
ケーブルマシンを使ったトレーニング種目を、大胸筋・広背筋・僧帽筋・三角筋・上腕三頭筋・上腕二頭筋・腹筋群・大腿四頭筋・ハムストリングス・腸腰筋群・内転筋群それぞれの筋肉部位別に解説します。
ケーブルマシンのメリットと特徴
一般的なトレーニングマシンは軌道が固定されているのに対し、ケーブルマシンは軌道がフレキシブルなため、個人の体型にあわせたフォームやピンポイントで効かせたいフォームがとれるなど自由度が高いのがメリットです。
また、フリーウエイトトレーニングと違い、筋肉の最大収縮時でも負荷がかかり続けるので効率的に筋肉を追い込むことが可能です。
ケーブルマシンの種類
上から引くタイプ

上から引くタイプのケーブルマシンは、フリーウエイトトレーニングにはない、ケーブルマシンならではの「上からウエイトを引く」という動作が可能です。このほかにも、下に押す動作もできます。
下から引くタイプ

下から引くタイプのケーブルマシンは、フリーウエイトトレーニングにはない、ケーブルマシンならではの「前からウエイトを引く」という動作が可能です。このほかに、下から引く動作もできます。
ケーブルマシンの歴史

ケーブルマシンの歴史は、ウェイトトレーニングが体系化され始めた20世紀初頭に遡ります。もともとは軍隊やリハビリテーション施設で採用されていた滑車装置が原型で、当時は木製フレームにロープを通した非常にシンプルな構造でした。金属加工技術が発達するにつれて、滑車やワイヤーがより頑丈な素材へと置き換えられ、筋力トレーニング器具として急速に発展していきました。
本格的にケーブルマシンがスポーツトレーニングの世界で普及し始めたのは、1940年代から1950年代にかけてのアメリカです。この時代、ジャック・ラランをはじめとしたフィットネスの先駆者たちが、バーベルやダンベルでは再現しにくい“連続負荷”や“軌道自由度の高い動作”を可能にする器具として評価し、ジム内部に常設するようになりました。特に、ロープを介してウェイトを引く仕組みは、等張性の高い動作が実現し、筋肥大だけでなくスポーツ動作の補強にも適していたため、多くのトレーニーに受け入れられました。
1960年代以降になると、金属フレームと鋼鉄ワイヤー、密閉式滑車を採用した近代型ケーブルマシンが登場します。この頃にはラットプルダウンやケーブルローなど、現在の基本種目の原型がほぼ確立されました。また、ウエイトスタック方式の採用によって、ピン一本で重量調整ができる利便性が生まれ、初心者から上級者まで幅広い層にとって扱いやすいトレーニング器具となりました。
1980年代には、ゴールドジムを中心としたボディビル黄金期の影響を受け、ケーブルマシンはジム設備の標準機器として世界中に広がりました。この時代には滑車のベアリング性能が向上し、ワイヤーの耐久性も飛躍的に向上したため、よりスムーズで安全なトレーニングが可能になりました。アタッチメントの種類も増加し、ストレートバー、ロープ、EZハンドル、パラレルグリップなど、筋肉の狙い分けに応じた多様なトレーニングができるようになります。
さらに1990年代から2000年代にかけては、ホームジム文化の浸透によって、プレートロード式のラットマシンや、コンパクト型ケーブルステーションが一般家庭にも普及しました。家庭用モデルはウエイトスタック式に比べて価格が安く、耐久性も高いため、自宅トレーニングの普及に大きく貢献しました。
現代では、ケーブルマシンは単なる補助的な器具ではなく、機能的トレーニングやリハビリ、競技動作の強化など、幅広い目的に対応する総合的なトレーニングシステムとして位置づけられています。左右独立のデュアルケーブルマシンや、可動域を自由に調整できるマルチステーション型など、進化の幅は大きく、トレーニング目的に応じて柔軟な選択ができる時代になっています。
このようにケーブルマシンは、シンプルな滑車装置から始まり、スポーツ科学と器具技術の発展とともに改良を重ねながら、現在の高度なトレーニング機器へと進化してきました。動作の自由度と連続的な負荷を提供できる点は今も変わらず、背筋群、上腕筋、体幹、下半身に至るまで全身を多角的に鍛えられる、非常に汎用性の高いトレーニングシステムとして確立されています。
大胸筋のケーブルマシントレーニング
ケーブルフライ

ケーブルフライは、ケーブルマシンの特性である自由な軌道で動作が行える仕上げ種目です。
上から斜め下方に腕を閉じる軌道のハイケーブルフライだと大胸筋下部に、下から斜め上方に腕を閉じる軌道のローケーブルフライだと大胸筋上部に負荷を加えられます。
また、シングルハンドで反対側の肩ラインまで深く腕を閉じるクロスオーバーフライだと、大胸筋内側に強い負荷を加えることが可能です。
ケーブルチェストプレス
ケーブルマシンに背を向けて構え、グリップを前に押し出すことでチェストプレスを行うことができます。上方へ押せば大胸筋上部に、下方に押せば大胸筋下部に負荷がかかります。
背筋群のケーブルマシントレーニング
ケーブルローイング

