
バーベルベンチプレスは、胸部の基本的な筋力と出力を高めるために用いられる代表的なフリーウエイト種目です。本記事では、動作の基本・負荷設定の考え方・各種バリエーションについて、動画を交えて解説します。
ジムトレーニングを始めたばかりの初心者の方にとって、バーベルトレーニングはマシントレーニングよりも難しく感じられることがありますが、正しいフォームと適切な負荷設定を行うことで、安全に実施することが可能です。段階的に導入することで、全身の基礎的なトレーニングとして活用できます。
バーベルベンチプレスが効果のある筋肉部位
筋肉の構造と作用に関しては下記の学術サイトを参照しています。
・https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/

バーベルベンチプレスは胸の筋肉である大胸筋に効果があるだけでなく、三角筋や上腕三頭筋にも二次的に効果的です。
バーベルベンチプレスの重さの設定
負荷設定の考え方

バーベルベンチプレスの重量設定は、筋肥大を目的とするのか、一定の筋持久力や反復動作能力の向上を目的とするのかによって考え方が異なります。
一般に、筋肥大を主目的とする場合は速筋線維の動員割合が高くなる負荷設定が用いられ、比較的高回数の持続動作を目的とする場合は遅筋線維の関与が高まる負荷設定が用いられます。
反復回数の目安
速筋線維の関与を高めたトレーニングでは、おおよそ 10〜15回前後で反復限界に達する負荷 が一つの目安とされます。
一方で、遅筋線維の関与が高まる条件では 20回以上の反復 が行える負荷設定になることが一般的です。
そのため、バーベルベンチプレスを筋肥大目的で実施する場合は、15回前後で反復限界がくる重量設定を基準とする方法が用いられます。
体重変動に関する考え方

筋力トレーニングの実施において、エネルギー摂取量と消費量のバランスは筋量の増減に影響を与えます。摂取量が極端に不足した状態では、筋量の増加は起こりにくくなります。
そのため、筋肥大を目的とする場合には、過度なエネルギー制限を避け、安定した栄養摂取を維持しながらトレーニングを継続すること が基本となります。
身体組成は脂肪組織と筋組織のバランスによって構成されるため、体重変動が見た目に影響を及ぼすことはありますが、トレーニングでは大胸筋・体幹・下肢などの主要筋群を総合的に鍛えることが、安定した身体づくりにつながります。
大胸筋の筋量増加ベンチプレスの頻度と総セット数
鍛えすぎないことが大切

実際に当ジムで女性に指導している内容は「やりすぎない」ことです。
筋肉を鍛えすぎると周辺の脂肪量は減少傾向になります。鍛えたいという気持ちが強いほど、ついハードにトレーニングしてしまいがちですが、あえて「程よい筋トレ頻度と総セット数」にすることが大切です。
具体的には、大胸筋をしっかり超回復させるため、胸トレーニングは頻度は週に一回に抑え、各ベンチプレスバリエーション1セットずつ+仕上げのケーブルorダンベル種目を数セット、というのが最適です。
バーベルベンチプレスの種類別やり方とポイント
基本のフラットベンチプレス
最も基本的なベンチプレスのバリエーションが水平なベンチで行うフラットベンチプレスです。
肩甲骨を寄せ、肩甲骨二点と臀部一点の計三点で上半身を固定し、軽く背中を反らせてブリッジを作って行うのがポイントです。
ますは、大胸筋の筋量増加の基礎として、しっかりと行っていきましょう。
◆バーベルベンチプレスのやり方と動作ポイント
①ベンチに仰向けになり、肩甲骨を寄せ、80cm前後の手幅でシャフトをグリップし、足を踏ん張りブリッジを作って構える
②バーベルをラックアウトし、胸の真上まで水平移動させる
③肩甲骨を寄せたまま、ある程度筋力でコントロールしてシャフトを胸の上に下ろす
④肩甲骨を寄せたまま、腕を押し出しバーベルを元の位置まで上げる
⑤しっかりと肘を伸ばし、顎を少し引いて大胸筋と上腕三頭筋を完全収縮させる
◆ワンポイントアドバイス
ストリクトに効かせるためには、勢いをつけてシャフトをバウンドさせないようにすることと、腰を浮かせないようにすることが大切です。

なお、当サイトに客員執筆していただいている、ミスボディーフィットネストップ選手にMIKIKO様のベンチプレストレーニングのコツは以下の通りです。
「まずアーチを作ってみましょう。体全体で重りを受け止め、挙げるためです。アーチを作る手順は人それぞれですが、私の場合はベンチに横たわる→手を頭の方にまわしベンチ台の角を掴む→足裏はベンチ台の上に置く→お尻とお腹を天井に向け思いっきり突き上げる→背中のアーチが潰れないようにそーっとお尻だけベンチにつける→足裏を床につける→バーベルを握り肩甲骨を寄せて横のアーチをつくる→完了です。
縦と横、背中に十字架のアーチをイメージしています。
次に大きく息を吸って胸を膨らませ、胸を張ったまま、ラックから外してバストトップの真上辺りで一時停止、そこから真っ直ぐ下にシャフトを下ろしてきましょう。慣れないうちは下ろす軌道が安定せず頭側や、お腹側にフラつくことがありますが、繰り返すうちに安定してきます。

