが出る場合は、グリップを変えたり無理のない範囲で行うことが大切です。
懸垂の記事一覧
懸垂40種大全
懸垂の女性向きやり方
懸垂の回数設定
懸垂の実施頻度
懸垂ができない場合
筋肉の名称と作用

身体を鍛えていく上で、まず理解したいのが全身の主な筋肉の名称と作用です。それぞれの筋肉の役割を知ることで、効率のよいトレーニングを行うことが可能になります。
▼筋肉名称デジタル図鑑
【筋肉名称デジタル図鑑】各部位の名前・作用・筋トレ方法(鍛え方)
さまざまな筋トレメソッド

筋トレ効果を高める各種のメソッド・トレーニング方法を詳細解説したものが下記の記事です。刺激を変えたい、さらに追い込みたいときなどに是非ご活用ください。
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身体を鍛えたら食事にも気を使う

筋トレの効果を高めるためには、トレーニングだけでなく食事や栄養に関する基礎知識が欠かせません。下記の記事では、三大栄養素の基本から、目的別の食事設計、具体的な食品例に加えて、筋肥大期と減量期における実践的な食事レシピまでを解説しています。
▼筋トレの効果を高める食事
