パワーベルトのピンタイプ式|1ピンも2ピンもおすすめしない理由=安いだけがメリットで使いにくいし薄い

トレーナーをしていると、よく「ピン式パワーベルトは1ピン式と2ピン式とどっちがおすすめですか?」と聞かれますが、はっきりとこう答えます。

ピン式ベルトは、薄い=安いのが魅力なだけで、はめにくいし外しにくいし、そもそも構造的に固定力が弱いので全くおすすめしません。そして、ピンがすぐ壊れるし、と。

そこで、今回は自身が長年競技者としてトレーナーとして、さらには近年では製品の設計・製作者としてパワーベルト・トレーニングベルトに関わってきた経験から、ピン式のパワーベルト(トレーニングベルト)について解説していきます。

執筆者・監修者・運営者情報
筆者は、スポーツ競技の元日本代表としての経験に加え、博物館施設の生物学学芸員として30年にわたり生物の筋肉構造・作用にも知見を積み重ねてきました。さらにその後は設備管理責任者として大型機械設備の構造解析・運用・安全管理を担当し、支点構造や負荷伝達といった工学的知見も蓄積しています。このように「競技者としての経験」「学芸員としての知識」「工学的な構造理解」の三面に精通した上で、本記事の解説を行っています。

ピン式パワーベルトとは?

1ピン・2ピンの構造的特徴

ピン式パワーベルトは、穴にピンを通して固定する古典的な方式のトレーニングベルトです。構造がシンプルなため価格帯が安く、1ピンタイプと2ピンタイプに分かれています。

しかし、どちらの方式も構造的に明確な限界があり、特に高重量トレーニングでは使いにくさが目立ちます。ピンを抜く際にベルト全体を大きく曲げる必要があるため、扱いやすさの面でレバー式・フックバックル(クイックリリース)式よりも確実に劣ります。

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ピン式をおすすめしない最大の理由

厚くできない構造のため実質8mmが限界

ピン式は、ピンを抜く際にベルトを大きく反らせて変形させる必要があります。そのため、10mmや13mmのような競技レベルの厚みでは人の腕力では十分に曲げられず、ピンが抜けにくくなります。

腹圧がかかる高重量のベンチプレス・デッドリフト・スクワットなどでは、ベルトが膨張して穴周囲のテンションがさらに強くなり、トレーニングセット後に抜けなくなるケースもけっこうあります。

ピンタイプ式ベルトは、このような構造欠陥を持つ構造上、厚み8mm前後が実用限界で、これでは中級者以上の高重量トレーニングでは十分な腹圧が得られません。

締める力が腕力に依存し強く締められない

レバーアクションベルトがテコを使って強力に締め付けるのに対し、ピン式はユーザー自身の腕力で穴位置までベルトを引き寄せる必要があります。

そのため、十分な圧力がかけられない、毎回締めるのが苦しいといった問題が発生しやすく、高重量帯では腹圧の安定性に明確な差が出ます。

外しにくいのが最大の欠点

トレーニング時に腹圧でベルトが膨張すると、ピンが穴に深く食い込み、セットが終わったあとに一人では外せなくなることがあります。

特に高重量セットだと、外せなくなることがある、ではなく「ほぼ一人で外すのは無理ゲー」状態になります。

実際に、ジムで周囲の人にピンを抜いてもらっている光景がよく見られますが、これは使用者の問題ではなく、ピン式の構造的な限界によるものです。

そのような光景を見るたびに「フックバックル式かレバーアクション式を買えばいいのにな、、、」と思ってしまいます。

そしてすぐ壊れる

ピンタイプのパワーベルトは、フックバックル式やレバーアクション式に比べると安価です。おおよそ半額程度かと思います。それは、厚みが薄いからなのですが、ベルト製造者の視点で見ると、牛革は8mm→10mm→13mmと厚くなるに従い、だいたい1.5倍ずつ製造コストが上がります。

一つに牛革の重量単価、もう一つに縫い加工の人件費(厚いベルトは手間がかかる)があります。

そして、ピン式ベルトはベルト全体のランク的に一番下ですので、メーカー側も「できるだけ安く作って安く売る」というモーメントがかかり製造します。この場合、まずコストカットするのが「2ステッチ→1ステッチへの変更」です。2ステッチのベルトは万が一、1ステッチ目の糸が切れても大丈夫ですが、1ステッチのベルトはそこで終了です。