ケーブルローイングは、背筋群のなかでも中央ライン、すなわち僧帽筋と広背筋中央部に有効なトレーニング種目です。
ケーブルを引いた位置でしっかりと胸を張り、肩甲骨を寄せきって背筋群を完全収縮させることがポイントです。
なお、使用するケーブルアタッチメントにより負荷のかかる部位が変化しますが、それは次の通りになります。
パラレルグリップ(ナロー)
もっともスタンダードなケーブルローイングが、パラレルナローアタッチメントで行うやり方で、背中の中央ラインに有効です。
ストレートアタッチメント(ナロー)
ストレートアタッチメントを狭い手幅で順手持ち(手の甲が上)で行うバリエーションでは、僧帽筋に高い負荷を加えられます。
ストレートアタッチメント(ワイド)
ストレートアタッチメントを肩幅より広くグリップするバリエーションは、広背筋側部に有効です。
ストレートアタッチメント(リバース)
ストレートアタッチメントを狭い手幅て逆手持ち(手の平が上)するバリエーションでは、広背筋下部に負荷が集まります。
ケーブルラットプルダウン

ケーブルラットプルダウンは、数少ない「上から腕を引き寄せる」軌道で背筋群に負荷を加えられる種目です。
胸を張り、アタッチメントを引き寄せた位置でしっかりと肩甲骨を寄せ、背筋群を完全収縮させることが大切なポイントです。
なお、本種目は使用するケーブルアタッチメントによって効果のある部位が変化しますが、それは次の通りになります。
パラレルグリップ(ナロー)
パラレルアタッチメントをナローグリップで用いるバリエーションでは、広背筋中央部に有効です。
ストレートアタッチメント(ナロー)
ストレートアタッチメントをナローグリップで用いるバリエーションでは、僧帽筋に負荷が集まります。
ストレートアタッチメント(ワイド)
ラットプルダウンのもっともスタンダードなバリエーションが、ストレートアタッチメントをワイドグリップするバリエーションです。
広背筋側部に集中的な負荷がかかります。
ストレートアタッチメント(リバース)
ストレートアタッチメントを狭い手幅でリバースグリップするバリエーションは、広背筋下部に有効です。
三角筋のケーブルマシントレーニング
ケーブルアップライトロウ

ケーブルアップライトロウは、スミスマシンアップライトロウに比べて軌道の自由度が高いのが特徴です。
肘を前に出すと三角筋前部に、横に張り出すと三角筋中部に、後ろに引くと三角筋後部に負荷をかけることができます。
ケーブルデルタレイズ

ケーブルデルタレイズはフレキシブルな軌道で三角筋を鍛えられる種目です。
腕を前に上げるケーブルフロントレイズは三角筋前部に、横に上げるケーブルサイドレイズは三角筋中部に、後ろに上げるケーブルリアラテラルレイズは三角筋後部に有効です。
ケーブルフェイスプル

ケーブルフェイスプルは、効かせるのが難しい三角筋後部トレーニングのなかでも、比較的動作の簡単な種目です。
肘をグリップよりも高く上げ、肩甲骨を寄せないようにしてグリップを顔の位置に引き寄せてください。
上腕三頭筋のケーブルマシントレーニング
ケーブルトライセプスプレスダウン

ケーブルプレスダウンは上腕三頭の仕上げに適した単関節種目です。
肘の位置を動かすと、負荷が背筋群に分散されますので、肘の位置をしっかりと固定して行ってください。
また、前のめりになって体重をかけると、使用重量の割に効果が低くなります。真っ直ぐに立ち、肘から先だけの動作で行える重量設定をすることが大切です。
ローププレスダウン

ロープアタッチメントを使用したトライセプスプレスダウンは、上腕三頭筋のなかでも長頭に負荷が集中するバリエーションです。
ケーブルキックバック

ケーブルキックバックは上腕三頭筋の仕上げに適した種目です。肘の位置を動かすと負荷が背筋群に逸れてしまいますので、しっかりと肘の位置を固定し、肘から先の伸展動作のみに集中することがポイントです。
上腕二頭筋のケーブルマシントレーニング
ケーブルカール

ケーブルカールは軌道がフレキシブルで、かつ最大収縮時にも上腕二頭筋に負荷がかかり続けるとても効率的なマシン種目です。
カール系種目に共通のポイントですが、肘の位置を動かすと負荷が背筋群に分散してしまいますので、しっかりと肘の位置を固定するよう留意してください。
ロープカール

ロープアタッチメントを使用するケーブルロープカールは、上腕二頭筋のなかでも長頭に負荷が集中するやり方です。
腹筋群のケーブルマシントレーニング
ケーブルクランチ

ケーブルクランチは腹直筋に負荷が集中する種目です。息を吐きながら身体を前に倒していき、最後に息を吐ききるとともに顎を引き、腹直筋を強く収縮させることがポイントです。
ケーブルサイドベント

