
一般的に身体作りの指標とされるのが体重です。しかし、美しく健康的に身体作りをする筋トレでは体重増加もありえます。筋トレを主体にした身体作りでは体重を指標としてはいけませんが、その理由を詳しく解説します。
筋力トレーニングを継続することで、筋量や身体の輪郭に変化が現れ、日常におけるエネルギー消費量のベースが整っていきます。一方で、筋量の増加に伴って体重が増加するケースも少なくありません。
それは健康的に美しく身体作りをするための必然なのですが、多くの女性は「体重が増える=肥る」「体重が減る=身体作りをする」と誤解しがちです。
また、あわせて身体作り筋トレの女性への効果や理想的な体つくりのために必要な基礎知識をご紹介します。
身体作り筋トレの基本的な考え方
筋トレで筋密度を上げて基礎代謝を向上させる

身体作り筋トレは、筋トレをする運動エネルギーで身体作りをするわけではありません。そもそも、人の一日の消費カロリーのうち運動で消費されるエネルギーはあまり大きな割合を占めておらず、圧倒的に割合の高いのが基礎代謝です。基礎代謝とは、体温の維持や新陳代謝に使われるエネルギーで、筋肉量や筋密度が高い人ほど消費量は増加します。
身体作り筋トレを行うと、筋肉は太くなりませんが筋密度は向上し基礎代謝は上がります。また、筋トレで筋肉痛になると、それを回復させるに新陳代謝に使われるエネルギーは一時的に増加すると考えられています。
つまり、身体作り筋トレの基本的な考えは、筋トレをして筋肉痛を起こし新陳代謝を高めるとともに、筋力トレーニングによって筋量を維持し、安静時を含めた消費エネルギー水準が安定した身体を作っていくことなのです。
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体脂肪が多い体格とスリム体型
わかりやすく図解で説明

身体作り筋トレ前の体脂肪が多い体格と、身体作り筋トレ後のスリム体型の脂肪と筋肉の関係を模式的な図にしました。
左の体脂肪が多い体格では脂肪量が多く、筋肉の太さは右と変わらないものの、その密度は低い状態です。筋肉の状態は「霜降り肉」を想像していただければよいでしょう。
一方、右のスリム体型では脂肪量は少なくなり、筋肉の太さは左と同じですが、その筋密度は高い状態です。筋肉の状態をたとえると「赤身肉」と言うことができます。
そして、体重ですが、これは身長や体脂肪率などのケースによりますが、右のスリム体系のほうが重い場合も十分にありえます。次の項目で、その理由を解説していきます。
脂肪と筋肉の重さと体積
筋肉は脂肪の3倍重い

筋肉と脂肪の重さと体積の関係は、最大で3倍の違いがあります。同じ体積の脂肪と筋肉を比べた場合、「霜降り肉状態」の筋肉でも脂肪の2倍以上、「赤身状態」の筋肉ならば脂肪の3倍の重量があります。
鍛えていない体脂肪が多い体格と鍛えたスリム体型の場合、同じ体重ならば遥かに前者は体積が多く、後者は体積が小さくなります。
鍛えると骨密度も上がる
ちなみに、体重には脂肪と筋肉以外に骨の重さが関係します。身体作り筋トレをすると、筋密度だけでなく、骨密度も向上し健康的になりますが、全体重に占める骨の重さの比率は、背の高い人ほど高くなります。ですので、「身体作り筋トレをしてスリムになったのに体重が増えた」というケースは高身長の人ほど多く見られます。
あまり肥ってない人ほど体重が増えやすい
肥満体型に近い人が筋トレをすると、筋密度上昇による体重増加より、なくなる脂肪の方がはるかに多いので、「体重が増えた」というケースはまずありません。
あまり肥ってない、標準よりもややぽっちゃりの方が身体作り筋トレをした時に「体重が増える」という現象が起こりがちです。
いずれにせよ、外見が整って体重が増えるような身体作りは、健康的にも体型維持的にも良好な結果なので、気にする必用はありません。
次の項目では、「体重が減る」ということにこだわったために、失敗する身体作りについて詳しく解説します。
体重を指標にした身体作りの罠
ただ体重が軽いだけ

身体作りの指標を体重にした場合、「ただ体重を減らす」ことが目標になり、体重が減り始めると嬉しくなってどんどん食事制限をしてしまいがちです。
運動をせずに食事制限だけをした場合、脂肪も落ちますが筋密度も低下します。筋密度が低下していくと「消費エネルギー効率がよくない」になっていきます。
これが、食事制限の大きな落とし穴・罠なのです。これを繰り返せば繰り返すほど筋密度は低下し、エネルギー消費がよくない状態になるので状況はどんどん厳しくなります。さらに無理をして食事制限を続けていけば、およそ健康的と言いがたい筋肉量になってしまいます。
筋トレだけで身体作りをするの可能?
実は筋トレが一番効率的な運動

