
一般的に「スリングショット」と呼ばれるベンチプレスの補助ギアの効果、広く普及している「水平バンド式」のデメリットについて解剖学的知見(生物学博物館学芸員としての)をもとに解説するとともに、当ショップが採用している最新式の90度ツイスト構造を持つ「LARA★STARベンチプレスサポーター」との比較考察を行います。
本記事で用いる「スリングショット」という語は、一般的にベンチプレス用の水平バンド型補助具を指す通称として使用しています。特定企業の製品名を指すものではありません。
スリングショットの基本構造

スリングショットは、水平方向に伸びるバンドを利用してベンチプレス動作を補助する器具です。反発力が常に上下方向にも向かうため、肘関節や肩関節の自然な軌道と完全には一致しないことがあります。この構造的な性質を理解したうえで、効果とデメリットを正しく把握することが大切です。
スリングショットの効果
スリングショットは、ベンチプレスの伸展ポジション(特にスティッキングポイント)を強くサポートし、自分の力だけでは扱えない重量を安全に経験できる点が大きなメリットです(マッスルメモリー)。反発力により大胸筋や上腕三頭筋の動作を補助し、高重量に対する心理的なハードルも下がります。また胸が沈み込みにくいため、良いフォーム(肩甲骨が寄ったフォーム)が高まりやすいという利点があります。
肩が痛くなる理由やデメリット

水平バンド構造は反発力が上下方向へも働きやすく、前腕が倒れることで肩関節前方にストレスが集中しやすくなります。その結果、上腕骨頭が前方に偏位し、大胸筋上部や三角筋前部の負担が局所的に増え、肩の前面に痛みが生じやすくなります。特にプレス動作の中で水平内転と内旋が重なる局面では、肩のインピンジメントリスクが高まります。
水平バンド構造による力線のズレ
水平方向の張力は、大胸筋の胸骨部線維とは一致しやすいものの、鎖骨部線維とは力線が合いにくい傾向があります。この力線の不一致は肩の前方シフトを誘発し、フォームの安定性を損ないます。また、肘関節は屈曲と伸展の中でわずかに回旋と内外転を伴いますが、水平方向の反発力はこの自然な軌道と整合しにくく、肘が本来の軌道を取りにくくなることがあります。
装着時のテンション不均一
スリングショットは腕スリーブ部分と胸側のバンド部分が同じ方向に張力を持つ構造ではないため、装着位置のわずかなズレが左右差として反発力に現れやすくなります。高重量域ではこの不均一性がより顕著となり、軌道のブレや不安定性につながる場合があります。
初心者に起こりやすい問題
初心者の場合、筋力が十分でない段階では反発力の方向と自身の押し出す方向を一致させることが難しいため、フォームの乱れがそのまま反発力によって増幅されやすくなります。この結果、重量だけが先行し、動作の質が追いつかないまま不安定な動作が続く(正しい方向でのフォームや筋力が育ちにくい)可能性があります。
ツイスト構造との比較

ツイスト構造は、腕スリーブ部分と胸バンド部分が垂直に配置されることで、反発力が肘の自然な軌道に沿いやすく設計されています。このため、肩関節前方へのストレスは水平バンド構造に比べて軽減されます。また反発力が胸の中央方向へ返るため、大胸筋全体と力線が整合しやすく、動作の安定性が高まりやすい特徴があります。構造上の違いがそのまま動作の快適性や安全性、ひいてはトレーニング効果に影響するため、補助具の特性を理解したうえで選ぶことが重要です。
結論
スリングショットは高重量を安全に経験できる優れた補助具ですが、水平方向の構造特性によって肩関節前方へのストレスが高まりやすい側面があります。使用時には、肩の構造や肘の自然な軌道との整合性を考慮することが重要です。構造の異なるツイスト型の補助具は、この問題を改善する特性があるため、自身の目的や身体特性に合わせて選択することでより安全で効率的なトレーニングが実現できます。
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