挙げる時に、アーチが潰れて腕だけ伸ばさないようにしましょう。肩甲骨を寄せて押し下げ、胸を張ったままプレス動作をすることが大切です。プレス時に肩の後ろがベンチから離れると、肩の痛みの原因になってしまいます。(画像参照)」
バストを上げるインクラインベンチプレス
インクラインベンチプレスは大胸筋上部に効果的なバリエーションで、バスト全体をリフトアップするために重要な種目と言えます。
腰を浮かせるとせっかくの斜め上方への軌道が普通のベンチプレスと同じになってしまいますので、最後までしっかりとシートに背面をつけて行ってください。
◆インクラインベンチプレスのやり方と動作ポイント
①インクラインベンチに仰向けになり、肩甲骨を寄せ、80cm前後の手幅でシャフトをグリップし、足を踏ん張りブリッジを作って構える
②バーベルをラックアウトし、胸の真上まで水平移動させる
③肩甲骨を寄せたまま、ある程度筋力でコントロールしてシャフトを胸の上に下ろす
④肩甲骨を寄せたまま、腕を押し出しバーベルを元の位置まで上げる
⑤しっかりと肘を伸ばし、顎を少し引いて大胸筋上部と上腕三頭筋を完全収縮させる
◆ワンポイントアドバイス
腰を浮かせると、せっかくの大胸筋上部に効果のある軌道が失われますので、最後までしっかりとベンチに腰をつけて行なってください。
全体ボリュームを増やすデクラインベンチプレス
デクラインベンチプレスは、大胸筋下部に効果的なバリエーションです、大胸筋のなかでも最大体積の下部をバルクアップすることでバストの土台もアップします。
セット終盤でやや腰を浮かせて追い込むのもテクニックの一つとして知られていますが、まずはしっかりとシートに背面をつけることを意識して取り組んでください。
◆デクラインベンチプレスやり方と動作ポイント
①デクラインベンチに仰向けになり、肩甲骨を寄せ、80cm前後の手幅でシャフトをグリップし、足を踏ん張りブリッジを作って構える
②バーベルをラックアウトし、胸の真上まで水平移動させる
③肩甲骨を寄せたまま、ある程度筋力でコントロールしてシャフトを胸の上に下ろす
④肩甲骨を寄せたまま、腕を押し出しバーベルを元の位置まで上げる
⑤しっかりと肘を伸ばし、顎を少し引いて大胸筋と上腕三頭筋を完全収縮させる
ワンポイントアドバイス
セット終盤で少しだけ腰を浮かせることで、セルフ補助が可能ですが、はじめから腰浮きありきの重量設定は非効率です。
バストを寄せるナローベンチプレス
ナローベンチプレス(クローズグリップベンチプレス)は大胸筋内側に対して効果的で、バストを寄せるために重要な種目です。
◆ナローグリップベンチプレスのやり方と動作ポイント
①ベンチに仰向けになり、肩甲骨を寄せ、60~70cm前後の手幅でシャフトをグリップして構える
②バーベルをラックアウトし、胸の真上まで水平移動させる
③肩甲骨を寄せたまま、ある程度筋力でコントロールしてシャフトを胸の上に下ろす
④肩甲骨を寄せたまま、腕を押し出しバーベルを元の位置まで上げる
⑤しっかりと肘を伸ばし上腕三頭筋を完全収縮させる
◆ワンポイントアドバイス
肘を外に張り出すと上三頭筋短頭に、肘を絞って行うと上腕三頭筋長頭に効果的です。
小胸筋に効果的なワイドベンチプレス
大胸筋外側の深層には大胸筋をリフトアップする作用のある、小胸筋と呼ばれるインナーマッスルがあり、大胸筋の筋量増加(リフトアップ)のためにはこの深層筋を鍛える必要があります。
大胸筋外側と小胸筋に効果の高いベンチプレスバリエーションが、広い手幅で行うワイドベンチプレスです。
なお、この種目はバーベルを下ろした位置での動作が重要ですので、無理に肘が伸びるまでバーベルを押し上げる必要はありません。
◆ワイドグリップベンチプレスのやり方と動作ポイント
①ベンチに仰向けになり、肩甲骨を寄せ、90cm前後の手幅でシャフトをグリップし、足を踏ん張りブリッジを作って構える
②バーベルをラックアウトし、胸の真上まで水平移動させる
③肩甲骨を寄せたまま、ある程度筋力でコントロールしてシャフトを胸の上に下ろす
④肩甲骨を寄せたまま、腕を押し出しバーベルを元の位置まで上げる
⑤しっかりと肘を伸ばし、顎を少し引いて大胸筋と上腕三頭筋を完全収縮させる
◆ワンポイントアドバイス
本種目は、肩甲骨の寄せが甘いと、特に肩関節に大きな負担がかかりますので注意してください。
大胸筋の筋量増加ベンチプレスの仕上げ種目
ケーブルフライ
ノーマルのケーブルフライは、大胸筋内側に効果的で、大胸筋の筋量増加筋トレとしては「寄せる」効果のある種目です。
腕を閉じた後に、さらに前方に腕を押し出す動作を加えることで、大胸筋内側が完全収縮してさらに効果が高まります。