運動と言えば、ジョギングなどの有酸素運動と筋トレなどの無酸素運動の二種類がよく比較されます。
実は、運動による効果(エネルギー消費)には二種類があり、有酸素運動と無酸素運動ではその仕組みがかなり異なります。
まずは、運動することにより直接発生する「運動消費カロリー」ですが、標準的な有酸素運動と無酸素運動では、時間あたりの消費カロリー量はほぼ同じとされており、運動消費カロリーにおいては、有酸素運動と無酸素運動ではほとんど効果に差がありません。
しかし、もう一つのエネルギー消費で大きな差がつくのです。
代謝カロリーに大きな差がある

運動によって発生するもう一つのエネルギー消費が「代謝カロリー」で、これは運動による新陳代謝の向上によって発生します。
筋トレ(無酸素運動)を行うと筋繊維が適度に損傷し筋肉痛になります。
そして、筋肉痛は「超回復」と呼ばれる生体反応により、48~72時間の回復期間をかけて、筋繊維の筋肉細胞が新陳代謝して回復します。
この時に、通常では発生しない高いレベルの代謝カロリーが消費されます。
ジョギングなどの有酸素運動では、残念ながら筋肉痛はあまり起こらず、有酸素運動のエネルギー消費はその時かぎりですが、筋トレ(無酸素運動)の場合は、一度運動を行うと数日間は代謝の高い状態が継続します。
また、有酸素運動では筋繊維はあまり強くなりませんが、身体作り筋トレでは筋密度が上昇し引き締まっていきます。
これにより、日常におけるエネルギー消費量のベースが整い、長期的な身体管理を行いやすい状態へと移行していきます。
身体作りにおいて、筋トレのほうが有酸素運動よりも優れているてされるのは、これらのことが理由なのです。
ムキムキにならずに綺麗に身体作りをするために
鍛える筋繊維に合わせて重さを決めれば引き締まる

筋肉を構成する筋繊維には、大きくは持久筋(TYPE1)と瞬発筋(TYPE2)に分けられます。さらに瞬発筋(TYPE2)は瞬発筋(TYPE2a)と瞬発筋(TYPE2b)に分けられ、この三種類の筋繊維は運動の特性によって使い分けられており、それは以下の通りです。
持久筋(TYPE1):1分以上の持続的な運動
瞬発筋(TYPE2a):30~60秒の長めの瞬発運動
瞬発筋(TYPE2b):30秒以内の短く強い瞬発運動

一般的な女性が筋トレと聞くと心配になるのが、ボディービルディングの女性選手のようなムキムキの身体になってしまうのでは?ということですが、身体作り筋トレをしてもこのようなムキムキの身体にはなりません。
それは、鍛える筋肉の対象が違うからで、ボディービルでは筋肥大する瞬発筋(筋繊維Type2b)を鍛えるのに対し、身体作り筋トレでは、ほどよく筋肥大する瞬発筋(筋繊維Type2a)や筋肥大しない持久筋(筋繊維Type1)を鍛えていきます。
ですので、正しい負荷設定を行えば、筋トレで効率的に身体作りができることはあっても、ムキムキになってしまうことはありません。
なお、それぞれの筋肉の種類と鍛え方は以下の通りです。
瞬発筋(筋繊維Type2b):高重量高負荷で10回前後の反復回数で鍛える
瞬発筋(筋繊維Type2a):中重量中負荷で15回前後の反復回数で鍛える
持久筋持久筋(筋繊維Type1):低重量低負荷で20回以上の反復回数で鍛える
身体作り筋トレ効果はいつでるの?
まずは筋密度が上がる

では、身体作り筋トレをはじめてどれくらいの期間があれば効果があるのでしょう?
普通の有酸素運動などであれば、効果はてきめん体重に反映され、早ければ一~二週間で体重は減少します。
しかし、身体作り筋トレの場合は、はじめの一~二ヶ月は、その効果はあまり体重には反映されません。
もちろん、身体は確実に引き締まっていきますが、女性が一番気にする「体重という指標」は、身体作り筋トレでは、変化するまでにタイムラグがあります。

再び、こちらの身体の断面を模式的にあらわした図ですが、左の状態から身体作り筋トレを開始し、継続していくことで右の状態になっていきます。見かけ上も細くなり、筋密度は上がり体脂肪率は下がるという、最も理想的な状態になることがわかりますね。
ただし、身体作り筋トレを始めて一~二ヶ月は、筋密度が上昇するため外見的には細くなっても、体重が減少することはありません。
しっかりとこの理論を理解し、表面的な「体重という指標」に惑わされずに身体作り筋トレを継続することが肝心です。
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筋トレの食事メニュー
高タンパク質低カロリーが基本

筋トレ期間中の食事メニューの基本は「高タンパク質低カロリー」です。筋トレで筋肉を刺激し、筋肉が回復する過程での消費エネルギーを利用します。
ですので、筋肉の新陳代謝の材料となるタンパク質はしっかり摂取していきます。
具体的な摂取量については、年齢や体格、運動量、体調などによって大きく変わりますが、筋肉の材料となるタンパク質を毎日の食事のなかで意識的に取り入れていくことが大切です。どの程度とるかは一律には言えませんので、公的機関の情報や専門家の助言なども参考にしながら、自分に合った範囲で調整していくようにしてください。
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