ケーブルマシンの横に立ち、身体を反対方向に倒していく腹筋トレーニングがケーブルサイドベントです。できるだけ大きな動作で腹斜筋を最大伸展・最大収縮させることがポイントです。
大腿四頭筋のケーブルマシントレーニング
ケーブルレッグエクステンション
ケーブルレッグクエクステンションは足首にアンクルアタッチメントを装着し、膝から先を前に蹴り出す軌道で行うトレーニングです。
膝を伸ばすときだけでなく、戻るときも大腿四頭筋の筋力でコントロールしながらゆっくりと効かせることがポイントです。
ハムストリングスのケーブルマシントレーニング
ケーブルレッグカール

ケーブルレッグカールは足首にアンクルアタッチメントを装着し、膝から先を後ろに蹴り出す軌道で行うトレーニングです。
膝を曲げるときだけでなく、戻るときもハムストリングスの筋力でコントロールしながらゆっくりと効かせることがポイントです。
腸腰筋群のケーブルマシントレーニング
ケーブルレッグレイズ

ケーブルレッグレイズは、足首にアンクルアタッチメントを装着して行う足上げ腹筋です。
もっとも大切なポイントは、反動を使ったり腰を反らせて動作を行わないことで、この注意点ができていないと腰に強い負担がかかりますので注意してください。
やり方としては、床に仰向けになり、膝を伸ばして構え、息を吐きながら足を上げていきます。足は必要以上に高く上げる必要はなく、床と約45度程度の上げ方で十分です。
足を上げたら、息を吐ききり、顎を引いてつま先を見るように意識し、腹直筋下部を強く収縮させます。
また、足を下ろすときも筋肉に効かせながらゆっくりとコントロールして動作することが大切です。
内転筋群のケーブルマシントレーニング
ケーブルアダクション

ケーブルアダクションは、足首にアタッチメントを取り付け、足を閉じる方向に負荷をかけるケーブルマシントレーニングです。
ケーブルマシンアタッチメント概論
ケーブルマシンは、本体の構造が同じであっても、アタッチメントを変更することでまったく異なる筋肉刺激を生み出せるのが最大の特徴です。アタッチメントの形状や握り方の違いによって、筋肉が発揮する力の方向、関節の角度、可動域が変化し、その結果として効く部位も大きく変わります。ここでは主に背筋群と上腕三頭筋のトレーニングに使用される代表的なアタッチメントを、それぞれの特徴と使い分けの観点から解説します。
ストレートバーはもっとも基本的なアタッチメントで、広背筋・僧帽筋・上腕二頭筋のいずれにも均等に負荷が入りやすい構造です。バーを握ったときに手首が自然な位置に収まり、プル系・プレス系どちらでも扱いやすいという汎用性の高さがあります。ただし、手首の回外が大きくなる動作では負担がかかりやすく、特に逆手でのラットプルダウンでは手首の柔軟性が求められます。
ワイドバーはラットプルダウンで広背筋外側に強い刺激を与えるために適した形状です。手幅を広くとることで肘が外旋し、広背筋の外側線維が最大限に伸展した状態から収縮させることができます。胸を張り、顎をやや上げて、肩甲骨を寄せながら引き下ろすことで背中への効きがより確実になります。
パラレルハンドル(Vバー)は、手のひら同士が向かい合うニュートラルグリップを可能にするアタッチメントで、僧帽筋中央部や広背筋の中央線維に強い刺激を与えることができます。肩関節の負担を軽減しながら引く動作ができるため、肩の柔軟性に不安がある人や、腕に効きやすい体質の人でも背中に刺激を乗せやすくなります。
EZバーは、角度のついたグリップによって手首・肘関節の負担を減らす目的で設計されたアタッチメントです。ラットプルダウンのリバースグリップでは特に有効で、上腕二頭筋を補助筋にしながら広背筋を収縮させることができます。逆手動作で手首に痛みが出やすい場合には、このアタッチメントが非常に適しています。
ロープアタッチメントは三頭筋種目に必須のアタッチメントで、動作の途中から終盤にかけて手のひらを外側へ回旋させることができるため、上腕三頭筋長頭の完全収縮を引き出せる点が最大の特徴です。プレスダウンやオーバーヘッドエクステンションでは、ケーブル角度を調整することで伸展局面を強調でき、三頭筋全体を立体的に仕上げることができます。
トライセップスバーは、上腕三頭筋短頭に強い刺激を与えられるアタッチメントです。ハンマーグリップ(縦方向)で保持するため、肘を安定させながら押し下げる動作を行いやすく、特に負荷の抜けやすい外側頭に確実に刺激が入ります。高重量でのプレスダウンに適したアタッチメントでもあります。
ショートストレートバーは、ライイングフレンチプレスやプレスダウンの仕上げに適しており、肘の開閉によって短頭・長頭を切り替えて鍛えることができます。バーが短いため軌道がブレにくく、仕上げ種目として丁寧に筋肉を追い込む場合に向いています。
このようにアタッチメントの形状と握り方は、単に持ち方が変わるというだけでなく、背筋群や上腕三頭筋のどの部位を強調するか、どの角度で力を発揮させるかといったトレーニング効果そのものを大きく左右します。ラットマシンやケーブルマシンを効果的に使うためには、各アタッチメントの特性を理解し、目的の筋肉が最大限に刺激されるポジションを選び取ることが重要です。

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