プロフィールはこちら
戦績:H26オールジャパンミスボディフィットネス 163cm以下級 第3位など
当サイトに客員執筆していただいているボディーフィットネス選手のMIKIKO様による解説は以下の通りです。
「ケーブルの重さに引っ張られてバランスを崩したり、力を抜きすぎてストレッチがかかり過ぎないように注意が必要です。
かといって、軽すぎるとケーブルマシンの良さが得られないので、重さの設定が大切です。
息を吸いながら胸を思いっきり膨らませ、フーッと吐きながら体の中心線前方で手のひらを合わせる感じです(肘は少し曲げ気味で)。」
ケーブルフライには、ノーマルフライのほかに、大胸筋上部に効果的なローケーブルフライ(またはインクラインケーブルフライ)、大胸筋上部に効果的なハイケーブルフライ(またはデクラインケーブルフライ)などのバリエーションがあります。
詳しくは下記の記事をご参照ください。
ダンベルフライ
大胸筋の内側上部を集中的に鍛えることができ、女性の大胸筋の筋量増加に最適な種目がインクラインダンベルフライです。
腕を閉じた後に、やや上にダンベルを押し上げるようにするとさらに効果的です。
なお、ダンベルフライには大胸筋上部に効果的なインクラインダンベルフライなどのバリエーションもあります。
ベントアームダンベルプルオーバー
ダンベルプルオーバーは、やり方によって胸に効いたり背中に効いたりする、少し変わった種目ですが、こちらが、胸に主体を置いたダンベルプルオーバーで、肘をやや外に開きながら曲げて動作を行うことで、大胸筋に負荷が集中します。
また、スクワットなどの息が上がるトレーニング種目の後に、胸いっぱいに息をためてダンベルプルオーバーを行うことで、そもそもバストの土台となる胸郭自体を広げる効果もあります。
マシンチェストプレスについて
負荷をかけるのに専念できる反面インナーマッスルが鍛えにくい

ジムでトレーニングを始める女性が、胸トレーニングでまず行うのがマシンチェストプレスです。マシンは軌道のブレをレールが支えてくれるので、ウエイト負荷を押す動作に専念できるため、女性にとってはとっつきやすいカテゴリーの筋トレです。
ただし、マシンがブレを支えてくれるということは、反面、体幹のインナーマッスルが鍛えられにくい、ということですので、ワンランク上の成果を求める方には、やはりバーベルベンチプレスが効果的です。

当サイト運営ジム「FutamiTC」での指導経験をもとに記載しています。
女性トップアスリートによる執筆記事
当サイトでは、数多くの女性筋トレ記事を国内トップレベルの女子選手に客員執筆していただいています。以下に代表的な記事をご紹介します。







筋トレと体重

トレーニングの継続によって、筋量や身体の組成が変化することがあります。その影響で、体重の数値が一時的に変動する場合があります。

体の変化を確認する際は、体重の数値だけでなく、身体各部の状態をあわせて見ることが大切です。
筋トレの呼吸法

トレーニング中は、動作に合わせて自然に呼吸を行うことが基本です。力を入れる動作で息を吐き、戻す動作で息を吸うように意識してください。
筋トレ全200種目一覧

筋肉の名称と作用

身体を鍛えていく上で、まず理解したいのが全身の主な筋肉の名称と作用です。それぞれの筋肉の役割を知ることで、効率のよいトレーニングを行うことが可能になります。

女性のための筋トレ基礎知識集


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身体を鍛えたら食事にも気を使う
タンパク質の安定摂取と冷凍食材

筋トレの成果を安定して積み上げるには、日々のタンパク質摂取を途切れさせないことが重要です。そのために、競技生活の中で私自身も実践してきたのが、良質な冷凍タンパク質食材のストックです。下記は、日本代表としての実体験にもとづき、常時ストックしていた肉類・魚介類の一例です。

筋トレの効果を高めるためには、トレーニングだけでなく食事や栄養に関する基礎知識が欠かせません。下記の記事では、三大栄養素の基本から、目的別の食事設計、具体的な食品例に加えて、筋肥大期と減量期における実践的な食事レシピまでを解説しています。
▼筋トレの効果を高める食事