また、相当な腹圧を「あの細いピンで受け続ける」ため、当然、ピンの付け根部分の可動パーツから壊れていきます。

さらに付け加えると、「できるだけ安くモーメント」で牛革ではなく人工皮革(人造皮革)のものが主流です。人工皮革と言えば聞こえがいいですが、それはポリエステルなどを主体とする石油製品なので、残念ながら伸びます(もちろん伸びたら元には戻りません)。

人造皮革(じんぞうひかく)は、皮革(レザー)に似せて、石油などを原料に作られた人工素材。模造品の皮革という意味合いを込めて、別名でフェイクレザーとも呼ばれる。人造皮革に対し、本来の皮革を天然皮革、本皮という。合成皮革、人工皮革は別物であるが一般的に混同されており、ともに俗称として合皮(ごうひ)と呼ばれる。引用:https://ja.wikipedia.org/人造皮革

1ピンと2ピンの違いとどちらもおすすめしない理由

1ピンはねじれやすく安定性が低い

1ピン方式は固定点が少ないため、ベルトが振れやすく、高重量トレーニングでは穴の変形も起こりやすくなります。

2ピンはさらに外しにくくなる

2ピン方式はやや固定力は増しますが、その分抜けにくさも倍増し、抜けなくなった場合は1ピン以上に外しにくくなります。厚いベルトとの相性も極めて悪く、実用性の面で優れているとは言えません。

どちらも安い以外のメリットがない

結論です。価格帯が安いことだけがピン式の利点で、実用面・安全性・性能いずれも上位互換であるレバー式・フックバックル式に劣ります。

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当ショップがピン式ベルトを売っていない理由

上記のように、ピン式パワーベルトには安いこと以外にメリットがありません。当ショップの理念は「競技者による競技者のためのギア開発・生産」ですので、そもそもピン式は商品開発の構想にすら入っていません。このため、当ショップのラインナップは「13mmフックバックルベルト」「10mmレバーアクションベルト」「13mmレバーアクションベルト」のみです。

もっと言うと、フックバックル式は穴に負荷がかかり、10mmでは耐久性が保証できませんので、10mmフックバックルも作っていません。もちろん、世の中には10mmフックバックルという製品もありますが、正直、おすすめしていません。

なぜレバーアクションベルトが主流なのか

レバーアクションベルトはテコの力で強力に締め付けられるため、腹圧が安定しやすく、着脱もワンタッチで行えます。10mm・13mmといった厚みでも問題なく扱えるため、競技者・高重量トレーニーにとって最も信頼性の高い方式です。

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フックバックル(クイックリリース)が選ばれる理由

フックバックル式は、ピン式の欠点(締めにくい・外しにくい)を大きく解消し、レバーアクション式よりも着脱が容易、とバランスに優れています。初心者から中級者まで幅広く扱いやすい方式です。

※着脱が容易な分、レバーアクション式よりは締め付け強度はやや落ちます。また、レバー式より若干リーズナブルです。

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両者のメリットを融合したアジャスタブルレバーアクション

当ショップのパワーベルトを生産している工場(生産メーカー:BlueEagleSport|ブランド名:ERG)が独自に開発した「アジャスタブルレバーアクションバックル」は、レバーアクションの強力な締まりと、フックバックル式の調整の手軽さの両方を併せ持っています。

このように、約6cmの調整幅を持っており、「穴位置を変えるためにはドライバーでネジを外して付け直し」というレバーアクションベルト最大のデメリットを解消しています。

商品ページ

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権利情報

内爪型レバーアクションベルト用バックルはCopyright©ERGの権利物で、国内ではMazurenkoJapanに販売権が帰属します。類似品の製造・販売・転売およびコピー品と知りつつの購入は、法令違反ならびに法的処置の対象となる場合があります。

用途別の最適なベルトの選び方

  • 高重量スクワット・デッドリフト:レバーアクションが最適

  • オールラウンド用途:フックバックル(クイックリリース)

  • ピン式を選ぶ理由:予算を抑えたい場合のみ(非推奨)

まとめ|ピン式をおすすめしないのは使用者のため

ピン式ベルトは構造上の限界があり、

  • 厚くできない(8mm限界)

  • 締めにくい

  • 外しにくい

  • 固着しやすい

  • 微調整しづらい

といった問題が避けられません。

総合的な実用性・安全性・性能・ランニングコスト(壊れやすい)を考えると、レバーアクションまたはフックバックルが適しています。特に、強度・可変性・利便性のすべてを満たすベルトを求める場合は、アジャスタブルレバーアクション方式が最適解となります。

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